聖女の救済の感想一覧
東野 圭吾による小説「聖女の救済」についての感想が4件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
まあ、普通の作品だと思います。ドラマにはならないかな
東野圭吾作品といえば、度々の映画化など読み手にとってある種まとまったイメージを残す作品が多いように思う。つまるところ作品の最初から最後まで「なんとなく」頭に残っているのである。日本橋を舞台にした麒麟の翼でも見られたように舞台が目に浮かぶのだ。しかし、この聖女の救済はどうであろう。読み終えたのちに何か残るものがあったか?と問われると私は途端に並行してしまう。浮気を知った妻が、毎日旦那を救済する。幾年も幾年も・・・一見異常な雰囲気を期待してしまう設定である。しかし、小説内に残されたものは割とありふれたものであったのではないであろうか?容疑者Xの献身や真夏の方程式のように心に残るなんとも言えない悲しさややり切れなさを期待していた身にとってはこの作品はあまりにありきたりであった。せめてもう一声妻の心の叫びに同情したくなるような、何か決して報われないような切なさをどうしても所望してしまう・・・ミス...この感想を読む
恐ろしいまでの女性の愛!
この作品は、主人公の綾音が子供を産めない自分をいとも簡単に捨てた夫、義孝に復讐する物語です。登場人物がもう一人おり、パッチワーク教室講師をする綾音のアシスタントの宏美。彼女は、実は義孝と不倫の関係にあり、彼の子を身ごもっています。綾音は、2人の関係に気づいていますが、宏美を責めるわけでなく、夫だけに復讐するために1年間という異常ともいえる時間をかけ、殺害計画を練ります。犯人が誰であるかは、物語の中盤で気づきますが、殺害する為にどういったトリックを使ったのか?それは、物語の最後の最後まで分からず、ぐいぐいと引き込まれます。いくら裏切られたとはいえ、夫を殺害する為にエネルギーを使えるというのは、深い愛情のなせる技なのでしょうか?同じ既婚者として、私には無理ですが、綾音の気持ちは、痛いほどわかります。しかし、物語を読んだ後、なんとも言えない悲しい気持ちになりました。この感想を読む
パッチワークが印象的
タイトルの「聖女」、パッチワークを商売にしている女性です。その時点でインパクトがあると思います。そんな女性と、なかなか出会う機会がないですから。前にどこかのインタビューで、東野圭吾さんは、「あえて自分が詳しくない設定で描いてみるようにしている」と言っていました。それが、作家としての挑戦だ、ということです。おそらく、その一環として書かれたのかもしれません。この小説は、謎解き小説として面白く、読み終わった後に主人とトリックについてあれこれ話し合ってしまいました。よくわからなかったところもあったのですが、あとからきちんとクリアになり、さすが東野さんだ!と納得。東野さんの数ある作品の中でも、かなり好きな部類です。
これまでに類をみない完全犯罪に湯川は勝てるのか!?
この小説も、おなじみの3人、湯川教授と内海刑事、草薙刑事でストーリーが進んでいきます。この3人の関係は非常に面白く、今回も内海刑事の勘が冴えわたります。本作で登場するトリックは、離れた場所から毒殺する完全犯罪。湯川教授も「虚数解だ」というくらい難関なトリックで、また犯人の演技のうまさに女の怖さを感じました。ただ少し残念なのは、作中に色々とトリックの説明がなされていきますが、どうもダラダラ書きすぎているところがあります。いつものように読みやすいのでテンポよく進むことはできますが、どうも無駄な描写が増えてしまっています。おそらく東野さん自身はトリックに拘りがあるから、長編ものとして出したと思いますが、内容的には短編くらいの薄さになってしまっています。単純に1つの作品として楽しむことはできます。