現代の風刺画のような作品
流行の取り入れ
私は山田悠介の作品を何作か読んだことがあるが、一番好きな作品がこのアバターである。タイトルにもある通り、この作品にはアバターを着せ替えるというケータイゲームが登場する。ここに時代の流行が関わってくるだろう。昔はテレビにつないでゲームをプレイするのが主流だったが現在ではケータイひとつあればどこでもゲームができるようになっている。これはゲームへの依存を意味する。自分がケータイゲームなんかにハマるわけがないと思っている人ほど、ゲームの沼に落ちてしまうのだ。この作品の主人公がまさにその最たる例である。初めは何の興味もなかった主人公が、あっという間にゲームの罠に飲み込まれていく。
ジェットコースターのような場面展開
この作品の1番の魅力は、やはり主人公がどんどん落ちていく様である。初めは父親の遺品を売り、犯罪に手を染め、そしてアバターのようになりたいと整形までしてしまう…。現実ではありえないことかもしれないが、読んでいて全く違和感を覚えない人がほとんどであろう。この主人公に、作者は危機感を覚えて欲しいという思いを込めたのかもしれない。
ミイラ取りがミイラになる
作品を一言で示すとなると、「ミイラ取りがミイラになる」であろう。いじめられる側であった主人公が、殺人までしてしまったのだ。ここでタチが悪いと思ったのは、主人公自らではなく従えている生徒に手を下させたということである。もし死体が見つかっても、この人がやりましたといえば主人公は無害であろう。もしかすると初めからそれが狙いだったのかもしれない。
個人的に許せないと思ったのが、整形のシーンである。美しくなったでしょうと喜ぶ主人公に母親は泣きながら頬を叩くシーンがある。ここで私は、主人公はとんでもないことをしてしまったと改めて思った。どのような思いで女手一つで主人公を育ててきたのか、母親目線に立つと何ともいえない気持ちになる。
山田悠介の作品の1番の見どころは、やはりどんでん返しがある点だろう。もちろんこの作品にも存在する。ラストは主人公を一番慕っていた人に裏切られる、というものだった。ここでも初めにあげた「流行」という言葉が思い浮かぶ。主人公がハマり、人生を捧げたと言っても過言ではないゲームは廃れ、新しいアバターのゲームがリリースされてしまったのだ。この作品で山田悠介が一番言いたいこと、それは簡潔にゲームにハマりすぎないようにということだろう。そしてこのような世の中に危険性を持って欲しいということだと私は思う。
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