名古屋が生んだ毒舌おばさんの悩み相談
とにかくワガママなハルコさんに脱帽
中島ハルコにはモデルが実在するそうである。こんなワガママでずうずうしいオバハンが本当にいるのかと思うとげんなりしそう…そう思ったのは初めだけで、本を読み終えた時には私はもう中島ハルコの大ファンになってしまっていたのである。もう、独り占めして悩みをつらつらと語り明かしたいと願うのだが、ハルコさんは私のたわいもない話を毒舌で一蹴することだろう。そんな人に出会いたい。女同士の友情って、慰め合いのパターンが多い。悩みを打ち明けても「そう、大変ね」とおためごかしに同情はするが、人の悩み相談なんてうっとうしいだけなんだ。本当は。ハルコさんにとっても、それは同じだろう。ではなぜ、そんなうっとうしい悩み相談を聞いてあげるのか。それは、自分にメリットがあるから。相談にのってあげることで、美味しいものを食べさせてもらえる。仕事を融通してもらえる。そこんとこから、もうはっきりしていて、それがかえって清々しいのだ。
ずうずうしさも、ハルコさんの域までいくと、それはもうあっぱれという他ない。ケチ?うーん、それともなんだか違う気がするんだけど、自分の使えるものは何でも利用しちゃうよという割り切りなんだろうか。でも、人がケチるのは許さないんだよね。そこが面白くて、そういう人っているよねーと微笑ましくなってしまう。いや、やっぱり身近にいたら気を遣うんだろうな。敵に回すと怖い女、それが中島ハルコなのである。
とにかく毒舌なハルコさんに感服
この小説のなかのハルコさんへの悩み相談の回答で「目からウロコ!」だった話がふたつある。ひとつは「将来の夢はギタリスト」という息子に説教をしてくれというういろう屋の主人への一言。ギタリストなんかで食っていける訳がないという主人に同調していたハルコさんが息子の隆行を見た途端、コロッと持論を覆すところである。イケメンは何をしても食いっぱぐれることはないそうだ。そういわれたら、なぜか納得してしまう。「人は見た目が9割」とはよく言ったもの。ギタリストになれなくったって、いや多分なれないだろうが、老舗のういろう屋のボンボンがイケメンだったら何とかなっちゃう気がするわ。最終的には家に戻ってもいいんだし、若いうちは失敗してもイケメンには見方になってくれるオンナがつくもの。人はそれを「ヒモ」というかもしれない。でも青春時代の一時期にそんなことがあってもいいんじゃない。将来は誰かオンナが隆行を食べさせてくれるんだって。どんだけイケメンなんだか知らないが、そんなこと堂々とアドバイスするハルコさんって、ほんとに面白い。
もうひとつは、夫源病に悩む専業主婦の同級生への一言。専業主婦の甘さをビシッと言い当てる。結局それは自業自得だと言い放つところ。夫に食べさせて貰ったのだから、今更夫が定年になって家にいるからって文句は言ったらだめなのね。ハルコさん、私は心に刻んだよ。夫源病の特効薬は知恵とお金。夫のプライドを支えてあげることなんだわね。将来、ハルコさんの金言が役立つ時が私にも来るかもしれないわ。覚悟しておかなくっちゃ。
あ、それから、親との関係性もなるほどと思うことがあったわ。これは中島ハルコさんのモデルになった人の意見なのか、林真理子先生の意見なのかわからないけど、「親から逃げる」ことも子どもがしなくてはいけないことなんだな。それが、自立なのかもしれないな。親のことを語る章は、つくづく考えてしまったよ。どの回答も間違ってない、一理あるなと感銘を受けたわ。きっとそう思わない人もいるとは思うけど。
愛知県民ならハルコさんに同調
ハイ、ここで問題です。「メイダイ」っていったら何大学でしょうか。関東地方の人は「明治大学」と答えるかもしれないけど、愛知県民、いや東海地方の人々は圧倒的に「名古屋大学」なのだ。とにかく愛知県民は外に出て行かないの。就職先に困らないから。ほら世界的に有名なクルマの会社があるでしょう。関連企業がゴロゴロあるし、ほどよく都会で住みやすいのか。愛知県の高校生とその保護者の名大信仰はすごいものがあると思う。すごーくできると東大、すごくできると京大。でも、慶応、早稲田に進学するくらいなら「名大」のがいいのにと、考える人が多いの。もしくはそれが嫌で外(県外)の大学に行く人もたまにはいるけど。だって、名大って旧帝大のなかではゴニョゴニョ…。名大出たら名古屋じゃエリートコースだからね。この小説、ハルコさんは名古屋出身とのことだから、林真理子先生もいろいろ調べたんだろうね。実名で大学の名前がたくさんでてくる。ハルコさんはちょっと年配だから現状の名古屋とは違うかもしれないけど、一昔前は本当に大学に対する印象ってこの小説の中に書かれているとおりだったんだと思う。あと、名古屋の花嫁事情もね。今は少し落ち着いて来ているよ。そんなに派手婚ってわけじゃないから、名古屋の女性を敬遠しないでね。
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