ナイン・ストーリーズの評価
ナイン・ストーリーズについての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に小説を読んだレビュアーによる評価が4件掲載中です。
各項目の評価分布
ナイン・ストーリーズの感想
どこから読み始めても満足させてくれる小説
1番目の話「バナナフィッシュにうってつけの日」これは文字通り9つの物語でなされるこの本の中で一番最初にでてくる短編。主人公のシーモア・グラースは妻との旅行先でなんの前触れもなくピストル自殺をするが、それまでの文脈から彼は繊細すぎる感性の持ち主であることは、無理なく想像できる。(妻の母親が異常に彼の行動を気にしているところも読みどころのひとつ)そんな彼が浜辺で知り合った小さな女の子と交わす会話は、みずみずしく感性豊かで、その後自ら命を絶とうというような悲壮感は一筋たりとも感じられない。それよりも彼が話す「バナナフィッシュ」、またそれを頭から疑うことなく信じる4歳の女の子(前述の女の子)のまっすぐな眼差しまでもが苦もなく頭の中に映像化されてしまう文章は、サリンジャーならではでないだろうか。「グラース家」「バナナフィッシュにうってつけの日」の主人公シーモア・グラースはグラース家の長男であり、...この感想を読む