去りがたい。それが生だ - ジョー・ブラックをよろしくの感想

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去りがたい。それが生だ

3.53.5
映像
3.5
脚本
4.0
キャスト
4.5
音楽
3.5
演出
3.5

目次

涙なしには見られない。ラストが近づくにつれて切なくなる映画だった。

不思議な死神の魅力

大企業の社長を迎えに死神がやってくるが、死神は社長ビル・パリッシュの寿命を延ばす代わりに、「この世」を案内してくれと取引を持ち掛ける。そんな奇抜なストーリーなのにどうしてこんなに感情移入できるんだろう。俳優の演技?脚本?監督?

作品自体はゴールデンラズベリー賞にノミネートされたというが、そんなにひどい映画だっただろうか?1934年に公開された『明日なき抱擁』という映画のリメイクらしいが、この元作品を見ていないので、比較はできない。でも泣けるというのは、キャラクターに心底感情移入できたからだと思う。それだけ死ぬ運命にある社長はもちろん、「死神」も魅力的だったのだ。

デスノートの新作映画が公開されているが、リュークといい、本作のジョー・ブラックといい、死神はよほど人間界を引っ掻き回すのが好きなようだ。生にしがみつく様、死を目前にしてあがく様が、一番人間らしくて俗っぽいからだろうか。生死に一番関わる死神の性格も俗っぽいものが多いように思う。俗っぽいから、人間臭さがあって、一番遠ざけておきたいのに身近に感じるのかもしれない。

本作も例外ではなく、現世にやって来た死神は人間界を引っ掻き回す。ビルの娘と恋に落ちたり、彼の人間関係や、果ては会社まで危機に陥らせ、これでもかと彼の今まで築いてきたものを壊す。死神というより疫病神である。でもこの死神を心底憎めなかったのは、人間界に溶け込もうとしている死神の矛盾がおかしくて、ちょっとチャーミングだったからかもしれない。

人間世界に滞在するうちに、スーザンと恋に落ち、「愛とは何か」と悩んでいる死神の姿は、滑稽だけど笑い飛ばしてしまうものではなく、見守ってあげたくなってくる。それは、この死神が真剣に恋をしているからだと思う。悩んで悩み抜いた結果が、この映画の結末だ。スーザンに別れを告げるシーン、目に涙を一杯に浮かべて花火を見ているシーンなどは、胸に迫るものがある。

死神でなくても「愛とは何か」なんてわからない。答えは千差万別だ。きっと愛の数だけある。答えだと思っていても、誰かの受け売りだったり、どこかで聞いた言葉だったりするものだ。普通の人がわかった「つもり」になっていることを、死神ジョー・ブラックは不器用だけど真正面から受け止めて、あの世に帰っていったように思う。

俳優の魅力

まずはジョー・ブラックを演じるブラット・ピット。この時まだ30代のはずだ。それなのになんだ、この初々しさは!サラサラのブロンドヘアーがとても素敵だ。冒頭のコーヒーショップの青年ときたら…。死神が乗り移る前の邪気のない笑顔。あんな笑顔を見せられたら、スーザンでなくても一目惚れしてしまう。しかし、ビジュアルだけではない。細かな心情変化も見逃せない。死神ジョーの初体験の後はこっちが照れてしまった。初ピーナッツバターの味よりも、初H。死神はやっぱり俗っぽい。最後に恋敵のドリューに正体を明かすシーンは最高だ。ビルを演じるアンソニー・ホプキンスと並んでドリューをやり込めたシーンは最高にかっこいい。

さて次にアンソニー・ホプキンス。正直に言って、『羊たちの沈黙』のレクター博士のイメージしかなかった。(おそらくこれを見たときは、彼のほかの映画を見たことがなかったように思う。)しかし、一転!こんなに優しい表情があるのかと新発見。殺人鬼しか知らなかった私には衝撃だった。

仕事一筋のワンマン社長で、時間と仕事に追われて常に険しい表情をしている頑固ジジイだったのが、ストーリーが進むにつれて百面相のように顔色が変わっていき、感情を爆発させるのが面白い。そんなビルと、常に冷ややかで憎たらしさすら覚えるジョーとのコントラストが見どころだ。

 そして、ジョーが発つ日を告げた後の表情はとても穏やかだ。諦めとは違う、死を覚悟した表情。死受け入れた人というのは、ああも穏やかになるものだろうか。ジョーのような死神が迎えにきたら、あんな気持ちになれるんだろうか。アンソニー・ホプキンス、じい様だけど大好きになりました。

去りがたい。それが生だ

印象的だったジャマイカ人の老婆の患者のシーン。この老婆だけがジョーの正体に気づく。物語の進行に直接関係はないが、重要なシーンだと思う。ジョーは言う「人間はわがままだ!迎えに行けばまだ早いというし、遅ければ早く連れて行けという!」。正にそうだ。私だっていま目の前に死神があらわれて「寿命だよ」なんて言われても納得なんて出来やしない。だから、見苦しくあがいて鉄面皮のワンマン社長すら鎧が解かれていくのだろう。でも、ビルはラストでこう言う「去りがたい。それが生だ」。

DVDの紹介を見ていると、ラブストーリーにカテゴライズされていることもあるが、どちらかというとヒューマンドラマだと思う。ラブストーリーとしてみると、展開はだるいし、ハッピーエンドではないので疲れるだけだ。しかし、生と死、愛とは何かを問うヒューマンドラマだから、最後のセリフに重みが増す。しかし、もう少し短くても良かったかもしれない。

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一番かっこいいと思えたブラッド・ピット

人懐っこい笑顔が印象的な始まり方この映画はブラッド・ピットが死神を演じている。その死神はブラッド・ピットが二役で演じている青年が事故で死んだその体を拝借したという形になっている。だから死神に乗り移られる前の青年とその後の青年は見た目は一緒でも別人ということになる。その難しい役をブラッド・ピットはうまく演じ分けていた。この青年とコーヒーショップで初めて出会ったスーザンは、人目で恋に落ちそうな表情だった。この表情がとてもリアルで可愛らしく、この女優に好感が持てた。この女優クレア・フォーラニはこの「ジョー・ブラックによろしく」で初めて知ったのだけど、この役はよくはまっていた。この映画の見所の一つはコーヒーショップでのブラッド・ピットだと思う。恐らく今まで見た映画の中でもっとも格好いい彼ではないだろうか。相手の警戒心を解いてしまう人懐っこい笑顔やいかにもリラックスした仕草など、母性をくすぐられ...この感想を読む

2.02.0
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