帰らぬ青春への限りなき郷愁と人間的な自立を描いた「青春の門 自立篇」
映画「青春の門 自立篇」は、五木寛之原作の大河小説の映画化で、浦山桐郎監督がかつて「キューポラのある街」で描いた人間のみじめさを、とことん追求して掘り起こす繊細なタッチの映像手法が生かされて、戦後の朝鮮動乱後の当時の世相・社会状況が生々しく再現されています。 昭和29年、故郷の福岡県の筑豊を捨てた主人公の伊吹信介(田中健)は、早稲田大学に入学しますが、その時代は現在と違って生活に追われる貧しい学生たちが飢えと疲れで苛立っていました。 原作者の五木寛之や浦山桐郎監督が青春時代を過ごしたであろう、その当時のつらくて切ない心情が、彼等のいまや帰らぬ青春への郷愁として切々と描かれているような気がします。 浦山桐郎監督は、"金持ちの飼い犬として仕える屈辱のアルバイト"、"わずかな金にしかならない売血"、"青春期の性に身もだえして歩き回った新宿の赤線地帯のざわめき"、"ヤクザがうろつく薄気味悪い青線地帯の裏通り"...この感想を読む
4.54.5
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