世界観は面白いのに終わりが切なすぎる - カガミガミの感想

絵がうまくてもダメなんだ

とにかく、登場するキャラクターたちがかわいい。アニメにしたら相当モテそうな感じで、内容的にも王道の少年漫画。評価は低い作品だが、きれいなイラスト好きな者としてはクオリティの高さを感じられた。恭介のあの出来上がった絵がイケメンで、あの顔で甘い言葉を吐かれたら、間違いなく少女漫画の中でも射貫かれてしまうこと間違いなしである。恭介のあの自信たっぷりな感じ、物怖じしない、恐れを知らない笑顔の裏に、いったいどれほどの苦労と悲しみがあったのか…って私はそこまで勘ぐって読んでいた。それなのに、途中で打ち切りになるんだもん、なんなんだよって。

もちろん、主人公が最初から最強キャラっていうのはよくある話で、どこかでまた別の側面での成長が起こるのがセオリーだろう。しかしこの漫画では、敢えてなのかどうしようもなくなのかわからないが、白天丸と恭介の憑依に頼ることなく強くなる修行の描写が…

ない。

なんで、そこ描かないの？こっそり修行してオッケーで、しかもその短さで完了するってどういうこと？ここらですでに終わりを予感させるよね。あー急いでいるんだなと。白天丸が憑依した状態はすごく好きだし、正確がハク寄りになってより自信にあふれるのとか、好みではある。でもそれ以外の式神は憑依するわけじゃなくて使役しているタイプで、せっかく憑依させて自分自身が動くことで敵を倒していくタイプなのに、それ以外がないから…チーンって感じ。ザンキマルのようなギャグの式神よりは、羅正丸のように寡黙だけれど心温まる系のキャラをどんどん使役してほしかったな。

学校で出会った女の子のことも、もしかしたらかなり掘り下げることができたんじゃないだろうかと思っている。ラブが欲しかったわけではないけれど、長い物語になれば、彼女にももっと見せ場があったかもしれない。マコだけがヒロインでは、少し物足りない。

マコの存在意義が足りない

マコの中に確かにあったはずの不思議な能力。それが再び開花する時、新たな物語が始まる…予感がした。式神を操る恭介と協力し、マコが探偵としてのし上がりつつ、強大な敵と対峙して戦っていくスタイルでもよかっただろう。しかし、序盤から式神使いとその本部、根幹を揺るがすような凶悪なホローラビットの登場が起こり、平和なマコの探偵業に関してはまったく音沙汰なし。もはやマコが必要だったかさえも危うい状況となった。

マコの不思議な光を目視できる能力。それによって開かれるものがもう少しあればね。応援もできたのだが、彼女はとにかくズボラで、ヒロインとしては理想の真逆をいくタイプだった。これでは、中高生など若い男の子たちの夢を壊すことになってしまい、残念だよね。年上女だからこその魅力は、別のところにあると思うのに。「ゲットバッカーズ奪還屋」に出てくるヘヴンのようなナイスバディまでいかなくても、恭介があまりにもまともである分、違った方向にとがったキャラでいてほしかった。

恭介を探偵事務所に住まわせる代わりに、家事、学校、式神の仕事などなど…すべてを頼り切ったマコの魅力が本当にない。恭介は、幼いころの修業がおかしすぎて、このくらいは屁でもないのかもしれないが、マコがバニーになろうが全然萌えない。

一番は、マコの特殊な能力に関して、それが始まった背景や、なぜマコだったのか、恭介と引き合わされたことにどんな関係があったのかなど、放置されたフラグが多すぎる。そして、幼いころに探偵を志すに至った子どもに関して、恭介なのかもしれないと思わせつつも明らかにはしないこの残念さ。じゃーその話、いらないじゃん！と怒りたくなるのであった。

皇の名前は最高にカッコいいと思う

恭介が絶対的な信頼を寄せる親友、カイト。彼のエピソードが薄いのが一番の問題だったと思う。ライバルでずっと競い合ってきた中にも、嫉妬や、憎悪、悔しさのにじむ何かがあって、それを乗り越えて輝くのが男の親友ってもんだろう…？100歩譲って、カイトが恭介を守ってやると決めたとして、それならもっとエピソード入れてよ！って思ってしまう。カイトが感じてきた葛藤、劣等感、それでもそばにいてくれる恭介への憧れと尊敬…いろいろな感情が混ざり合った彼を、落としに来ない悪魔はいないだろう？皇（すめらぎ）っていう名前がカッコ良すぎて、そればっかりが頭に残っている。

そして、皇家の確執と陰謀説が盛り上がらなかった。王家の中にこそ闇はある…と思っていたのに、そうはならないこのつまらなさ。困るわー。どうでもいいけど、カイトと姫吊さん、皇家で一緒じゃないの？むしろどっちがどっちなの？

カイトのエピソードが薄いと言いつつ、肝心の敵のエピソードも薄い。ホローラビットがいきなり巻き起こんできて、雑魚敵をほとんど出さずに進んでしまったことが問題だろう。もっと雑魚敵とのじゃれあいを楽しみ、マコとの関係性も深めて、裏にちらつく強大な悪を見つけ出すって流れにしておけば、長く続く物語になったと思うんだけど、どうだろう。そして、ホローラビットがいつまでも最大の敵なら、最初に登場したときに恭介が微妙に勝利しちゃったら、おいそのあとどうするんだ…？って読者が心配になるのも無理はない。

まだまだ眠る謎の数々

マコの関してのエピソードはもちろんのこと、カイトとのもう少しつっこんだ修行や成り行きについて、そしてホローラビットっていったい何だったの？っていう部分、恭介がどうしてそんなに強い状態なのかという部分、白天丸自体の存在に関する深い背景などなど…語ってほしいものがいっぱいあった。式神協会に関してもそう。白天丸が恭介をどうやって選んだのかもすごく気になるし、恭介を一番大切に想っている羅正丸のことも、もっと教えてほしいんだよ。

また、せっかく恭介を学校に通わせることにしたのだから、学校での怪事件を解決する話はもう少し長く続くべきだろう？そこから芋づる式にわかってくることだってあるはず。そして仲間だってもっと増えるはず。始まった時点である程度は終着点が決まっていたから、トントン進めちゃったんだろうなーって思う。マコの能力のおかげでホローラビットの悪の右腕的な人を倒すのも、あっさりだった。っていうか、見つけるのが高速だった。

多くの謎を残しつつ、その絵の綺麗さと、バトルシーンのさっぱり感が個人的には好き。変に飾った感じがなくて、見やすいバトルで、余計な能力が少ないからね。式神協会に所属する人の強さがまったくわからなかったことだけが、心残り。彼らは恭介より強いんじゃないの…？何なの…？って思って、式神協会メンツが登場して萎えてしまった部分も大きい。修行と言いつつ大会で、しかもその間に襲撃されて…あほか。

主人公いなくなるのが寂しすぎて

冒頭の話はそのままラストに引き継がれ、悲しい結末となった。しかし周囲の人は割と元気に生きていて、あっけらかんとしていた恭介が切なすぎて…もやもやしっぱなしであった。何しろマコたちがあまりに普通で、探偵で…恭介がいなきゃはじまらないってのに、なんで！打ち切りのまま、主人公にも逃げられた気持ちでいっぱいだ。

世界観だ好きだっただけに、早々に５巻とかで終わってとにかく悲しい。修行中にそのまま終わりを迎えようとは、雑すぎる…。続きが出ることもないだろうし、お蔵入りってやつなのかな。「PSYREN」もそうだけど、なんかどっかがもったいないんだよね。ブリーチや僕のヒーローアカデミアには勝てない感じ。敵の出方と、ギャグが足りなかったのかもしれない。