一番かっこいいと思えたブラッド・ピット - ジョー・ブラックをよろしくの感想

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一番かっこいいと思えたブラッド・ピット

2.02.0
映像
2.0
脚本
2.0
キャスト
2.0
音楽
2.0
演出
2.0

目次

人懐っこい笑顔が印象的な始まり方

この映画はブラッド・ピットが死神を演じている。その死神はブラッド・ピットが二役で演じている青年が事故で死んだその体を拝借したという形になっている。だから死神に乗り移られる前の青年とその後の青年は見た目は一緒でも別人ということになる。その難しい役をブラッド・ピットはうまく演じ分けていた。
この青年とコーヒーショップで初めて出会ったスーザンは、人目で恋に落ちそうな表情だった。この表情がとてもリアルで可愛らしく、この女優に好感が持てた。この女優クレア・フォーラニはこの「ジョー・ブラックによろしく」で初めて知ったのだけど、この役はよくはまっていた。
この映画の見所の一つはコーヒーショップでのブラッド・ピットだと思う。恐らく今まで見た映画の中でもっとも格好いい彼ではないだろうか。相手の警戒心を解いてしまう人懐っこい笑顔やいかにもリラックスした仕草など、母性をくすぐられてしまい女性ならとろけてしまうものだと思った。ブラッド・ピットを格好いいと思ったことはあまりなかったのだけど(どうしてもマッチョな強さを感じてしまうので)、今回のブラッド・ピットは弱さの上脆さも感じさせて、格好いいという人の気持ちがわかったような気がした。
意外なことにこのブラッド・ピットは男性も格好いいと思うらしい。このコーヒーショップのシーンを“研究”していた友人が二人いたことを思うと、かなりのものだと思う。その良さを説かれても観ていなかったのだけど(人に薦められた映画ほどつまらないものはないと思っていたので)、今この映画を初めて見てその気持ちがわかった気がする。
彼の出る映画はどれも容貌がどうというよりも役者としてその演技が素晴らしく、顔が格好いいというのとは違うと思っていた。
しかし今回のこの映画では初めてブラッド・ピットを格好いいと思ってしまった。

人間世界を体験したいと思った死神

コーヒーショップの青年が事故で恐らくは死亡した身を借りて、アンソニー・ホプキンス演じるビルの目の前に登場する(その前に、コーヒーショップ前での事故の場面はびっくりした。ひどく派手に跳ね飛ばされたのがリアルで、衝撃的だった)。
そのジョー・ブラックと名乗るその青年は、人間世界に興味を持ちビルを水先案内人として選び案内するように命じる。死期を少し延ばしてやるということを条件にして。
こういう設定はいささか少女マンガチックのような印象がないではないけれど、ブラッド・ピットとアンソニー・ホプキンスの演技がそれを深みのあるものにしている。
特に初めてビルと対峙したとき(どこからか見ていたとは思うけれど)のジョー・ブラックの相手を観察する目つきが心に残った。しかし非情な死神であるとしてもいわば観光旅行に来ているわけだから、彼はたちまち人間界にある様々なものに魅了される。その一つがピーナツバターだ。初めて食べるピーナツバターに笑みがこぼれた彼に向かって、誇らしげにそのピーナツバターのおいしさを語る給仕がまた微笑ましい。
また無理やりビルを丸め込んで出席した役員会議で出されたクッキーにも感動している。ただここはその“クッキー”という言葉を知らなかったほうが良かったなと思った。いきなり“このクッキーをもっと”というよりは、“この甘くておいしいもの”とかいった描写のほうがらしいかなと思ったところだ。

クレア・フォーラニの恋の演技の良し悪し

彼女のジョー・ブラックに恋する演技は演技でないくらいの真剣さとリアルさを感じる(実際付き合っていたということらしいから、あながちかもしれないが)。そしてそこに恋する女性の可愛らしさがプラスして彼女自身をとても魅力的に見せている。
とはいえ、心にひっかかったことはいくつかある。例えば、いきなりパリッシュ家の食卓に同席しているコーヒーショップの青年を始めは驚きながらも、どうやら人格は違うことに気づき、「あなた誰?」と問う場面がある。食卓に同席してからその言葉までさほど時間がたっていないことを考えると、正体に気づくのがちょっと早過ぎないかという気がした。
またコーヒーショップの青年でないと気づきながらもジョー・ブラックに惹かれてしまう葛藤というものがあまり感じられない。最初に心を惹かれた青年の人格が違ってしまっているのに、この心変わりの早さは若干リアリティがなかった。コーヒーショップの青年ではなくジョーに惹かれる女心をもっと伝えてほしかったところではある。
しかしここでジョーに固執してしまえば、ジョーが去ったあとのコーヒーショップの青年を愛せないだろうし、ここはあやふやにするのがストーリーとしてはいいのかもしれないが、どうにもひっかかってしまったところだ。

死神としてのブラッド・ピットの演技の良さ

いわば“観光”のような気持ちで人間界にやってきたジョーだったけれど、その人間の面白さ、愛情、食べるものに魅了されている。前述したようにピーナツバターがその最たるものだけれど、それ以外にもブラッド・ピットは好奇心で夢中になってしまっている死神をうまく演じていた。
またジョーが好奇心をそそられているのはなにも食べ物ばかりではない。ジムのバースディパーティに出すケーキをジムに選んでもらおうとアリソンがそのケーキをディナーに登場させたとき、ジムはそのパーティについて「くそパーティ」と口を滑らせてしまう。そのパーティを一所懸命成功させようと忙殺されているアリソンにその言葉はあまりにも思いやりにかけるものだった。そのやりとりをジョーは興味深げに見ていたけれど、クインスの機転で食卓に笑いが戻ったとき、ジョーも素晴らしい笑顔をした。その笑顔はまるで演技ではないような、人間の善の部分を実感したかのような温かみのある笑みのように感じた。
だけど逆に、死神としての怖さや死の実感といったものは彼からはあまり感じられなかった。ジムと初めて対峙したときのこの世のものではないような相手を観察する目つきはなかなかのものだったと思うけれど、怖さや冷たさといったものはあまり感じられなかった。そしてジョーはストーリーが進むにつれどんどん人間くさくなっていく。スーザンを連れて行くといったジョーにジムが考え直せと言ったときのあの後ろ向きのままの演技は、顔が見えないにもかかわらず彼の苦悩が伝わってくるようだった。
好奇心、苦悩、愛情、思いやりといったおよそ死神から一番縁遠いような気持ちはもしかしたらジョーが人間界に来ることによって培われたものかもしれない。だから反面その冷たさや非情さが感じられたなら、もっとその差が際立って良かったのかもしれないなとは思った。

黒人の女性とジョーとの不思議な絆

ジョーがスーザンを追って入った病院で出会った黒人女性とジョーとの不思議な出会いもこの映画で印象的なところだ。一目見た瞬間彼を悪霊と呼んだ彼女だけれど、次に出会ったときには彼が変わったことを目ざとく見抜く。
病室で彼女を見舞ったジョーは、言いたかったことを言いたいように言うのだけど、その声音の根底には愛情があるように感じられた。だからどれほどきつい言葉を使っていても、その言い合いはまるで母親と息子のケンカのような印象さえ受けた。
結局彼女の懇願に折れて死を与えたジョーだったけれど、その様子は決して邪悪なものではなく愛や光さえ感じるようなものだった。ブラッド・ピット演じるジョーには死をもたらす者としての冷たさなどは感じられない。そこには神や天使のような愛が感じられてしまうからだ。
そういう意味ではブラッド・ピットはミスキャストだったのかもしれない。それを感じたのがこのシーンだった。

ちょっと軽すぎるような印象のラスト

それまでのストーリー展開に比べるとラストはいささかコメディ風味さえ感じられる軽ささえ感じられた。死神としての立場をドリューに告白するのかと思いきや、「税務署の職員だ」というセリフはラストの着地どころが分からず、匙を投げたのかなと思うくらいの唐突さだった。しかし「死と税金は逃れられない」という初めのほうのセリフを伏線とするならばそういうわけでもなさそうだ。だから首を捻りながらも、まあこういうラストもあるのかなと納得せざるを得なかった。
旅を終えたとするジョーは約束どおりジムを連れていく。そして帰りにはジョーが出て行った後の“コーヒーショップの店員”としての青年が帰ってくる。当然ながら何もわかっていない様子の彼に対して、スーザンはそのまま変わらず彼を愛しているようなセリフを伝える。ここはこれからどうなるところかなと興味がわいたところだ。うまくいくのか、いかないのか。少なくともハッピーエンドといえるラストだけれど、観客はいろいろ想像をしてしまうと思う(ここで花火が派手に打ちあがるところはいささか演出過多だと思ったけれど)。
全体的な印象としては生と死の重さよりも、ラブロマンス的要素の方が大きいと思う。余計な音楽もなかったし、昔流行したヴァンパイアとの恋愛よりも、個人的にはよかったと思えるラブ・ストーリーだった。
ただ、スタッフロール抜きで2時間54分は長かった。もっとシンプルに出来るストーリーだとは思う。

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他のレビュアーの感想・評価

去りがたい。それが生だ

涙なしには見られない。ラストが近づくにつれて切なくなる映画だった。不思議な死神の魅力大企業の社長を迎えに死神がやってくるが、死神は社長ビル・パリッシュの寿命を延ばす代わりに、「この世」を案内してくれと取引を持ち掛ける。そんな奇抜なストーリーなのにどうしてこんなに感情移入できるんだろう。俳優の演技?脚本?監督?作品自体はゴールデンラズベリー賞にノミネートされたというが、そんなにひどい映画だっただろうか?1934年に公開された『明日なき抱擁』という映画のリメイクらしいが、この元作品を見ていないので、比較はできない。でも泣けるというのは、キャラクターに心底感情移入できたからだと思う。それだけ死ぬ運命にある社長はもちろん、「死神」も魅力的だったのだ。デスノートの新作映画が公開されているが、リュークといい、本作のジョー・ブラックといい、死神はよほど人間界を引っ掻き回すのが好きなようだ。生にしがみつく...この感想を読む

3.53.5
  • 小太郎小太郎
  • 158view
  • 2107文字
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