恋に生き、恋に殉じた女を憂愁の恋歌にのせて描いた質の高いメロドラマの佳作 「リリー・マルレーン」
第二次世界大戦のある時期、ナチス・ドイツ軍占領下のユーゴスラヴィアの首都・ベオグラード放送局から、毎夜21時57分になると、ヨーロッパ戦線の兵士慰問のため、「リリー・マルレーン」という曲が流された。兵舎の前で別れた、愛しい恋人リリー・マルレーンを、熱い思いで偲ぶこの憂愁の恋歌は、たちまちにしてドイツ軍ばかりか、連合国軍兵士たちの心をもとらえた。それは国境を越え、敵と味方の区別なく、兵士という兵士の魂にしみいる、"愛と望郷の歌"であった。そして、これを歌ったのが、当時無名の新人で、だがこの一曲で一躍"国民歌手"となった、ララ・アンデルセン。一つの歌を、命の限り歌い、そして消えていった女。戦場の全兵士を慰めて、だが心は、一筋わが恋人を追い求めた女。たとえナチスに利用されようと、抹殺されようと、時代が変わろうと戦争に巻き込まれようと、恋のみに生きて恋に殉じた女。そうした激烈なヒロインを、ハンナ・シグ...この感想を読む
4.04.0
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