八日目の蝉の感想一覧
映画「八日目の蝉」についての感想が16件掲載中です。実際に映画を観たレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
野々宮喜和子と秋山恵津子
犯人である野々宮希和子生後2か月~4歳まで誘拐した「恵理菜」を自分に子どもにつけるつもりであった「薫」と名前を付けて一緒に暮らしていました。希和子は不倫相手でおろした子どもの父親でもある秋山丈博と奥さんの間にできた子どもの顔を見たとたん、自分のおろしてしまった子どもの生まれ変わりと思ってしまったのでしょうか、泣いていた「恵理菜」を抱き上げて連れ去ってしまいました。希和子は薫をとても大切に育てていました。2人で暮らせることをいつも第一に考えていたように思えます。その愛情のかけ方はきっと本当の親子にしか思えないほどだったのでしょう。訪れた先で2人を助けてくれる人がいつもいました。「3つ子の魂百まで」といいますが、ちょうどその時期にしあわせな時間を一緒に過ごした2人だったので、希和子を本当の母親だと思ってしまっても不思議なことではなかったのでしょう。捕まった時希和子は一緒に過ごせた4年間に感謝しま...この感想を読む
母性や愛情とは、何なのか・・・
角田光代原作小説の映画化作品。主人公、恵理菜は幼い頃父親の不倫相手に誘拐され、数年間を彼女と過ごした。その事が原因で両親とも上手くいかず、自分も不倫相手の子供を妊娠してしまう。その時、ジャーナリストを名乗る女性が現れて・・・全体的にかなり重い内容です。ストーリーは恵理菜を誘拐した希和子の過去の逃亡話と、現在の恵理菜を交互に描いています。明らかに罪を犯しているのは希和子で自分勝手な行動をしているはずなのに、ストーリーを追っていくごとに彼女に感情移入してしまい、最後の別れのシーンでは涙がとまりませんでした。母性や愛情とは何なのか、深く考えられられる作品でした。女性は必見だと思います。
インプリティング
私は正直この作品が嫌いです。得点が高いのはあくまで映画としての評価になります。生後間もない赤ん坊だった主人公=恵理菜を発作的に誘拐した、恵理菜の父の不倫相手=希和子の逃亡劇を、大人になった希和子が、様々な葛藤と共に思い返していくという物語。希和子には確かに同情できる背景がある。父親のくずっぷりが一番の原因であることも疑いようのない事だ。しかし、だからといって子供を誘拐していいかと言われればまったくそんな事はありえない。いやまだそこはいい、作品としてはそこは問題ないんだけど、これこそが親の愛だ、という見せ方や、なによりも、観た人の評価が希和子の愛を絶賛するような内容ばかりで辟易する。不倫する父親はクズだが、不倫している自覚があるのに略奪できると考えている考えが浅はかだし、何も知らない子供を、自分の欲望のためだけに浚う行為も浅はか。「私はあなたを愛している」冗談じゃない。浚った相手が全てだ...この感想を読む
もうこのままバレずにいてお願い…
あの男はそれほどまでに良い男だったのだろうか?希和子という女がいた。この女はある男の愛人だった。その男の子供を堕ろした事が理由で子供が産めない体になっていた。ある時その男の奥さんが子供を授かる。希和子はその生まれて間もない赤ちゃんを誘拐して我が子の様に育てていくのだがその生活も長くは続かず誘拐犯として捕まってしまう時がきてしまうのだ。私はいつの間にか希和子の味方になってしまっていた。希和子とその赤ちゃんとで幸せになれば良かったのにと…希和子が警察に捕まってしまった時の映像に胸が張り裂けそうになりました。今でもこの映画の事を思い出しただけでも胸の中がモヤモヤしてしまいます
原作ファンです
もともと角田光代さんの原作のファンでした。壇れいさん主演でドラマ化された時も、少しイメージが崩れてショックだったのですが、今回映画化になって、この素晴らしい小説を2時間でまとめるのは無理があったかな、と思ってしま史ました。私には思い入れのある場面なのに、映画では削られているところがいくつもありましたし。ただキャストは井上真央さんも永作博美さんも大好きなので、このお二人が希和子とかおるをやってくれてよかったです。あと5歳のかおる役の子もすごくかわいかったです。ただ最後の希和子のあの感動的なセリフ。あの一言は叫ぶように言ってほしかったです。例えばスピンオフでかおるの実の母の目線からの映画、かおるの父親(希和子の不倫相手)目線の映画なんかを作っても面白いのかなぁと思います。誰の目線から見ても誰も幸せになれないですが・・・。
見終わった後、考えさせられる
不倫相手の子を妊娠し、堕胎、逆恨みで本妻から子供を奪うのに、何故かキモチは希和子の味方をしてしまう。もちろん、演出で不倫相手の男がどうしようもないダメ男セリフを言い共感されないようなタイプの本妻に仕立ててあるからだと思いますが、それでも、誘拐した希和子を間違っていないような気になってしまいます。誘拐した子供と捕まるまでの4年間の部分も良いですが、希和子に誘拐された恵理菜が幼少時代を一緒に過ごした千草と再会してからもまた面白いです。思い出したくない過去だけど、振り返りながら色々思い出して行く。希和子が捕まったフェリー乗り場で、恵里菜が思い出した優しいお母さんのシーンで号泣です。八日目まで生きた蝉が見る世界、どう考えるかは自分次第ですね。
誰が一番悪いのか
悪い人を決めなければいけない様な事ではないけれどこの映画の登場人物で一番の悪は誰?という質問の答えでその人が認めたくないものごとが少しわかる様な気がする。永作博美演じる希和子が捕まった事で形としてはあるべきものにもどったのだろうけど気持ちとしてはみんながどこかに置いてけぼりになった感がある事件としては解決したような感じだが登場人物が誰1人として幸せにはなってないとても悲しいでも小池栄子演じる千草が現れた事で少しづつ変わっていく…ラストはちょっと期待を裏切られた感じもしましたがあの終わり方もなかんか良かったかもあと小池栄子が最高でした!
不倫の代償はいつも女が背負うと言われてしまう作品。ラストは泣けます
「不倫」。一般的にダメな事とされながらも、なかなか不倫をする人間が後を絶たない現実。当然、映画(小説)の中の物語なので、フィクションなのですが、一歩間違えれば誰でも同じような運命をたどってしまうのではないかと思わせる1本です。とにかくラストは感動できます。まずキャストが良い!子役の子の演技も抜群だし、小池栄子さんのちょっとアブない役もまさにハマリ役、劇団ひとりさんも、観ていてムカついてくるほど上手く良い味を出しています。親と同じベクトルをどうしても向いてしまう子供…運命ってホント切ない事もありますよね。そんな切なさを中島美嘉さんの歌声がまさにベストマッチで映画に情緒感を与えています。子供がいる親なら間違いなく泣ける一本です。不倫している人は是非一度見て下さい。明日は我が身だと思って。
八日目の蝉は本当に悲しい存在なのか
”たった七日で死んでしまう蝉よりも、八日目の蝉のほうが悲しい。”主人公の恵理菜はそう言います。0~4歳までの「薫」として過ごした時間が終わり、実の両親のもとへ帰されたときから、彼女は「恵理菜」として生きなければならなくなった。本当の母親のために「薫」という存在を殺してしまわなければならなかった。そうすることができたら、彼女自身もどんなにか幸せだろうと思います。消したくても消せない、自分の中だけで生き続ける「薫」という存在、それが彼女にとっての八日目の蝉なのでしょう。愛情を持って育てたとしても、彼女に植え付けた深い葛藤や家族関係に及ぼす影響を考えると、やはり希和子のしたことは許されざる行為だと思います。ただ、悪意からではないだけにとても複雑な気持ちにさせられます。それは、希和子だけではなく出てくる人間全員に言えることで、みんな何かを守りたいだけなのに、結果的にお互いを傷つけていることがと...この感想を読む
罪を犯した女が悪いのか、それともそうさせた男が悪いのか
不倫相手の女が身ごもるも自分の勝手で堕ろすようにお願いする男。子供を堕ろすことで二度と妊娠できない体になってしまった女は不倫相手の男に子供ができたことを知り、その子供を誘拐して自分の子供のように育てていく。世間的には誘拐した女が悪いが、男も同罪だろうと思いながら見てました。誘拐して何をするわけでもなく、自分が堕ろした子供のように育てていく姿は「どうしても私は子供が欲しかったんだ」という女の思いが強く感じられました。救助されて本当の母親のもとに戻っても0~4歳までの偽の母親の思いが強かったせいか母親に馴染めずずっとぎくしゃくしたまま。結局自分も不倫相手との間に子供ができてしまう。最後はなんとなく「うーん」という感じだったけれど、永作博美さんの演技を見ていたら何だか胸にっジーンときました。
子供の心を思うと悲しい
ある女が不倫相手の子供を身籠り堕胎したら子供を産めない体になった。女は不倫相手の子供を誘拐し、宗教施設に入り生活する。何年か経ち宗教施設から女と子供は逃げ小豆島で生活をする。ある時、雑誌の写真に写りこみ逮捕されることになる。子供は、女に赤ん坊の時に誘拐されてしまったため、実の両親のもとから逃げようとして保護され「お母さんのところに行きたい」と言う。もうこのシーンで号泣でした。子供は大きくなり不倫をして、不倫相手の子供を身籠る。産む決心をする。そして育てる場所は小豆島でした。どこをどう取っても悲劇なんですが、女の子供に対する愛情が優しくて、子供がそれを忘れられずに居て、とにかく泣けます。
自己中毒、自己憐憫、自己満足、自分本位、自分中心、自己欺瞞、これをどこまで楽しめるか
四年前のある日、ちっちゃな乳児を置いたまま旦那と車で出かけ、乳児が居なくなりました。「誘拐」です、母は悲しい、「誘拐された」と泣いています。そこへ、四年間の時期「誘拐」されていた娘が戻ってきますが、母親になつかない、四年間育ててくれた人を恋しがって泣きます。この脚本を書いた人は、子供を知らない。母親にとって、こんな辛いことはないのだろう、と観客に訴えかけるのですが、ところがどっこい、これで収益上がるのかなーと思うのです。「命を奪ったら死刑なのに、心を奪っても死刑にはならない」って語りかけるんですが、抽象度が異常に低く、自己中毒の味がする。乳児をおいている時点で、「育児放棄」親権剥奪されても文句は無いところでしょう。旦那も共謀で捕まらないのが不思議。四歳になってる娘が、いきなり帰ってきて母親の顔を覚えているに違いないという自己満足の思考がおかしい。この映画を楽しんで見るお方は、可也限られ...この感想を読む
復讐からはじまる愛
この映画を拝見する前、ドラマで“mother”を拝見しており、“誘拐から母親として育てる”といった点で、誘拐の根拠は違うけれど、イメージが被っていたので、その違いも楽しみの一つとして拝見致しました。 不倫相手の子供を誘拐するに至るまでの希和子の気持ちや、そして、薫と出会ってからの希和子の変化。誘拐犯に幼少期を育てられた薫が希和子の逮捕後、恵理菜として生きていく上での葛藤が、とてもリアルに描かれていました。一番見ていて感動したのは、希和子が母として薫の為に生きている姿。 どんな事があっても娘を守るという母の強さと優しさが日に日に強くなっていく希和子の姿は、誘拐・逃亡とは関係なく、見ていてとても優しい気持ちになれます。 ただ、クライマックスが結構腑に落ちない終わり方でした。えー。ここで終わっちゃうんだ。。となんともスッキリしない感じ。いや。。これでよかったのか?とモンモンとしました。あと、“...この感想を読む
小池栄子さんを見て欲しい
完成度が高い。そしてこのジャンルの作品にしては分かりやすいラスト。分かりやすいから共感しやすい。主な女性キャストは永作博美さん、井上真央さん、小池栄子さん。特に目を引くのが小池栄子さん。彼女は本当にいい女優さんになったと思う。きっと誘拐犯と子供だけだったら平坦になっていただろうストーリーに、小池栄子さん演じる安藤千草がいることで立体感が出る。そしてその演技が生々しく内からにじみ出るから映画の完成度も上がる。この映画を見た後、何となく「お星さまの歌」を思い出す。きっと港だけじゃなく、あの夜も「お母さんのぬくもり」を感じる夜だったと思うから。
母性に感動
感動する映画ですかね。彼女を知っている人ならわかると思うのですが、今回はある意味で「普通の女」の演技です。いままでは「本心を隠して、作り笑いをする女」、「どこかすっ飛んでいる性格の女」の演技ばかりだったと思います。今回は違います。泣くし、悲しみます。表情に出します。「作り笑い」はありません。彼女のこういう演技は初めて見ました。こういう演技も出来る人だったんだと、改めて思いました。彼女の片言関西弁が地味にいいです。可愛いです。ラストはちょっとびっくりすると思います。テロップが流れる前の最後の15秒ぐらい。この演出もいい。ハッピーエンドかバッドエンドかは...さあどうでしょう。私なりに考えはありますが、書きません。たぶん人によって意見は分かれるでしょう。脇役もいい味出してます。それぞれきついんですが。
小池栄子さんに拍手
「母性」をテーマにした作品。女性の視点から鑑賞すると胸が締め付けられる。最後には涙を流さずにはいられない。この作品は、第35回日本アカデミー賞では10冠を獲得した。誘拐犯(野々宮希和子 )を演じた永作博美さんも誘拐された女性(秋山恵理菜)を演じる井上真央さんの演技も素晴らしい。お2人を凌ぐ演技力を披露したのは安藤千草 を演じた 小池栄子さんだ。小池栄子さんは器用な人なのだなと感じた。恵里菜と千草は、幼少期から女性のみのグループホーム「エンジェルハウス」で過ごす。入所する女性は白い服を着る。食事の時は無言。自給自足の生活を行う。とっても複雑な環境で育った人柄を上手に演じている。特に、その背中からも読み取れる。アパートで恵里菜に料理を作っている時の姿は特に素晴らしい。