母というものは 要するに 一人の不完全な女の事なんだ
如月雪子
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親子の愛、一方的な愛など様々な愛の形を描いた、よしながふみ氏によるマンガ愛すべき娘たちは、MELODYにて、2002年から2003年まで連載されていた作品である。 癌の発症後、見事病気に打ち勝ち、今後は自分の好きなように行きたいと願い、娘よりも3歳年下の男性と婚約する母親や、小さな頃から娘に対して「出っ歯」などの無神経すぎる暴言を浴びせて、決して褒め称えることのなかった母親と娘の関係など、複雑な親子の関係だけでなく、オーラルセックスが女にとって最大の愛情表現だと信じている女子大生など、歪んだ愛の形を描いた作品などを収めた、全編5話のオムニバスマンガとなっている。 複雑な環境で生きてきた人々の不思議な関係。愛情表現が上手く出来ず、すれ違う思いや、すれ違いながらも相手を思いやりたいと願う人々の気持ち、また変化していく心情をもどかしいながらもリアルに描いた、よしながふみ氏の代表的なるヒューマンドラマである。
さまざまな愛情の形を描いたよしながふみの連作短編集。男女の愛情や「愛情とは何か?」といったテーマもありますが、タイトルにあるように作品の中心に据えられたテーマは「娘」だと思います。母を許せない母という「娘」、母からの親離れを果たす「娘」、個人的な愛情を注ぐべき伴侶を選べない「娘」、愛情がどんなものかわからない「娘」、理想と現実の相克をはさんで向かい合う、同級生という「娘」と「娘」…。最終話において、主人公の雪子のモノローグに「母とは要するに一人の不完全な女なのだ」というくだりがあります。言葉にすればさして難しくないこのフレーズを、実感することは困難であり、この漫画はその課程を丁寧に見せてくれているのだと思います。
如月雪子
雪子の母、麻里は自分の母親(雪子の祖母)を嫌っています。麻里が自分の母親を嫌いなのは、弟に比べて自分ばかり辛くあたられていたからです。雪子自身は、母親のことはもちろん好きだし、祖母のことも嫌いではありません。雪子が祖母と話す中で、祖母から母への伝わらない愛情を知り、「母親」って絶対的な存在のようだけど、同時に、普通の一人の不完全な女性のことなのだ、と実感する場面です。
如月麻里
美しい顔立ちの母なのに、少女時代に母親から「出っ歯」「ニキビ面」と言われ続けたことがコンプレックスとなって、50歳を過ぎても自分を醜いと思い続けている。 そんな母が自分が親となった時には、決して子供の容姿を貶さないと決めた理由についての心情を語った場面でのセリフ。