櫻の園の評価
櫻の園についての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に漫画を読んだレビュアーによる評価が1件掲載中です。
各項目の評価分布
櫻の園の感想
30年前の作品ですが、今もまったく色褪せない、女子必読の書
伝統ある女子校で毎年上演されるチェーホフの『櫻の園』。その配役をモチーフに、演劇部に所属する4人の女子生徒を軸として、思春期の女性の鬱屈をあらわした名作。発表当時の吉田秋生の作風は、現在のような洗練されたものでなく、登場する女性達の体型はずんぐりとしていて、表情も化粧っけがなく、髪もスミベタ、という地味な絵柄だ。にもかかわらず、ステレオタイプな女子高生像からかけ離れた、しかし確かに「彼女たち」しか持ち得ない情感をぐぁっと打ち出した、その力量には今でも圧倒されるしかない。女子校特有の「エス」のノリや、セックスに対する戸惑い、女同士の関係の微妙な綾など、恒久的なテーマが、ひとつの芝居をやり遂げる「同士」としての関係を軸として描かれている。これを読んでいると、学生に戻りたくはないけれど、こんな学生生活もいいなァ、とちょっとだけ思ってしまいます。