やっぱり面白い
一心同体
ラムちゃんと言えば、もうこの人以外の声は想像出来ません。そうです。平野文さんです。もともと平野さんの職業はラジオDJだったそうです。甘い声と、時々セクシーボイスになる所がラムちゃんのイメージにピッタリでした。『うる星やつら』が初めてテレビアニメとして放送された1981年からずっと変わらない平野さんの声を聞いていると、もう既にラムちゃんとは一心同体な気がします。もちろん、平野さんだけではなく、あたる役の古川登志夫さんも凄いです。諸星あたるというのはちょっと間違うと、かなり最低な男です。だって、ラムちゃんの目の前でも構わず色んな女性にモーションを掛けるのですから。それなのに、あたるが最低なだけでは終わらないのは古川さんの声があっての事だと思います。そういえば、古川さんと、面倒終太郎役の神谷明さんは『北斗の拳』でも共演されていましたね(神谷さんがケンシロウで、古川さんがシンでした)。でも、全く別作品を意識させない所が凄いなと思いました。そして、今作のヒロイン(?)となる竜之介役の田中真弓さんもまた、難しい役をしているな。と、思います。見た目は少年なのに女の子という竜之介を違和感なく演じられるのは、ほとんど少年役が多い真弓さんならではでしょう。
普通の人がいない作品
ストーリー的には、テレビアニメと変わらないドタバタ劇です。ある日、あたるとラム、面倒にしのぶが藤波親子から無人島に招待される所から始まります。「浜茶屋」と書かれたその店にもちろん客は誰も来ません。そりゃあそうです。だって、無人島なんだから。おそらく存在すりゃあ知られていないでしょう。更に驚くのは300円で買った島だと。ラムちゃん達と同様に何かあると思いますよね?それで案の定幽霊が現れた時には、「やっぱりっ」と叫んでしまいました。そして、ここからがやっぱり『うる星やつら』です。まさか、幽霊の親子の死因が氷ウニ金時の食べ過ぎなんて。なぜ?なぜカキ氷にウニ?なぜ力尽きるまで食べ続けたのっ?とツッコミ満載の内容です。更にこの幽霊の父親は竜之介の親父の親友というこれまた類は友を呼ぶ系です。そして、娘の渚は竜之介のフィアンセという展開。あまりの展開の早さに、正直もう氷ウニ金時の事はすっかりどうでも良くなっていました。外見の可愛さとは違いかなり手強い渚に手こずる竜之介は、自分のさらしを巻いた胸を見せます。そうすれば渚が諦めてくれると思って。所が渚は「ステキ」と頬を赤らめます。ん?ステキ?と思っていると渚がいきなり服を捲ります。ペッタンコの胸にギョッとしました。そうです、渚は女の子ではなく男の子だったのですっ。それじゃあ、問題ないのかな?一応、戸籍的には結婚出来ますものね。どうりで、あたるも面倒も渚に手を出そうとはしませんでした。本能で男だと見抜いてたんですね。それにしても、何ていう似た物同士の父親なんでしょう。まさか、本当に勘違いしているわけではないでしょう。しかし、そもそも幽霊です。キスをする事なんて無理なのですっ。ですが、ここもやっぱり『うる星やつら』です。何でもアリの世界です。産卵の為に陸から上がってくる大きなウニの涙に触れて渚は人間に戻ります。これでやっとキスが出来ると喜ぶ渚ですが、とうとう朝が来ます。渚の父親はやっぱり幽霊なので消えてしまうのですが、渚はもう人間になってしまったので消える事も出来ません。果たして、竜之介と渚は普通のカップルのようになれるのでしょうか。そして、どうしてこの作品には普通の人は出てこないのでしょうか?一見、この中では普通に見えるしのぶですが、やっぱり彼女もただの普通の女の子ではない気がします(笑)。でも、そんな普通じゃない人達が集まっているからこの作品は面白いんですよね。どんなにテンションが下がっている時にも、『うる星やつら』を見ると笑ってしまいます。笑いたい時には、やっぱり『うる星やつら』が一番です。
そもそも何者?
そもそも、竜之介の父親は何者なのでしょう?『巨人の星』の星一徹を思い出させるやたらと太い眉と、いつもいつもステテコに腹巻姿という出で立ち。あたる達の高校にある購買部に住み込み、貧乏なのでやたらと金にはがめつい。一人娘である竜之介を男として育てて来たという、まさに色々な事が謎です。大体、藤波という苗字は分かりますが、下の名前が出てきた事もありません。でも、おそらく彼にも何か魅力があるのでしょう。そうでなければ、竜之介の母親である真砂子さんも結婚しなかったでしょう。彼女がなぜ親父と竜之介の前から消えたのかは分かりませんが、親父はきっと妻の帰りを待っているのだと思います。竜之介にとってはきっとあまり良い父親ではなかったのでしょうが、何だか憎めない親父です。もし彼が出ていなかったら寂しいと思ってしまうから不思議です。もちろん、こんな父親がいたら困りますが、この何に対しても貪欲に生きるタフさは見習いたいなと、思いました。
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