この短さで感動の具合がハンパない
あゆみの性格素敵
あゆみは見た目がめっちゃかわいいだけじゃない。人に感謝を忘れない本当にいい子。一生懸命で、健気で、かわいい。そんなあゆみの彼氏、しろちゃん(公史郎)。あゆみは彼を本当に好きだったし、大切にしていた。誰もがうらやむ最高の組み合わせ…
そんな幸せをぶち壊したのが海根然子。チビでデブで、ニキビのある顔に伸ばしまくった長い髪。人から嫌われ、自分が醜いことを誰かのせいにして、自分のせいじゃないって唱えて。本当に性格がドブスな人間だった。彼女は「赤月の日」に自殺すると、それを見つめていた人間と入れ替わることができる…というまさかのオカルトな方法によってあゆみと中身を入れ替えることに成功。美しい容姿も、友達も、彼氏も、優しい家族も。すべてを手に入れたのだった。
入れ替わってしまったあとのあゆみがまた性格が良すぎて…逆に読んでいるこっちの心の卑屈さを突かれているようだった。
人間の細胞は毎日どんどん死んで生まれて200日で新しいものに入れ替わる
自分が自分でなくなってしまうのか
そういうふうに悩んだり、それでもやっぱり、海根さんを思いやるあゆみ。なんとか理解してもらいたくて、一生懸命訴えて、理解されなくてもされないなりに自分でどうするべきかを考えて行動ができる…最強の女子だった。家族にも、火賀くんにも、友達にも、感謝を忘れない。姿が変わっても、心が行動をつくるし、それによって見た目も変わってくる。これは間違いない事なんだなーって思った。
火賀くんの優しさ
泣いてる彼をみて、マジ泣きした。ボロボロ泣いて、あゆみに「もう戻らなくていい」って言う彼が本当に愛しくて、好きすぎた。「周りにいたやつ全員分愛してやる」なんて言えないじゃん。見てくれが変わってても、中身があゆみなら…あゆみの優しい笑顔に惚れたくせに、火賀はそれをつくったあゆみの心を守ろうとする。そうだよね、中身があゆみなら、おそらく海根さんの体だって変わる気がするもの。
どんななりしててもわかるわ あゆみはあゆみだからな
っかぁーなんていい奴。むしろ、あゆみが入れ替わったことで、気持ちを伝えられたことは火賀にとってはチャンスとも言えるんだよ。なのに、辛いときに自分の気持ちを押し付けてごめん、とか言える?最強すぎかよこの男…!
そして、彼は最後まで自分を脇役に起き、しろちゃんとあゆみが付き合えるように背中を押した…。公史郎があゆみを好きだってこと、あの暗闇から救い出せと言った時点で分かるよね。中身が海根さんでも俺はあゆみの顔が好きだから…とか無理して言ってただけだった、わかるよね。わかるから、俺には出る幕がないって引いちゃう火賀…あー海根さんと付き合ってほしいとは思わないけれど、しろちゃんやめて火賀でもいいじゃん!って叫んだよ。わずか3巻なのに、叫んだ。作中で、しろちゃんは火賀に憧れている、と言っていた。いつも人が周りに集まってきて、自分なんかよりもイケメンで、そしてあゆみを好き…本当は、あゆみを奪いたいと思って焦ったのかもしれない。でも、そうじゃないかもしれない。このもどかしさが胸をぎゅーぎゅーさせるほどたまらない余韻を残した。
しろちゃん…
公史郎は、本当にやり方が自己犠牲タイプだよね。自分が嫌われ役になってもいいから、海根然子をどうにかして、方法を考え抜いて、あゆみを救おうとしていたなんて…3巻入るまで全然気づかなかったよ。どっからどう見ても悪役だった。あゆみの顔が好きだからこのまま付き合うよ…のときの表情なんてもうキモいくらいにうますぎだよ!少しの迷いは、火賀へのコンプレックスのせいだと思っていたんだけどね。何でも持っている火賀に、あゆみもいつか取られてしまうのかもしれないって、心のどこかでずっと考えていたのかもしれない。
火賀の気持ちも知っていたし、どうにも応援できなくて、本当にごめん!
俺がキミに恋愛感情を持つことは絶対にない
って海根然子に言ってのけるしろちゃん。本当は最初から気づいていたのに、それを言わない彼もまた、優しき人間だということ。火賀とは違うタイプの、優しいイケメンなのであった。
そして、最後の泣き顔は…もはや反則レベル。辛かったね。がんばったね。死んで入れ替わるしかなくて、どうにかしてあゆみを戻してあげたくて、でも計画の全容を誰かに話してしまったら終わってしまうから…彼の気持ちを考えたら、火賀とどっちがよかったか、なんて決められないと思ってしまった。だから最後にあゆみと戻れたときは、うん、お疲れ様って素直に思えた。もう何なの、イケメンの涙が出る漫画って本当に反則。心に沁みてしまう。「関根くんの恋」並みにしんみりしてしまったよ。
母だから気づく
海根然子とあゆみが入れ替わっている。それを母親の前で告げたとき、母はわりにすんなりと受け入れた。心のどこかで、然子ではないと気づいていた?でも、それを表現することからも逃げていた母親に対しては、やはりムカつくよね。然子だって、愛されたかった。だけど、愛してもらえなかったことは事実。母親が逃げていたことも事実。ここからようやく家族が始まるんだと思うよ。
海根然子が入った状態のあゆみを見て、それが然子だと気づいた母。そこはさすがに、自分の娘はわかるってことなんだろうね。然子が抱いていた憎しみの気持ちは相当なものだったし、お互いに一度どこかで壊れなくてはならなかったと思う。母親が詫びてもそれは戻ってこないけれど、平行線でいたままではどっちも幸せにはなれない。どこかでそれを断ち切るには、歩み寄って許しあわなくてはならない。それができるかどうか、家族だからこそ難しいところでもあり、でも家族だから、可能になれば必ず修復できるものなんだと思う。家族として生きていくって、簡単なようで簡単じゃない。でも力になるのは家族なんだって思う。
サイドストーリーで、インコとあの宇金がシャッフル関係にあったという事実が判明するんだけど、若いから苦しいだろうって言う。でも、若いから、バイタリティや復活へのエネルギー投資もすごいんだよ。シャッフルした人間が、こんなにいい子たちで、インコも感銘を受けただろう。海根然子のように、もう心が改まる可能性の低かった宇金は、悲しいことにインコとして一生を終えていくんだろうね。
最後はただ泣くしかない
しろちゃん、あゆみ、火賀くんはみんないい子で、海根さんだけが卑屈のかたまりだった。それすらも溶かして、シャッフルを拒否しようとする彼女を説得してみせた3人。そして元通りの生活に戻った後、海根然子のみせた表情は実に明るく、温かいもので…素敵だったよ。
4人は何よりも強い絆でつながった友達になれた。ただ、火賀くんと海根然子が付き合うことはない…と思いたい。そこは違うでしょう、と言いたい。あゆみだったから、火賀は恋して、強くなれた。まだその傷が癒えるには早すぎる。もう少しこのままで、どうか幸せで。いつかみんなが幸せになれる相手を見つけてくれるようにと祈るばかり。温かいラストを迎えさせてくれた。
散々広告に登場し、どう見たってドロドロになるだろうなと予想していたこの物語。でも実際蓋を開けてみたらすごく爽やかで、あゆみの心が清すぎて、すっかり浄化されてしまう物語だった。3巻という短さでいったい何を伝えてくれるんだろうって思っていたけれど、この爽快感と幸福感は、本当に久々。いい漫画だと思う。
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