新世界よりの感想一覧
貴志 祐介による小説「新世界より」についての感想が5件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
人間が超能力を持った世界
これは、確かSF大賞とったんですよね。 面白かったんですが、すごく長いし、難しいし、頭パンクしそうです。 感心するのは、非情に緻密で細かいところまで最後の一ミリまでこだわった設定で、貴志さんの頭の良さにビックリです。作家さんなら当たり前なのかもしれないですが、こだわりようが異常な程です(笑) だから、読む方が疲れるんですとても・・・。この人は、最後にドド~んと展開するのを知っているものですから、上巻、中巻はひたすら我慢して、設定を叩き込みます。人間関係、伏線、そして予想しながらじっくり読むのでヘトヘトです。 でも、ありそうでなかったこの世界をテーマにとても面白かったです。 人間が能力を持ち、それをコントロールする大人たち。 でも、微妙にアンバランスで、ちょっとのところで保っているそのバランスを崩した時、人々は恐怖に襲われる。 あれだけ強い能力をもっているのに、精神的な弱さが見え隠れするのが...この感想を読む
1000年後の希望と絶望
1000年後の日本、高度に進化した人間達は、規律を守り、現在とは大きくことなる文明を維持しながら生きていた。「昔はそうじゃなかった」ということを、一部の少年少女が知るまでは…。物語は冒頭からしばらく、1000年後の世界の成り立ち、設定をこれでもかというぐらいに説明することに費やされていますが、そこを過ぎると、一気に話の流れに飛び込む格好になります。話の流れについてゆけず、当初は面食らいますが、しだいに「何だ、この世界?」と興味がわけば、俄然話がおもしろくなっていきます。ステレオタイプな未来像とはかけ離れた世界設定に、「なぜそうならなければならなかったのか?」と疑いを持ったら、もうしめたものです。物語にどっぷりハマりこんだ証拠です。この「なぜそうならなければならなかったのか」が、話の核心でもあるわけですが、それにしても見事な設定、構成力に口をあんぐりしてしまいます。語り手の回想という文体からなる...この感想を読む
SFやファンタジーの長編が好きな人におすすめ
舞台は千年後の日本。人々は呪力と呼ばれる念動力を手に入れ、閉ざされた町の中で一見平和で幸せな暮らしをしていた。しかし主人公たちが初めて町の外へ出た時、彼女たちの運命を変えてしまう出来事が……。この作品は上中下で三部に分かれており一見すると長そうに見えます。しかし文章は読みやすいので序盤の導入部分を過ぎれば、先の展開が気になってあっという間に読み終えてしまいます。作品中にはドボルザーグの家路という曲や様々な架空の生物が出てくるので、曲や元になった生物とかを調べたりするとより楽しめると思います。SFやファンタジーが好きな人におすすめしたい作品です。
アニメ化にもなった作品
SF作品ですので少し頭では想像しにくいような部分がありますが、そういったところはアニメ化されていますのでそちらも含めて楽しめると思います。序盤は人物紹介や能力紹介、世界設定の把握という感じですので少し退屈かもしれません。とくにあまり小説を読まない方などは少し難解な言葉が出てきますのでとっつきにくいところがあります。ですがそれを我慢して少しずつでも理解していけばいつの間にか新世界にのめり込んでいることでしょう。なにげにSF作品とは言っても人間の心の醜さや怖さもしっかりと表現されているので読みごたえはあります。本格的に面白くなるのは中巻からですが「新世界」という一つの世界を楽しむためにもしっかりと読んでおくべき一冊です。
雰囲気のあるSFホラー
超能力が使える千年後の関東地方を舞台としたSFホラー。SFは苦手な私でも読みやすかった作品。実は、この作家さんの作品を読むのはこれが初めてです。子供たちは大人になるために呪力を得る。しかし呪力を得られなかった子供たちは?何か隠している大人たち…そして、何も知らないまま、子供たちは悪夢へ飲み込まれていく…。部隊が集落というのも閉塞的な雰囲気があって良い。するすると引き込まれてあっという間に上巻を読み終わりました。バケネズミなどの実在しない生物がキーになっていますね。ですが、残虐なシーンやエロシーンもあるので、苦手な方は注意です。それが作品にいい味を出しているんですがね。