カッコウの卵は誰のものの感想一覧
東野 圭吾による小説「カッコウの卵は誰のもの」についての感想が4件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
どんどん読み進められます
先が気になりどんどん読み進めてしまうところは、他の東野作品と同じです。やっぱり筆力がありますよね。ただし、さんざん気にならせておいてそのラスト!?と思ってしまうところはありました。だって…病室で事故装置作ってたら看護師や見舞客に絶対バレるでしょ!歩くのすらやっと、という産後に、誘拐なんてできないだろー!種明かしの仕方が、ぜんぶ手紙って…他に方法なかったの??もっと、しっくりとくるラストにしてほしかった。タイトルも、テーマも、表紙の絵も、素晴らしいだけに、ラストがただただ拍子抜けでした。面白かったことには変わりありませんけどね。
タイトルに惹かれて
面白いタイトルに惹かれた。東野さん、上手い。才能あるスキーヤーである娘と血が繋がっていない父親、娘の出生の秘密。素晴らしいスポーツのDNAを持つ高校生の男の子。この2本が軸になって展開していく。が、結論へ向けての流れが強引だと感じた。登場人物の人数の割には、ストーリーが短いのが原因だろうか。「スポーツ」「遺伝子」「ミステリー」・・・読者の好みの視点から楽しむことができる作品なのではないだろうか。私は「親子愛」という視点で読んだ。「カッコウの卵」は別に誰のものでもない。育ての親・生みの親、という題材で書かれている小説は山ほどあるが、その視点から読むと、この作品は悪くない。スピーディーに読めるし、絡まりもまぁ上手くできてはいる。東野圭吾作品の中では、サクっと読む部類に入るのだろう。
親子とは何かを問う作品
遺伝子をテーマにした小説です。推理小説というよりは、親子と何か、才能とは何か、遺伝子とは何かを問う作品となっていると思います。テーマはとっつきやすいものではありませんが、スキーというスポーツを通していること、東野圭吾さんの文章力の秀逸なことでスラスラと読むことができます。主な登場人物は、元プロースキーヤーの親子、スキーの才能を見込まれた男の子です。元プロスキーヤー親子の出生の秘密を巡る物語展開が軸となるのですが、非常に緻密に物語が練られています。私は物語を読み進めるうち何度か予想を裏切られました。東野圭吾作品の中では割と軽い部類の物語に入るのではないかと思いますが、一定の水準を保った良作品です。
スポーツをめぐる様々な視点が面白い
最近話題になっている市民ランナーと呼ばれるマラソンの川内選手。トップレベルのスポーツ選手がスポンサー無しに競技を続けるというのは一般的には難しいと言われていますが、彼はそうした常識を覆し、マラソンをスポーツとして楽しみ、人生を豊かにする糧にしているように見えます。この物語は、スポーツとビジネスや科学との関わりを描きながら、スポーツの意義を考えるものになっています。好きで始めた競技でもなかなか上達しないことで苦しんだり、才能はあると言われても自分自身はどうも好きになれなかったり…。勝負、努力、能力、モチベーションというものから、才能とは何だろう?と考える物語でした。