ヴァージン・スーサイズの感想一覧
映画「ヴァージン・スーサイズ」についての感想が4件掲載中です。実際に映画を観たレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
コッポラ監督のデビュー作品。
ジェフリー・ユージェニデス原作の小説「ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹」をソフィア・コッポラ監督が映像化。1970年代のアメリカ。リスボン家の美しい5人姉妹は、近所の少年たちの憧れの的だった。しかし、末っ子のセシリアが自殺したあと、残りの4人も次々と自殺を図ってしまう・・・5人姉妹が自殺するまでの物語が、少年の回想によって語られます。彼女たちが自殺した理由は最後まで語られず、わからないままです。厳しすぎる両親への反抗だったのか?彼女たちの気持ちは結局語られることがないため、真相はわからず不完全燃焼のまま終わってしまいました。ただ、70年代の音楽にのせた美しい映像は、見応えがあります。
ドリーミーな世界観
おしゃれでキレイな映像。でもなんか病んでる。ソフィア・コッポラ作品全体に持ってる、私のイメージです。嫌いじゃないんだけど…正直、見続けてるとだんだん食傷気味になってきます。でもこの処女作だけは、あくがそんなに強くなくて好きです。音楽の影響も大きいかもしれません。エール(Air)という、フランスのバンドが書き下ろした曲を、全編にわたって使用しています。彼らのドリーミーなエレクトロニカサウンドが作品の雰囲気と見事にマッチしていて、ぐいぐいと世界観に引きずり込まれます。監督自身も、ストーリーで魅せようとは考えてないと思うんですがどうでしょう。私はPV感覚で観ています。
少女たちの美しさ
ヴァージン・スーサイズの世界は本当に危うくて美しいです。美しくこれからの人生も楽しみな5人姉妹がなぜこんな結末を選ぶに至ったのか、真実はだれにもわからないですが、彼女が生きていた世界、見えていたもの、何を感じていたのか回想を元にだんだんとひも解かれていきます。映像がまずとっても美しいです。ソフィア・コッポラの美意識がそのまま映像化されているといってもいいと思います。少女たちもどこか近寄りがたい、純粋さ、清潔さがあり、危うさがとても魅力的です。着ている洋服なども可愛く、部屋のインテリアなども女性なら一度はあこがれるような世界観で、素敵だなーと思いながら観ていました。
映像美と少女期のあやうさと
70年代のアメリカ、地方都市の閉塞感のなかで死に至る少女たちのお話。特別な立場や境遇にあるわけではないけれど、「死」がとても自分に近しいもののように思える、そういう気持ちは多くの女性が少なからず共感できるんじゃないだろうか。会ったことも見たこともない彼女たちに、どこかうっすら通い合うものを感じ取ってしまうことができる。ソフィア・コッポラ監督の映像がとても美しく、川内倫子の写真に通じるような、淡い色彩で永遠に続きそうな単調な風景をとらえている。そのなかで微笑む姉妹、とりわけキルスティン・ダンスト、ハンナ・ホールの美しさが胸を打つ。お話としてはちゃんとしたオチのようなものはないので、カタルシスが欲しい方には物足りないかもしれない。映像美と、少女期のあやうさを味わう作品だと思う。