動乱の1640年代のイングランドのピューリタン革命の中心人物として、英国国教と国王チャールズ一世を相手どって絶対君主王政に挑戦した男、オリバー・クロムウェルを描いた一大歴史絵巻 「クロムウェル」 - クロムウェルの感想

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動乱の1640年代のイングランドのピューリタン革命の中心人物として、英国国教と国王チャールズ一世を相手どって絶対君主王政に挑戦した男、オリバー・クロムウェルを描いた一大歴史絵巻 「クロムウェル」

4.54.5
映像
4.5
脚本
4.5
キャスト
5.0
音楽
4.5
演出
4.5

私は映画のジャンルの中でも、とりわけ歴史劇が大好きで、好きな映画を思い出しただけでも、リチャード・バートン、ピーターオトゥール主演の「ベケット」、ポール・スコフィールド主演の「わが命つきるとも」、ピーター・オトゥール、キャサリン・ヘップバーン主演の「冬のライオン」、リチャード・バートン、ジュヌビエーブ・ビュジョルド主演の「1000日のアン」などなど、数え上げたらきりがない程です。 これらの歴史劇は、いづれも、王朝を背景に、人間と人間の激突や葛藤をオーソドックスに描いた政治性のある人間ドラマなのです。

この映画「クロムウェル」も、1640年代に英国史上初めての共和制を打ち立てたオリバー・クロムウェルと英国王チャールズ一世の激突を迫力を持って描き出しています。 アメリカのコロムビア映画の作品ですが、スタッフ、キャストはオール・イギリス系で固めているため、この映画はアメリカ資本によるイギリス映画という事になります。

私が大好きな歴史劇のフレッド・ジンネマン監督が撮った「わが命つきるとも」も、監督以外はほとんどがイギリス勢であり、舞台経験の豊富なイギリスの演技者を使ってキャストを組んだのが、作品に厚味と深さをもたらした要因になっていたように思います。 それと同様にこの「クロムウェル」では、イギリスの名優リチャード・ハリスとアレック・ギネスを中心に据えて、その脇をイギリスの舞台俳優でがっちりと固めており、彼らの各々の演技合戦がこの作品の大きな見どころの一つになっていると思います。

この映画が製作された1970年代の前半の頃の映画界は、若手の演出家が無名ないしは、それに近い俳優を使い、彼らの素人っぽさを生かしてユニークな感覚で画面を構築するというフィ―リング重視の映画が主流でしたが、ドラマティックな歴史劇になると、やはり卓越した演技力の持ち主が必要で、フィーリング重視の映画などの場合は、一応それらしく見せれば何とかかっこうはつくでしょうが、このようなきっちりとした歴史劇では、それらしくみせるだけでは、我々観る者を納得させられるはずもないのです。

ある程度、歴史上の人物になりきって、チョウチョウハッシと火花を散らすような演技合戦を繰り広げなければ、劇的な迫力が盛り上がらず、観る者に深い劇的な感銘や興奮を与えられないのです。 いくら演出がうまくても、こればかりはごまかしがきかず、私の大好きな歴史劇の諸作品も全て、しっかりした演技的技量の備わった舞台出身の役者を起用しているのは、このためだろうと思うのです。

この映画の主人公に扮するリチャード・ハリスは、かつてミュージカル映画「キャメロット」でアーサー王を好演した俳優で、部下の騎士ランスロットと王妃グェナビアの不倫を知りながら、愛する二人を傷つけまいとして悩み苦しむアーサー王の心情を、ミュージカル映画の枠を乗り越えて、まるで"心理劇"のような深い陰影の中に、生々しく演じてみせていましたが、今回の「クロムウェル」では、そのアーサー王を遥かに凌駕する程の熱演を示していると思います。

この映画では、オリバー・クロムウェルという人物を非常な愛国者として描いていきます。 祖国を愛するがゆえに、絶対君主王政に反抗して、議会を中心とする"共和制"を確立しようとしたのだ----と、映画は訴えかけてきます。 そのあたりの、法と宗教の堕落をみて、敢然と国家権力に挑戦するクロムウェルの"信念と情熱"を、的確に表現するリチャード・ハリスの熱の入った好演が見ものです。

そして、クロムウェルが率いる軍隊と、王党軍が大平原で衝突するところは、大がかりな戦闘シーンで描かれており、一大スペクタクル的な見せ場になっていて、映画的興奮に満ち溢れています。 そして、王党軍を打ち破ったクロムウェルは、国王のチャールズ一世を逮捕しますが、彼は国王の生命まで奪おうなどとは考えておらず、それどころか、国王が議会に一切、干渉しない事を条件に王位を認めようとまで譲歩するのですが、チャールズ一世が保身と権力欲のために外国の力を借りようとしているのを知って、遂に彼は、国王の裁判を議会に要請し、その結果、チャールズ一世は、断頭台に送られるのです。

しかし、このようにして、やっとクロムウェルが獲得したデモクラシーも、やがては議会の腐敗によって挫折してしまうのです--------。 議員たちから王位に就く事を勧められたクロムウェルが、自嘲するかのようにかすれた声で、笑い続ける場面は、彼の悲痛な心を鮮やかに捉えていて、非常に印象的であり、リチャード・ハリスの、観ている私の心を震わすような演技が、ひと際、光彩を放っているように感じました。

結局、クロムウェルは護民官として、軍事独裁政治を行なわざるを得なくなり、彼の死後、再び王政が復活した----と、画面は淡々と説明しているのです。 これを観て思うのは、革命というものは、いかに難しいものであるかという事がよくわかります。 最初のうちは協力して、共通の敵と戦いながら、革命が進むにつれて内部分裂を起こし、その反動化と戦っているうちに、革命そのものが思わぬ方向へ向かっていってしまう。 そういう、革命の至難さを明確に指し示したのも、この映画の良さと言えるのかも知れません。

主役のオリバー・クロムウェルを演じたリチャード・ハリスも、もちろん素晴らしかったのですが、私の個人的な感想を言うと、彼以上に、悲運の英国王チャールズ一世を演じた、アレック・ギネスの名演技に本当に酔いしれてしまいました。 この映画で、アレック・ギネスは、当然、暴君として扱われそうな役どころを、一人の人間としての脆さや弱さを持ちながらも、狡猾で老獪なやり方で、政治権力へのあくなき執念をみせるというキャラクターを、実に巧妙に、奥深く演じていて、まさに鳥肌が立つ思いでした。

気の強い王妃に全く頭が上がらず、可愛い子供たちのために、是か非でも王の権力を守り抜こうとする一人の凡人。 愚かではないが、利口でもないという、ごく平凡な男が、たまたま国王だったがゆえに起きた悲劇を、深く掘り下げて表現したアレック・ギネスの演技は圧巻でした。

そして、この作品自体も、ケン・ヒューズ監督の格調高い、正攻法の演出によって「わが命つきるとも」の厳しい人間洞察と、「1000日のアン」のドラマティックな映画的緊張感を併せ持ったような、味わい深い歴史劇の佳作になっていると思います。

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