人間存在の根源に迫る高貴な美しさと優しさと、厳しさと痛みに満ちた 「木靴の樹」
このエルマンノ・オルミ監督の「木靴の樹」は、1970年度のカンヌ国際映画祭で、満場の拍手を浴びて、最優秀作品賞にあたるグランプリを受賞した、世界映画史上に名を残す感動の名作です。これほどの秀作が、当時50歳にならないエルマンノ・オルミ監督が、自ら原案、脚本を書き、撮影から編集までやってのけ、まさしく低予算の、素人演出の、手作りで成し遂げられたことに、驚異と感嘆を覚えてしまう。いや、だからこそ、傑作が生まれ出たもう一つの映画作りの証言が、ここにはあるのです。この作品は、19世紀末の北イタリア、ロンバルジア地方ベルガモの、集団住宅に暮らす、貧しい小作農の四家族の話です。その生の営みを、人の世の誕生を死を、愛を争いを、労働を安らぎを、喜びを悲しみを、その全てを、土と自然と生活の息吹の中に、ほとんど"寡黙の静けさ"で凝視していくのです。働けど働けど地主に搾取される貧しさに、だが四季は豊かに移ろい、小さな...この感想を読む
4.54.5