命の尊厳を伝えるジャングルの王者三代のクロニクル
生命ははかない。ひとつひとつは雄大でもなければ貴重でもない手塚治虫は人間ではないものを主人公にした作品をいくつも書いているが、本作はまさに動物モノの代表作と言えるだろう。動物モノといっても単に自然の美しさや尊さを描くハートフルな作品ではないし、また自然の中で生きることの厳しさだけを描くサバイバルでもない。冒頭でこそ、肉食獣が草食獣を狩るシーンが挿入され、自然の厳しさを詠う作品かと思われるが、パンジャの登場によってその雰囲気は一蹴される。彼はジャングルの王であり、弱い動物たちを守りつつ文明とも戦う旧時代の覇者だ。知能も高く、彼を狙う人間たちを再三手玉に取るなどの見せ場もある。しかしやはり動物の域を超越することはなく、人間の手に落ち命を落とす。ここで「自然の脅威」ではなく「自然に対する人間の脅威」がクローズアップされる。屈強な勇者であったパンジャも殺されて毛皮になってしまえばその威厳もない...この感想を読む
4.04.0
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