正真正銘のシャーロック・ホームズ物の本格長編ミステリの傑作「バスカヴィル家の犬」
シャーロック・ホームズのもとにモーティマー医師という人物がたずねてきた。彼はバスカヴィル家の後見人であり、とある伝承に悩まされているというのである。彼が言うには、先代となってしまったバスカヴィルが、ダートムーアの地に伝わる魔犬によって殺害された疑いがあるのだと・・・・・・。
そして、バスカヴィルの家系をたどって、新たなバスカヴィル家の当主を迎え入れる事になったのだが、どうすればいいかホームズの助言をもらいたいというのである。とりあえず、新たな当主を迎え入れる事になったバスカヴィル家。しかし、その当主にさまざまな怪しい出来事がふりかかり--------。
シャーロック・ホームズの長編の中では(といっても四編しかないのだが)群を抜いて優れた作品と言えると思う。先に読んだ「緋色の研究」「四つの署名」に関しては、基本的には短編を長編の形式に引き伸ばしただけというふうに感じられた。しかし、この「バスカヴィル家の犬」は、正真正銘の本格長編ミステリ作品と言えるものだと思う。
ミステリを構成する謎の要素となるものも、それぞれ興味深く作られている。バスカヴィル家に伝わる魔犬伝承、無くなった片方のブーツ、怪しい使用人、さらに怪しい近隣に住む兄妹、そして、ダートムーアという神秘的な土地。さらにはミスリーディングを誘うための脱獄囚の存在も色を添えていると言えよう。
こうした、様々な謎をホームズが見事に解きほぐしていくさまは、ミステリ好きにとっては、なんともいえないものである。ただ一点惜しいと思ったのは、“魔犬”というものの存在自体に、もう一ひねりして欲しかったなという気がします。
また、この作品では、あとがきによって、著者のコナン・ドイルが、この作品を書く事になった経緯が語られている。これがまた神秘的な話であり、この「バスカヴィル家の犬」という作品の魅力をさらに引き立てていると思う。
この作品こそ、短編だけでは満たされなかった、我々ホームズファンの心の隙間を埋めることができた作品だと言えるのではないだろうか。
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