ジョゼと虎と魚たちの感想一覧
映画「ジョゼと虎と魚たち」についての感想が10件掲載中です。実際に映画を観たレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
大阪のハードボイルドな感覚を体現した映画
大阪の何ともいえない空気感を体現2003年作品。この作品の元になっているのは、田辺聖子氏の同名の短編小説です。田辺聖子といえば、生粋の大阪人。大阪を舞台にした優れた小説を多く書いており、「ジョゼ〜」も大阪の下町が舞台となっています。田辺聖子やあるいは宮本輝の描く、「あっけらかんとあけすけで、人情味があるんけどどこか突き放したようにドライで、淀川みたいにきれいなものも汚いものも、全部大きく飲み込んで、のたりのたりと流れてゆく惰性」といった大阪のありよう。同じ関西人としては、そこが変にしゃらくさくてはどうにもやっとれん、というその空気感。それを、この映画はなかなか好ましく描いていると思います。都会的にど直球に爽やかでハンサムな妻夫木聡を主役に起用しているにも関わらず、この映画にそこはかとなく流れるハードボイルドな感覚というものが私は好きです。監督の犬童一心氏は東京の人なのに、いかにして。と興味...この感想を読む
ラストが良い
「タッチ」や「眉山」などの監督で知られる犬童一心監督によって映画化された「ジョゼと虎と魚たち」です。原作は田辺聖子さんの短編小説です。ちょっぴりエロティックなラブストーリーを妻夫木聡と、池脇千鶴が主役を演じています。舞台は大阪で、なんというか、あのしみったれた貧乏臭い感じや、人情の感じが重たくなりそうなテーマをコミカルに演出しています。お話としては足の不自由なジョゼこと、池脇千鶴と普通の大学生妻夫木聡の出会いから、別れまでを描いています。池脇千鶴のちょっと面倒くさい女の感じとか、妻夫木聡の軽い感じがうまく演じています。ラストはちょっとジーンときましたね。くるりの音楽もよかったです。
現代版人魚姫?
住む世界が違うとはこういうことなのだろうか、と考え込んでしまうお話。原因不明の足の障害を持った女性と、普通の大学生の男性がふとしたきっかけで出会い惹かれていくお話。障害を持ってるからって特別なわけじゃなく、等身大の女性に見えるジョゼだからこそ、恒夫みたいな男の子が近づいていけたのだろうけれど、彼女の祖母はそんな二人の障壁となる。祖母が亡くなったことにより、やっと二人の関係は進展は見せるも、皮肉なことに祖母の存在が二人のバランスを保っていたことを知る。二人の埋められない距離感は、ラブホテルでのやりとりに象徴されています。そしてまた、二人の行く末を端的に表現されてもいて、すごく切なくなるけど好きなシーンです。とはいえ、おとぎ話としてはこの上なく素敵な話ではあるけど慎重に見なければいけない作品だなとの感想も持ちました。
BGMが好き
まずこの映画で一番好きなものが挿入歌のくるりのハイウェイです。映画ととてもマッチしていて、邦画のいい世界観が出ていると思います。もうひとつこの映画で好きな点は、単純なハッピーエンドではないこと。別にバットエンドなわけでもないですが、くみ子と恒夫が最後別れて終わるシーンは、とても現実的な気がしました。また、それをとりたてて大げさに描写することもなく、ナレーションで関係が終わったということとともに、恒夫がくみ子の家においていた荷物を取りに来るシーンが描かれていて、日常の中の出来事としてシンプルに描かれていたことが好きでした。あと、別れたあとに恒夫が泣くシーンも・・つまぶきくんのナレーションが随所で心に響きます。邦画のいいところがたくさんつまった作品だと思います。
「障害者の癖して、よくも私の彼氏取ったわね」社会福祉の女の子 言うも聞くも、あらま尻尾丸出し
これは人が持ってる本音と建前をめらめらとと描いてます。正義を叫ぶ人のエネルギーが何処から来るのか、障害者の福祉を語る言葉は決して自分はその立場にならないという前提で語られる。 差別を無くそうと言う言葉が、苛めるターゲット求め、大衆の中で一人の人をつるし上げる。この場合、弱者と言う立場は蜜のようだ、自分は歩けないから、生まれながらにして良い人でかばわれる存在なのだと、黙って傍に居るものを威圧する。障害者には全ての正義が在る、弱者は弾圧されてる存在なのだと、その他大勢が思い込んでしまうとき、そこではなるべく関わりを持たないようにしょうと排除が起きる。これ、外国人排除や異人種排除や多種多様のバリエーションがありますが、かばえかばえと叫んでいる人が自分の心を隠して声を大にして叫んでいる事が多いです。田辺聖子の原作で、田辺ファンならニャリと笑えるオナゴの逞しさとオトコの情けなさを表現しています。この感想を読む
生々しい
足の不自由な女性 くみ子(ジョゼ)の老女が話すような言葉遣いと池脇千鶴さんの幼い印象の顔立ちがギャップをつくる。そして、本作品で脱いでいる。映像が生々しい。息遣いを感じる。まさに「生」を感じる作品だ。DVDでは特典として、作品を鑑賞しながら監督 犬童一心さんと妻夫木聡さんと池脇千鶴さんが語り合うというものがある。3人の表情は撮されていないが、作品と3人の音声だけが聞こえる。製作者側が作品をどのように見ているのかが興味深い。池脇千鶴さんが脱ぐシーンでは、ちょっと微妙な空気感が感じ取れるのが、また生々しい。胸にズーンと何かが衝突してくる。様々なことを含めて「生」というものの重さなのかもしれない。
切なくて愛おしくてちょっと苦い恋
自分のことをジョゼと呼ぶちょっと変わった女の子と普通の大学生・恒夫の出会いと別れを描いた作品です。田辺聖子さんの短編小説を、犬童一心監督が叙情豊かに描いています。強く引かれ合いながらも自分のエゴを抑え切れない若者の心情がすごく伝わってきましたね。ちょっと口の悪いジョゼ役の池脇千鶴さんも、優柔不断な大学生の妻夫木聡さんも、どちらも好演してます。青春ってただ美しいだけでなく、こんなふうに周りの誰かを傷つけたり自分を傷つけたりするものよね、なんて思っちゃいました。切ないけれど、とても愛おしい感情を思い出させてくれる作品でした。音楽を担当しているくるりの主題歌「ハイウェイ」も映像にとても合っていてよかったです。
定期的に見直したい映画
池脇千鶴さんの演技が光る作品。身体障害者が主役の映画というと、きれいな面ばかりを前面にした作品が多い中、人間臭さにもスポットも十分に描かれている。そしてそれを魅力的に感じさせる池脇千鶴さんの演技の深さは一見の価値有。妻夫木くんのだめっぽさもすごくいい。秀逸なのはくるりの音楽も同じ。世界観をよく作り上げていて、心地いい。初めて見てから何年も経ってるけど、ふとしたきっかけでDVDのジャケ写を見るだけでも、切ない思いが込み上げてくる。もう何回見たかなぁ・・・。この映画に出あったから、ミニシアターにはまった。今活躍中の上野樹里さんのデビュー映画でもある。
切なく、でもとても勇気をもらえるラブストーリー
私の中では全て万点の映画!池脇千鶴ちゃんが演じる足の不自由な女性ジョゼと、妻夫木聡さん演じるごく普通の大学生恒夫。互いにどんどん惹かれていくのに、ジョゼの障害が恋愛をしていく上でだんだん障害となっていく・・・。好きだけでは上手くいかない恋愛の憤りともどかしさが、とても切なく描かれています。私の中ではラストシーンのジョゼの後姿に、とても勇気づけられ、そして女性としての強さをとても感じました。恒夫は、はじめは本当に駄目な男だなぁ。。という印象ですが、きっとジョゼとの出会いで彼はひとまわりもふたまわりも成長したはず!!また、挿入歌は全て音楽バンド“くるり”が監修。とても優しいメロディーが映像とあっていて、どこかおしゃれ感のある映画です。 エンディングの『ハイゥエイ』がかかった瞬間、切ないけれど、どこか暖かい気持ちになれる、そんな映画です☆
だめだけど、いい恋愛
乳母車にのせられた足の不自由な少女、ジョゼを好きになってしまった大学生・恒夫との恋の物語。口は悪いが料理はうまいジョゼを池脇千鶴が根性据えて演じています。妻夫木聡は演技が上手いとかはあまり感じませんが、自然にちょいダメ大学生をやれてたのは、やはり演技力なんでしょうか。セックスに関する話題、会話がけっこうあけすけで、なかなかナマナマしくてよろしいです(笑)恒夫の恋人役の上野樹里が、まあ嫌~な女を実によく演じています。なんとなく、始まりからして結末を予感できそうな、ある意味だめな恋愛の話ですが、登場人物たちが懸命に、ちゃんと恋愛していく過程が丹念に描かれています。だめだけど、いい恋の話です。