実写化嫌いをも唸らせる一作 - SPACE BATTLESHIP ヤマトの感想

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SPACE BATTLESHIP ヤマト

5.005.00
映像
4.00
脚本
5.00
キャスト
4.50
音楽
4.00
演出
4.50
感想数
1
観た人
1

実写化嫌いをも唸らせる一作

5.05.0
映像
4.0
脚本
5.0
キャスト
4.5
音楽
4.0
演出
4.5

目次

大人気アニメの実写化として

漫画やアニメの実写化というのは、大抵は失敗するどころか素晴らしい原作に泥を塗るようなことさえあるため多くのファンから嫌われるものです。一方で有名な作品などはそのネームバリューだけで客を呼べるということもあり、ファンの多い作品ほど実写化されやすく多くの実写アンチを生み出すこととなっています。

さて、この作品はアニメの中でも日本のアニメ史上において一時代を築き上げた宇宙戦艦ヤマトというコンテンツの実写化です。ファンの層は老若男女を問わず非常に厚く、当然それには不満が噴出することとなりました。しかし、実際に公開されてみると、この作品を見て様々な感想を抱いた人はいたものの、大嫌いと思うような原作のファンはそれほどいなかったのです。なぜこの作品は嫌われずにすんだのか、その理由を見ていきたいと思います。

ストーリーが良い

僅か二時間の映画にもかかわらず、なんとこの映画は宇宙戦艦ヤマト本編だけではなく、さらば宇宙戦艦ヤマトの要素も入れその二つを合わせた重厚なストーリーとなっています。これにはシリーズを知っているファンほど二つをうまく合わせたものだと感心させられてしまいます。

また、滅びゆく地球の悲壮感や、家族との別れの寂しさなどが、実写化であるという点を生かしてうまく表現されていることも魅力です。アニメのキャラクターでも様々な感情を感じることはできますが、熟練の役者さんの演技にはそれとはまた違った力があり引き込まれてしまいます。特に一人当たりの制限時間が決められた地球との最後の交信シーンの演技は迫真のものであり、実写はどうしても嫌いという人でさえこの部分だけは心に響いたなどと認めるほどです。

アニメとは違うことに挑戦し、成功している

アニメをそのままなぞった実写というのは、アニメの画面で起こることをそのまま役者が演じられるはずもないため、多くの場合単なる劣化となってしまいます。かといってアニメに大幅に変更を加えると、大抵は本来持っていた良さを潰してしまい、劣化以下の駄作としか言えないような映画になってしまうのです。

そんな中、この映画はアニメとは違ったことをする茨の道に挑みました。まず、宇宙戦艦ヤマトの大きさを艦載機を積むといった様々な場面から整合性の取れるサイズに変更。更に敵であるガミラスを、青い肌の人間ではなくコミュニケーション不能なエイリアンのような宇宙人とし、戦闘艦の外観もまったく違うものとします。また、ガミラスやイスカンダルの正体、コスモクリーナーとは何か、といった点にも変更が加えられており、大筋のストーリーだけは本編とさらばをうまく組み合わせそれをなぞったものですが、それ以外は実に様々な点がオリジナルのものとなっているのです。

そしてこの非常に多岐にわたる変更は、この映画に非常に良い影響をもたらしました。大幅な内容の変更によって、人が演じても無理のない、見る側がアニメの宇宙戦艦ヤマトとはまた違ったものとして捉えることのできる映画となることができたのです。そしてここからが制作陣の上手な点なのですが、様々な変更を加えながらも、宇宙戦艦ヤマトの見どころであり外せない部分はしっかりと残しているのです。パンフレットを読むとスタッフにもキャストにも宇宙戦艦ヤマトが好き、ヤマトを見て育ったという人が非常に多く、彼らによってヤマトならではの良さが失われずに済んだのではないかと感じました。

及第点のキャスティング

アニメのキャラクターデザインに非常によく似た役者さんを多数起用し、ヤマトらしい雰囲気を作り上げています。特に真田さんと斎藤のキャスティングは完璧と言って良く、さらばをオマージュした彼らの散り様と合わせて多くのファンにこの作品を認めさせました。

しかし中には、古代の役であるキムタクの個性が強すぎるためにキムタク役のキムタクのような感じになっていたり、佐渡先生が何故か女性だったりと微妙に感じる点もあり、素晴らしい配役とまでは言えません。けれども、受け入れがたい領域に足を突っ込むようなことは無く、比較的セーフなラインで踏みとどまることができているのです。映画は売らなければならないのだから、多少の客寄せパンダ的な配役も仕方がない。全員を全く似ていない売りだしたいアイドルや俳優で固めずあくまで少しに留めたために、多くのファンがそのように受け入れることが可能となったのです。

まとめとして

他にも細かな理由はいくつもあると思うのですが、それらも全てひっくるめて、この作品が実写化でありながらファンに嫌われなかった理由は原作愛に溢れていたという点に尽きるかと思います。制作陣は宇宙戦艦ヤマトを好きな人ばかりであり、だからこそ原作とは異なった設定を加えることでまた別の新しいヤマトの世界を作り、ヤマトを知らない人から熱烈なファンに至るまで、様々な人に楽しんでもらう。その目論見が見事に成功し、原作ファンにも認められるヤマトの実写化映画が生まれたのではないかと私は考えています。

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