美しく妖しい雅の世界
『源氏物語』自体の映画化ではなく、『源氏物語』の作者、紫式部が生きた現実の平安時代の世界と、彼女が書いた『源氏物語』の世界が並行して描かれています。 一番のお勧めポイントは、現実の世界と物語の世界を並行して描くことで、平安時代という雅で妖しい雰囲気がとても印象的に表現されている点です。そこには、美しい姫君と貴公子が入り乱れて登場し、華やかな衣装をまとい、雅楽を奏で、花を愛で、愛を語る『光』の部分と、権力欲にまみれた傲慢な男、愛憎の狭間で揺れる女、政治と恋の駆け引き、呪詛といった『闇』の部分が、まるで美しい織物の縦糸と横糸のように絶妙に絡み合っています。時代ものが好きな人なら、その美しく、妖しい世界に魅入られ、引き込まれることでしょう。 一方で、『源氏物語』に焦点を当てると、前半部分で終わってしまいます。そこから先は、まだ紫式部が書いていないというところで終わるのです。『源氏物語』が好きな人間としては、後半こそ『源氏物語』の真髄という感じなので、少し残念です。ただ、一方で、その重要な後半へ向かう紫式部の心境がとても巧みに描かれているので、この終わり方もこれでありかなと思います。
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