自分の命と引き換えに世界から猫を消しますか
斬新なキャラ設定
この小説は主に余命宣告をされた主人公の人間関係を描いたストーリーになっており、出てくる人物はひとりひとりとてもユニークで愛着のわくようなキャラになっています。
何人かのキャラクターの中でも最も強烈な印象を与えるのはやはり、主人公「僕」にそっくりな見た目をもつ悪魔、通称「アロハ」です。見た目は同じでも、真面目な主人公とは全く逆の性格で、一人称は「アタシ」、時々駄々をこねたりなど、とても悪魔とは思えない部分があります。ただ時々悪魔らしい冷酷な一面も見らます。このつかみきれないアロハの性格が、物語の一つの見どころでした。
猫好きはもちろん、そうでない人の心をも掴む飼い猫キャベツの言葉
物語のカギは、やはり「猫」です。
主人公は「キャベツ」という猫を飼っておりずっと大切にしていましたが、ある時悪魔に、自分の命と引き換えにこの世の中から猫を消すという取引を持ち掛けられます。するとキャベツが言葉をしゃべるようになり、「君のいない世界に価値を見出せない」と言って、自分を消すことを提案してきます。
このセリフを読んだとき、涙があふれてきました。ペットを飼っている、飼っていないに関係なく誰しもがこの言葉に感動すると思います。キャベツが「僕」を思う気持ちに心打たれましたし、悩む主人公の決断も見どころです。
「死ぬまでにしたい10のこと」
「僕」のお母さんは、数年前余命宣告をされたのち亡くなった。
お母さんが亡くなった後、「僕」にお母さんが生前書いた手紙が届きます。そこには、「わたしが死ぬまでにしたいことは、すべてあなたのためにしたいことだったのです」とありました。
この言葉を、将来子供に言うことができるような人になりたい。と、そう思いました。
sekai no owariの深瀬慧さんも、このセリフに心打たれたとおっしゃっていました。
「世界から猫が消えたなら」は、家族、友人、恋人、さらにペットに対しても、自分の周りの人への感謝の気持ちと愛情が深まる本です。
分かりやすく、淡々と描かれていることで、よりシンプルにストーリーがはいってきて、じわじわと大切なことが心にしみこんでくるような気持ちになります。なので、老若男女問わず読みやすいと思います。
また、私はこの本を読んでこう思いました。大切な人に手紙を書こう。人はいつ死ぬかわからない。明日かもしれない。だから、伝えることができるうちに、自分にとってあなたはこんなにも大きな存在なんだと伝えよう、と。
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