1000年後の希望と絶望
1000年後の日本、高度に進化した人間達は、規律を守り、現在とは大きくことなる文明を維持しながら生きていた。 「昔はそうじゃなかった」ということを、一部の少年少女が知るまでは…。 物語は冒頭からしばらく、1000年後の世界の成り立ち、設定をこれでもかというぐらいに説明することに費やされていますが、そこを過ぎると、一気に話の流れに飛び込む格好になります。 話の流れについてゆけず、当初は面食らいますが、しだいに「何だ、この世界?」と興味がわけば、俄然話がおもしろくなっていきます。 ステレオタイプな未来像とはかけ離れた世界設定に、「なぜそうならなければならなかったのか?」と疑いを持ったら、もうしめたものです。 物語にどっぷりハマりこんだ証拠です。 この「なぜそうならなければならなかったのか」が、話の核心でもあるわけですが、それにしても見事な設定、構成力に口をあんぐりしてしまいます。 語り手の回想という文体からなる齟齬(語る内容に本人の認識のバイアスがかかっていて、第三者的事実ではない)すら、ストーリーの一部として機能しているではないですか。 大作といっていい作品です。
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