言葉の大切さを考えさせられた大ヒット恋愛ドラマ
言葉にすることは難しいこと
1995年に放送されたものということもあり、最終回にポケベルが登場したくらいで作中はまだ携帯電話やSNSがない時代で公衆電話やファックス、そして手紙を書くということが多く見られ今よりも大切な人と会うためや連絡と取るために試行錯誤されている様子がとても印象的でした。
待ち合わせをしていても待ち合わせ場所が分かりづらかったりすると途中で連絡を取り合うことが出来なかったりすれ違いを生じやすい、とても不便な部分を多く感じました。でも、だからこそ偶然会えた時の嬉しさや相手が自分を待っていてくれた時の幸福感は今より何倍にも増して感じた時代であったことも分かります。今でいうメールやLINEが当時ファックスで行われていることもとても新鮮でした。必ず自分の書いた文字で相手に届く、ということも機械的でなく人の想いや温かさがより伝わりやすいと思うのでとてもいい交通網だったように感じます。
そしてなんといってもこの作品は聴覚に障害を持っている主人公を描いているので、ほぼ手話や筆談を使って会話を行っているので二倍になって自分に圧し掛かってくるような言葉の重みを感じました。それは良い意味でも悪い意味でもなのですが、その言葉がちゃんと伝わってほしいという思いも願いも、ちゃんと聞き取れて話せる人よりも強いような気がしたからです。しかし“愛していると言ってよ”と紘子が晃次に言う場面では、晃次が言葉を話すのが怖くて言えなかったシーンもそれを説明したり手話で伝える余裕も時間もないように迫られていてとても不憫に感じました。二人の関係性には絶対的に手紙やファックスといったものが必要で、その手紙やファックスで二人の気持ちを伝え合っていくことで関係性がうまく作り上げられているように感じました。それを劇中の二人は気づいていないなかったし、すれ違うたびにとてももどかしさを感じられるシーンが多くありました。
豊川悦司さんの手話から伝わる言葉の強さ
豊川悦司さんは本当に神々しくて、そのスタイルや顔が美しかったのはもちろんなのですが、手話で使われる大きな手の魅力はすさまじいものでした。指の先から手のひらまで大きくて逞しい、しかしとても繊細で優しさあふれるその動きはこの作品の最も注目していた点でした。画家の役ということもあり絵を描いているシーンもたくさんあって、ペンや筆を動かす滑らかな動きと力強さは本当にプロの画家に見えて感激しました。そして手話をしているときに感じる手から伝わる言葉には晃次の役柄全て詰め込まれているような気がして、優しさと悲しみ、喪失感と怒り、晃次のあらゆる感情がその指先から伝わってきました。紘子を抱きしめる腕にしても、顔を撫でる手のひらにしても相手を包み込むような内側から出てくる人柄が表現されていて本当に心を鷲掴みにされました。
手の動きと晃次という役柄がいかに言葉と共存して相手に伝えようとしているのか、ということが豊川悦司さんの役作りにも入っていたのではないかなあと思います。この作品はただの恋愛ドラマとしてだけでなく、人が人間社会で生きていくうえで必要な言葉の重きを考えられる作品でした。
周りの人々と作品を盛り上げるテーマ曲も素晴らしい
主人公二人の恋愛模様が中心に進んでいく物語ではありながらも、その周りでうごめく人間関係もとても面白く見ることが出来ました。脇役にもそれぞれの人生があっていろいろな感情の葛藤を観ることが出来て二人のラブストーリーと言いながらも多くの登場人物の人間物語を描いている群像劇のように感じました。
晃次に想いを寄せていた異母兄弟の栞は紘子に嫌味を言ったりしていましたが、まだ高校生で晃次のために一番に手話を覚えて晃次の心に寄り添おうとしたり、まだまだ子供の心でたくさんの感情を抱えていたと思うと栞が晃次に『ごめんね。』と何度も謝るシーンは本当に胸が痛みました。
紘子の幼馴染もずっと紘子のそばで見守り想い続けやっとというときにしっかりと紘子の背中を押してあげるそんな姿は痛々しくも、その後ちゃんと幸せになっていてほしいという願いが沸いてきました。
登場人物皆がとても愛おしくてそれぞれ幸せになってほしいという願いが生まれてくる人ばかりでした。
最後の終わり方もとてもその後が気になる終わり方でいろいろな未来を想像できるのもまた幸せだと思います。続編が観たいという願いも消えません。あの後二人はまた付き合ったのかな?結婚したのかな?子供は生まれているのかな?いろいろな想像が出来る終わり方過ぎてうずうずしてしまいます。
そしてドリカムの「LOVE LOVE LOVE」があの絶妙なタイミングで流れる終わり方も心をキュッと締め付けてくれてとても大好きです。今聞いてもドラマのワンシーンを思い出させてくれるくらいこのドラマになくてはならないスパイスになっていると思います。
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