銀河英雄伝説の感想一覧
田中 芳樹による小説「銀河英雄伝説」についての感想が5件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
ロイエンタールの反逆を新解釈してみました
ロイエンタールの反逆って雑なのか?を考察する何十年と語られている銀英伝ですが、今回はヤンでもなく、ラインハルトでもなく、ロイエンタールの反逆について考察してみます。本伝全10巻中、終幕間近の9巻で描かれるロイエンタールの反逆について、ネットで検索していただくとロイエンタールの行動に納得がいかない、あるいはそのような書き方をした作者田中芳樹への批判がわんさか出てきます。これについて、おそらく語られていないのでは?と思う結論を見出したので書かせていただきます。・雑とする根拠1:作品中でもっとも長いフリロイエンタールがいつか裏切るだろう、という仕込みは2巻で行われます。 貴族連合に勝利した主君ラインハルトから、「私を倒す自信と覚悟があるのなら、いつでも挑んできてかまわないぞ。」と言われるシーンです。ここで読者には「ああ、ロイエンタールとラインハルトはいつか袂を分かつんだ」と、刷り込まれますが、...この感想を読む
重めな始まりだが
1997年だったか?、ノベルス発売から15周年を記念して出版されたのが徳間文庫版。それが初めて読んだ銀英伝だった。実のところこの垢抜けないタイトル(失礼)はどうも好きになれないが、中身は緻密で重厚だ。1000年以上先の宇宙が、物語の舞台になるため、人類が宇宙を開拓していく過程や、銀河帝国と自由惑星同盟が建国されるまでの歴史などにかなりのページが割かれている。そしてそこが、長いし密度が高いし盛り上がりに欠けるしで、挫折しそうになる。不思議なことに、全巻読了後にその部分を再度読むと、すらすら読めてしまうのだが。この巻には過去の歴史と、銀河帝国と自由惑星同盟に現れた二人の名将の登場が描かれている。敵より少数の兵で勝利を得る、銀河帝国の若く華麗な上級大将(20歳!)・ラインハルト。上司の負傷により指揮権を得て自由惑星同盟を惨敗から救う准将・ヤン(こちらも地位のわりに若い29歳)。全10巻のうちの1巻なので、まだ...この感想を読む
一大叙事詩の幕開け
「銀河」、すなわち宇宙を舞台に、帝国軍と同盟軍がバトル……と書いてしまうと身も蓋もないが、SFに舞台を借りた三国志ともいえる本作。最初の数十ページは、現代から宇宙の発展、宇宙暦のスタートからの地球の衰退、帝国の歴史……など、まるで教科書を読んでいるような舞台説明が続く。ここを乗り切れるかどうか(正直読み飛ばしてもよいか)が、この後の「伝説」を楽しめるかどうかにかかっている。銀河帝国のラインハルトと自由惑星同盟のヤン・ウェンリー。この対照的な二人と、その周辺の人間が織りなす、一大叙事詩。まるで未来の人間が歴史書を読んでいるような感覚に浸れる大作のスタートです。
壮大な宇宙叙事詩の幕が開く
舞台となる銀河帝国と自由惑星同盟とフェザーン自治領。この人類の宇宙における三勢力が成立するまでの歴史の説明から始まります。二大勢力の同盟と帝国の絶え間ない戦争。そして中継交易国家として栄えるフェザーン。この状況を打ち破るきっかけとなるのが両陣営に戦争の名手が出現したことです。両者とも特権にあぐらをかく腐敗貴族や、汚職政治家、無能な上官に悩まされますが、状況によってその頭角を現し、両国の運命をも変えていきます。第一巻ではヤンとラインハルトを中心に基本となるメンバーが登場して、舞台設定が呑み込めるようになっています。ともに機略と智謀でもって侵攻と撃退、拠点を陥落させ、歴史が動き出す前哨戦となります。この第一巻だけでその戦記としての面白さ、多彩で魅力的なキャラクター、背景となる舞台設定すべてに引き込まれることでしょう。
コミック小説ではない
表紙絵やアニメーションのイメージが強い作品なので、いわゆるキャラクターが動いているだけのライトノベルと思われがちですが内容は大変濃いものがあります。銀河帝国というとアシモフのファウンデーションシリーズを思い出すSFファンもいるかもしれません。しかし、この作品はそう言ったSF的な要素を含めながら、未来の銀河の歴史を語るというスタンスのSFです。基本的には宇宙を舞台に三国志をやるといったイメージですが、田中芳樹の深いがスッキリした歴史観が随所に見られて読み応えもあります。第一巻はラインハルトとヤン・ウェンリーの二人が初めて戦場で闘うシーンから始まります。気がついたら銀河英雄伝の世界にどっぷりハマっているでしょう。