それからの感想一覧
夏目漱石による小説「それから」についての感想が4件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
人間としての未知の倫理、モラルを求めて悪戦苦闘した作家・夏目漱石の「それから」
森鷗外の著作をしばらくぶりに読み終え、今度はかつて貪るように読んだ、森鷗外と並んで文豪と称される夏目漱石が無性に読みたくなり、初期の自然主義と対立した浪漫的な作風の「吾輩は猫である」「坊っちゃん」と学生時代の気分になって読み進み、この2作品ではどうしても消化不良の感じが拭えず、人間としての未知の倫理、モラルを求めて悪戦苦闘した「それから」、「門」、「行人」を再読しました。夏目漱石という作家は、「吾輩は猫である」から始まって、「明暗」に至る彼の文学的な軌跡を辿ってみると、道徳と言う言葉の示すような、何か身動きの取れない、固定的なものではなく、"倫理"とか"モラル"とでも言うような、自分自身で探し求める人間としての"在り様"を文学を通して、生涯追い求めた作家ではないかと思います。中学の英語教師である苦沙弥先生の家に住みついた捨て猫が、この家の家族や、そこに集まって来る"太平の逸民"と称されるインテリ...この感想を読む
友人の妻を巡る三角関係
30になっても働きもせず、結婚もせず、見合いも断り、親の脛を齧りながら優雅に生きる高等遊民の代助。かつて自分の好きな女性、三千代を友人の平岡と結び付け、その夫婦が戻ってきたことから、また友人の妻に対する恋慕の情が湧いてきます。勝手なヤツだなという印象なのですが、何となく憎めない感じがするのは、漱石の描き方の巧さによるものなのでしょう。結局親とも絶縁して三千代を平岡から奪う形になり、職探さなくちゃなと、出かけていくわけです。どうして最初から、三千代と平岡をくっ付けるような真似をせず、自分が結婚しておかなかったのか、両想いっぽいのに。何だか「人の物が欲しい」そんな感じを受けなくもありません。
手軽く読める
漱石の作品が手軽に読める楽しみを味わっています。主人公の感情がとても細やかに描かれていて、とても興味深く読み進めました。やはり「三四郎」「それから」「門」の順で読むのが良いと思います。三四郎よりも面白く感じました。主人公の代助、30にして働かないのもポリシーがあるのです。でも、資生堂で薔薇の香水を買って枕に振り掛けたり、甥にチョコレートをご馳走してあげたり、優雅な生活を見せてくれます。きっと、平岡とその妻が東京に帰ってこなければ、そのまま優雅な生活を送り、父親の決めた人と結婚していたんだろうなと思いました。当時の『金持ち』の優雅な生活を見るのが面白い、そんな小説でした。
リアルだなあ。
この作品の主人公、長井代助30歳。折角頭が良いところを卒業しているのに、働かず金が必要な時は、父親たちのところにもらいにいく。これを見て、なんて甘いんだ!なんてもったいないだと思った。まあ、良いところ出たら必ず働かなくてはならないのか?と問われれば、それが絶対な答えではないとは思うがでもなんかしら手伝いやら、小さく働くことはしなきゃならん!と改めて思った。しかも、この代助、あろうことか友人の妻を好きになってしまいそのことを本人や友人に告げる。ん~なんだかなぁ~、まあ、決心して働こうと行動を起こしたことはいいことだと思うがなんか巻き込みすぎだと思った。