生きることに対する深い想いに支えられた眼差しのリアリズム 「サン・ロレンツォの夜」
「8月10日のサン・ロレンツォの日の夜に、愛する人のため、流れ星に願いをすると、それが叶う」というイタリアの伝承をもとに、若い母親が、その夜、子供を寝かしつけながら、自分の子供時代に起こった戦争の話を、語り聞かせる-------。美しく、残酷に、そして、ユーモラスに、戦争が表出される。1944年、米軍が迫り、独軍が退かない夏。流れ星に願いをかけると叶うと言い伝えられるサン・ロレンツォの夜に、母親が子供を寝かしつけながら、その数日間に見たことを語る。戦争中の話の形式として、よくあるが、当時6歳の彼女は、決して悲劇性に包まれていない。独軍とファシストが、米軍の進路上にある村々を爆破し、村民を皆殺しにしながら撤退しようとしていることに感づいた人々が、米軍を探しながら逃げるという真っ只中で、彼女は珍しい遠足のような非日常の興奮に酔っているようなのだ。彼女たちを悲劇だと思うのは、歴史を知る我々であって、悲劇が日...この感想を読む
4.04.0
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