いくえみ版ちびまる子ちゃん - かの人や月の感想

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漫画レビュー数 3,136件

かの人や月

4.174.17
画力
4.00
ストーリー
4.17
キャラクター
4.67
設定
4.00
演出
4.33
感想数
3
読んだ人
3

いくえみ版ちびまる子ちゃん

4.04.0
画力
4.0
ストーリー
3.5
キャラクター
4.5
設定
4.0
演出
4.0

目次

羽上家の日常

この話は羽上家の家族の日常生活を描いています。しかし、描き方が巧妙で、それぞれの家族に関わる人々がどう羽上家に馴染んでいくか、関わりを持つようになるのか、という短編がたくさん集まった作品になっています。それはもうキャラクターの濃い住人の集まりですから、これはもういくえみ版ちびまる子ちゃんだなと。自分でこの例えの的確さにびっくりしました。すべてが同じというわけではなく、三世代家族が珍しくなった今日ではちびまる子ちゃんやサザエさんがイメージしやすいなというだけで、話の内容は女子力高い恋愛漫画になっています。主人公という主人公はいませんが、長男の顕は頭脳明晰でルックスもよく、小学生の時からモテていました。長女のひろのは人と接することが苦手で、周囲に合わせて行動することを嫌います。なかなか難しい性格の持ち主です。次女末っ子のほのかは今時の高校生でおしゃれも恋も楽しんでいます。この兄妹は仲良しというほどベタベタな関係ではないですが、ごく一般的な兄妹で無理なく描かれているなあと思いました。大家族を嫌ったりしませんし、自分の役割分担も心得ています。簡単にしれっと家族関係を描けることに長けているなあと改めて実感させられました。嫌味ではなく、本当にそういった家族構成で先生が育ったのではないかというくらい自然で、そして話に地味さもない。コミカルな印象を受けますが、しっかりと人の気持ちの芯を見抜くような物語も含まれています。真剣な内容のあとにはきちんと箸休めを用意するいくえみ先生の技術力の高さに毎度ながら驚かされます。ひろのの人間観察の中で、お母さんがおばあちゃんのために一人分だけ味付けを別にしている、とか、喧嘩しても手をつないで買い物に出かけるおばあちゃんとおじいちゃん、とか、自分たちの日常を振り返らせるような場面もあって、胸がじーんとしました。家族ってやっぱり大事だな、と思わせてくれる話がたくさん詰まっている作品です。心が疲れたときに読みたくなる漫画だとわたしは思っています。。

不器用さも女子力

ひろののほっとけない感じが新にはツボなのでしょう。ひろのに話しかけたあと名前を教えてもらって、それを家に帰って水を飲んでいるときに思い出して好きだ、と実感する新。可愛らしいなあと第一印象がチャラくていやだなあなんてひっそりと思っていたのですが、彼のことを知れば知るほど好きになる、不思議な魅力を持った青年です。本当は友達を作りたいひろの、構ってほしいひろの、そんな心の隙間に新はするっと入り込んできます。友達からスタートした2人の関係は不器用ですれ違ったり情けなかったり、わたしたちの身の回りに溢れているような現実味のある恋の育て方で、昔を思い出しながら素直にときめきました。いい歳してと我ながら思うのですが、不器用なところがまた一段とひろのを可愛らしくしてくれて、そのあと素直な気持ちを表現するひろのの女子力を倍増させています。ツンデレとはまた違うのですが、二段階でくる愛情表現がぐっと心を掴みにきます。これはひろの自身をきちんと知ることのできた人だからこその特権だなと思いました。新だからこそ心を開いたのか、他の男性だったらどうだったかわかりませんが、本質的に似ている2人だからこそ成立した恋なのかなあなんて、お気に入りのキャラクターなので贔屓してしまいます。しかし、不器用=初々しい、健気、放っておけないに変換されるんですね。この漫画を読んで学びました。もっと早く気がつきたかったくらいです。確信犯で不器用さをアピールできるほど器用ではないので真似してもきっと無駄だったとは思いますが、女の子らしさを強調するのにポイントとなるなんていくえみ先生の設定は巧みだなあと感心しました。ひろの自体綺麗で可愛らしい容姿を持っているので、もともとのポテンシャルがあるからこそ不器用さが似合わずに浮いたのかなとも思いました。このほのぼのカップル大好きです。

家族の一員になりたいと思いました

犬のコマルと猫のポセイドンがいるのですが、ポセイドンを飼うまでのお話がまた素敵なんです。顕がまだ小学生の頃の話で、大事に大事にポセイドンを育てます。お年玉やお小遣いがなくなるというのに病院代や餌代を捻出して、顕が一番男らしく見えたのがこのポセイドンを飼うまででした。大人の顕もかっこいい場面があるのですが、それよりも強くなってほしいという願いを込めてポセイドンと名付けるあたりが子供の純粋さを表していて、こみ上げるものがありました。ひろのはコマルの早朝のお散歩に欠かさず出かけますし、おじいちゃんおばあちゃんのことを疎ましく思わずに一緒に暮らすお母さんも素敵です。宝くじのお金を豪快に食事で遣うお父さんの気持ちよさも、ほのかの月50万お小遣い頂戴というおバカ加減も、どれも愛おしくなります。家族の本来の姿を見たような気がしました。そしてこの家族に関わる人たちもまたいい人ばかりで、ラストのシーンがおじいちゃん作の家の絵というぼやけた感じも好きです。邪な気持ちが浄化されるような漫画です。

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優しくそれぞれの成長を描く主人公のひろのは大学1年生。といってもまだ18歳でピッチピチ。実家から大学へ通うという、まだまだ垢抜け切らない感じのシャイな女の子で、人と関わることが苦手だからと避けてしまう子だ。しかし、心は優しい女性であり、よく気が利く人だ。人を嫌いなのではなく、怖いからこそ、よく観察して、注意深く接している。そんなひろのに惚れた深町。きっかけは大したことじゃない。ただ、話しかけてみたら、もうずっきゅんと落っこちてしまったのだ。気づいたら、もう大好きだった。ひろののダメなところも、いいところも、全部を愛しく思える深町と出会い、ひろのが少しずつ心を外向きに開いていく姿が微笑ましい。何より、この物語において欠かせないのが「家族」の存在。2世帯で暮らしているひろのの実家では、母、父、祖母、祖父、妹、さらには社会人だった兄も帰ってきて、すっかり賑やかになる。そこに深町が入り込んで、当...この感想を読む

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4.04.0
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  • 3011文字

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