海賊、南北分断、チェルノブイリ、巨大台風と全てを内包し、孤独な復讐者VS韓国特殊部隊の戦いを描いた 「タイフーン」 - タイフーン TYPHOONの感想

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海賊、南北分断、チェルノブイリ、巨大台風と全てを内包し、孤独な復讐者VS韓国特殊部隊の戦いを描いた 「タイフーン」

3.53.5
映像
3.5
脚本
3.5
キャスト
4.0
音楽
3.0
演出
3.5

韓国映画界の人気俳優チャン・ドンゴンが、南北朝鮮への復讐に燃える海賊の首領に扮した超弩級のアクション巨編が、この「タイフーン」だ。

「友へ/チング」以降、「チャンピオン」「トンケの蒼い空」と、どちらかというとスケールの小さい映画を撮ってきたクァク・キョンテク監督だが、この作品ではタイ、韓国、ロシアと舞台は国際的で、しかも陸・海・空で展開するアクションに挑んでいる。

予告編を観た時の印象では、爆弾を積んだ貨物船の中で、ざんばら髪を振り乱したチャン・ドンゴンが、水浸しになりながらアクションに挑み、男泣き必至の海洋冒険映画のように感じたが、それはクライマックスまでおあずけで、そこへ辿り着くまでは、タイ、韓国、ロシアを股にかける神出鬼没の海賊を追いかける、韓国情報部員イ・ジョンジェの活躍を描いたスパイ活劇になっているのだ。

実際に観てみて、正直、ここまで国際的なスケールのアクション大作映画になっているとは思わなかった。

お話はというと、ボートピープルに化けた海賊が貨物船を襲撃する。乗組員を皆殺しにして、米国の極秘機密を盗み出す。この情報をキャッチした韓国国家情報院(NIS)は、親子2代にわたるエリート軍人の海軍将校カン・セジョン(イ・ジョンジェ)を引き抜き、海賊の首領シン(チャン・ドンゴン)逮捕の任に当たらせる。

タイと韓国で2度もシンを追いつめながら、取り逃がしたセジョンは、シンの生き別れの姉がいるロシアへと飛ぶのであった。売春宿にいたシンの姉ミョンジュ(イ・ミヨン)を買い取ったセジョンは、別荘で彼女を看護しながらシンの到着を待つのだった。

数十年前、とある脱北者一家が、北へ送り返されそうになり、国境で脱走を図ったが両親を殺され、生き残った幼い姉弟は、数々の辛酸をなめながら、南北朝鮮への復讐を胸に育ったのだった。南北両政府を恨みながら成長したシンは、タイに売られ海賊になった。ロシアで売春婦となり、身体を売ってなんとか生き抜いてきたミョンジュ。冷酷な海賊とはいえシンの生い立ちに心を動かされたセジョンは、姉の奪還に現われたシンに引き金を引くことができなかった-------。

ロシアで機密情報と交換に核廃棄物を手に入れたシンは、貨物船に風船爆弾を搭載して朝鮮半島へと北上する台風の目に突入していくのだった。

いかにもアクションに次ぐアクションのハイテンポな活劇映画のように見せながら、中盤でグッとトーンが変わって、韓国政府に裏切られた"脱北者の悲劇"が、これでもか、これでもかと描かれ、生き別れになった姉弟の再会で、我々観る者の涙腺が絞られるという韓国映画のお家芸へと様変わりするのだ。

だが、いつまでも犯罪者の動機付けが、南北両断の悲劇というのは、ないんじゃないの? という気がしてくる。つまりは、このメンタルな過剰さが気になる、ならないで、この作品の観かたが大きく変わってくるような気がします。

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