まだまだ出てくる始祖たちとのバトルに注目 - 終わりのセラフの感想

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終わりのセラフ

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画力
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ストーリー
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キャラクター
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設定
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演出
4.67
感想数
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まだまだ出てくる始祖たちとのバトルに注目

5.05.0
画力
5.0
ストーリー
5.0
キャラクター
4.5
設定
5.0
演出
4.5

目次

単純じゃない設定が面白い

出てくる相手はヴァンパイア。相容れない存在なんだと思ってた。でもどうやらそうではなく、人間とヴァンパイアははっきり言ってそっくりだ。長く生き続けられるかどうかの違いくらいしかない。ヴァンパイアの中でも、人間の中でも、欲望が渦巻いて、それぞれが信じる道へと必死で走っている。希望は優一郎とミカエラがどんな存在よりも固く信頼しあっていること。彼らなら、何かをやってくれる気がする。

読めば読むほど、それぞれの思惑・苦しみが交差して、みんなが救われる道がないと気づかされる。優一郎とミカエラは、単純に百夜孤児院で悲劇に遭っただけではなく、「終わりのセラフ」の被験体であったことも明らかになり、優一郎にはさらに悪魔の力をもとから宿していたこともわかったり…複雑さを極める。

15巻までは発売されているが、まだまだ全部は明らかではない。悲劇はグレンによって引き起こされたように描かれているが、それもまたいつひっくり返されるかわからないだろう。何となく選ばれたと思っていたメンバーも実は「終わりのセラフ」の被験体であったし、優秀であることは確実。日本政府も吸血鬼たちも、謀反ばっかり。ついには人間側と吸血鬼側に別れたはずの優一郎とミカエラは協力することになり、今は人間側からも吸血鬼側からも距離のあるポジション。シノア隊とグレン隊が協力していることが唯一の光だけれど、これまたどこかでミカエラや優一郎が利用されることになるんじゃないだろうかとひやひやしている。注射で一時的なセラフのちからを発動させることもできるようになっているが、今後さらに苦しみが待っているのではないだろうかと悩ましい。いつ信頼する仲間からスパイが出てもおかしくないと思う。すでにグレンは大罪人だけれどね…。

揺るがずにいてほしい2人

優一郎とミカエラに関しては、もう絶対がんばってもらいたい。その強さはカッコいいし、信頼関係が絶対的で嬉しいし、一瞬恋のような気もしてときめかせてくれる。

ミカエラは吸血鬼によって蘇生されて人間から吸血鬼になってしまったが、人格が奪われたわけではなく、彼は彼なりに優一郎と会うために努力を重ね、成長を遂げていた。離れ離れになりたくない。そう思いながら優一郎を支える彼は健気でね…かわいいのだ。いつも冷静に、優一郎と2人で生きていけるように行動している。優一郎が大罪人とされているグレンと親しいのも納得がいかないし、おもしろくない。でも優一郎が笑顔で言うから何も言えなくなってしまうという…かわいい人だ。

俺がやばくなったらお前が俺を止めてくれよ

呆れてしまって何も言えないミカエラがもうかわいくてかわいくて。おもしろかった。

一方の優一郎は本当に優しい奴で、人を信じようとする人間。疑うことよりも人を信じようとするし、アシュラとも分かり合おうとする。鬼の力を発動させれば飲み込まれてしまうことも今後多くなるのかもしれないが、できればよい関係のままにいってほしいものだ。優一郎がグレンを信用しきっているし、グレンは優一郎を利用するつもりでいる。もちろん、悪いとも思っている様子だが…グレンは8年前人類が10分の1にまで激減した惨劇を引き起こした人物であるし、最後でひっくり返される可能性もありそう。まだまだ予断を許さない。優一郎の代わりにミカエラが…ってこともありそうで、怖すぎる。

アシュラとクルルに関しても気になるところだし、早く謎が明かされて欲しい!と願うばかりだ。

命の蘇生という禁忌を犯すこと

グレンが8年前に、大切な仲間を生き返らせようとしたことで人類のほとんどは滅んだ。13歳以上の大人すべてだ。その謎のウイルスに関しては、まだすべてが明らかになっていないが、命を蘇らせる代償に求められたものがとても大きすぎた。もはや人間が悪いか、吸血鬼が悪いのか、それはもう決めることはできないだろう。でもどちらかと言えば、人間が鬼や吸血鬼を恐れているのよりもずっとずっと強く、鬼や吸血鬼は人間を恐れているのである。矛盾したまま、仮面の下で憎しみと欲望が渦巻き、愛を語るのだ。4巻くらいでフェリドが言っていたが、

彼らは強かで欲深くて卑怯だから……

それがすごくよくわかるし、自分もそうなんだと思うと悲しいような、悔しいような気持ちになるね。

フェリドとクルルを奪還したら、あとはもう最終局面になりそう。さすがにこれ以上の謎が入ってきたらめんどくさすぎる。ここまでは伏線を少しずつ回収しながら進んできているけれど、どのタイミングで優一郎の謎、ミカエラ因子の謎を解き明かしてくれるのかが気になるね。「終わりのセラフ」についてはだいたいオッケーだけど、問題は鬼と吸血鬼側に関するもの。人間の呪いによってできた仕組みであることはわかるが、吸血鬼という存在そのものが果たしてどのタイミングで生まれたものなのか、むしろどこから人間と分かつことになったのか。そのあたりが明らかになってくれると嬉しい。

物語が進んでいっても、ミカエラと優一郎さえどうにか生きててくれたらそれで嬉しいんだがね。

グレンの苦しみ

鬼に人格を乗っ取られたり、戻ったりしながら二重人格状態で生きているグレン。そうまでして強くならなければ、彼は過去の罪を消すことはできないと考えた。そして“預言”に従い、優一郎を得て、仲間だと言い、利用するのである。しかし優一郎はそれを当然のことのように受けいれる。もう誰かを見捨てたり、裏切ったりすることはしたくない。そんな優一郎だからこそ、たくさんの仲間がいるのであり、生きてほしいと思う。

「終わりのセラフ」に人類の希望を見る人間どもばかりだが、死んでしまった者を生き返らせることなんてきっとできないと思う。もともと、8年前だってグレンがたった数人の仲間を生き返らせるために起こしたものによって、何十億もの人間が死ぬことになった。逆に何十億もの人間を蘇らせるために、今度はいったいどんな代償を支払わされるのか…?このままだと、優一郎とミカエラが犠牲になる気がしてならない。もうそれだけは絶対に絶対に嫌。どうしようもなくなったら、グレンと真昼でどうにかするしか…いや、それも嫌だけど、死んでしまった人を生き返らせるためではなく、吸血鬼・鬼たちと人間が分かり合えずとも生きていける道へたどり着いてほしい。そうでなければ、この物語はいつまで経ってもバッドエンドしか想像がつかない…。

グレンって、すげー強いわけじゃないんだよね。いつもぎりぎりの闘いを生き抜いてきた。それこそ辛そうに…自分が罪から救われることを考えている彼ができることっていったい何だろう。開き直って前を向き、取り返そうとしているたくさんの命。人間は人体蘇生を希望だと言う。吸血鬼は絶望だと言う。もしかしたら、今度失うのは吸血鬼のほうなのかもしれない…。

メインキャラクターたちの絡みも楽しみつつ

とにかく「終わりのセラフ」の絵は素敵。カッコいいし、鬼の憑依の描写なんか特におしゃれだなと思う。鬼もなんかだんだんかわいくなってくし、もはや愛着しか湧かないわ。

優一郎とミカエラが失った仲間を、また失わせるような結末になるなら読むのやめたくなる気がする…常に、揺るがないものが欲しい。

人が常に繰り返してきた過ちを、取り返すことはきっとできない。それならどこかで、なかったことにしたい。リセットしたい。また一から始めたい。ただそれもまた欲望なんだろうね…何かを抱えたまま、生きていかなきゃいけないんだと思う。どこまで彼らは背負わなくてはならないだろうか。

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他のレビュアーの感想・評価

謎が深まるばかりのストーリー展開にワクワク

小説っぽいなーと思ったらやっぱり最初の入りは、なるほどヴァンパイア系ね、血を吸う・吸われるの関係からどう脱却していくかって言う話ね、と安易に考えていました。読めば読むほど深まる謎。優一郎の過去が百夜孤児院の子どもたちの悲劇だけでなく、まさか「終わりのセラフ」の被験体として実験させられていたという悲劇、そして小さなころから悪魔の力を宿していたということなどなど…出るわ出るわ新しい要素…!読み進めるほどに味が出て、謎を解きたくなっていくストーリー展開です。小説っぽいなーと思ったら、やっぱり小説版あるんだね。ストーリーや謎解きの面でも、小説版と漫画版をリンクさせて読み進めたほうが深まるらしい。それでもとりあえずは漫画版で終わりのセラフ実験の顛末をしっかりと見るのが先かなと思いますね。何となく集められた闘うためのチームメンバーたちも、実は「終わりのセラフ」の被験体の集まりだったので、これまた優...この感想を読む

5.05.0
  • betrayerbetrayer
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『終わりのセラフ』それは…

そもそも『終わりのセラフ』とはなんなのか…そこからして、謎が尽きない作品です。明確化されているのは、終わりのセラフが実験だということと、百夜教が実験を行っていたこと、優とミカエラはその被験者であったであろうこと、クルルツェペシもそれを求めていること、などが挙げられると思いますがそこから全容はまだまだうかがい知ることも出来ません。私としては『終わりのセラフ』は兵器で、優とミカエラが揃うことで完成されるもの、そしてそれをグレンがすすめた実験によって歪められた形が作中で表現されている優の人間ではない部分の暴走なのではないかと思います。だから不安定かつ不完全な存在で憎悪を剥き出しにしていると、そう考えています。君月の妹が天使のような形で登場していましたが、ああいったある程度安定した挙動が『終わりのセラフ』のひとつの成功例なのかも知れないと思いますし、そうであればなおのこと今の優の状態は不安定な...この感想を読む

5.05.0
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