正義感に突き動かされた復讐
徴用された朝鮮人の苦悩帚木蓬生の小説の根底にはいつも正義がある。彼が書いた小説の中の主人公の行動を左右する指針は正義感であると私は思っている。この『三たびの海峡』とて例外ではない。主人公の河時根は自らが正しいと思うほうに動いている。そんな帚木蓬生の小説に私は引き込まれるのだ。戦時中の朝鮮人の強制連行については、今なお様々な議論がなされている。実際に強制連行はあったのか否か。日本側としては同胞として徴用はしたけれど「強制」ではなかったという見解なのであろうか。私は「強制」という言葉の持つ意味の広さにも問題があるのではないかと考えている。日本人だって、当時は赤紙一枚で戦地に狩り出されていた。もちろん、受け取る側の都合などはお構いなしである。これだってある意味「強制」ということができるのではないか。朝鮮人の徴用を「強制」にしてしまったのは、面の役員に責任の一端があるような気がする。ノルマのよ...この感想を読む
4.54.5
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