みんなが愛した殺人者
心優しい葬儀屋と町一番の大富豪で嫌われ者
テキサス州はカーセッジの小さな町には小太りで愛嬌のある顔をしたバーニー・ティーディー(ジャック・ブラック)という葬儀屋がいた。彼は仕事熱心でボランティア精神に溢れ心優しく自分の気に入った物は他の人にもプレゼントするような犠牲愛を持った町で一番愛されている男だった。ある日カーセッジの町で富を築き上げ町一番の大富豪であるマージョリー・ニュージェント(シャーリー・マクレーン)の夫の葬式が行われる。未亡人となり莫大な遺産と仕事を引き継いだマージョリー。バーニーは未亡人となってしまったマージョリーと友達になろうとするが何度も追い返されてしまう。それでも花束をプレゼントし毎日のように訪問するバーニーに次第と心を開いていくマージョリーだった。上手くいってると思われた二人の関係が次第に崩壊していく…。
1996年にテキサス州のカーセッジという田舎町で実際に起こった殺人を元に描かれた同映画。39歳のバーニー・ティーディーが81歳のマージョリー・ニュージェントを殺害した。けれどカーセッジの町の人々は皆、バーニーは無実だと訴えた異例の事件。まさに「みんなが愛した殺人犯」
バーニー・ティーディーは無罪か?有罪か
未亡人で町一番の嫌われ者のマージョリーを悪く言う住民は多い中、バーニーだけがいつも彼女を庇い次第に友人へと発展していく。そして世界中を二人で旅して回り高級ホテルに泊まり芸術鑑賞、二人で沢山のことを楽しみ一見仲が良いように見えてマージョリーはとても心の狭い老婆だった。町の誰からも愛され市民活動に積極的なバーニーを次第とマージョリーは縛り付けるようになる。彼が自分だけのものでなければ落ち着かないマージョリーと他の人たちにも公平に接したいバーニー。そんな異常なほどの束縛に耐え切れなくなってしまったバーニーはある日、彼女の家のガレージにあったスカンクを撃つ為の猟銃で彼女を背後から撃ってしまう。そしてその遺体を同じくガレージにあった冷蔵庫の中に隠した。そしてバーニーのことをよく思わない地方検事のダニー(マシュー・マコノヒー)によって遺体が発見されバーニーは逮捕。マージョリーを殺害してから九か月後のことだった。それを知った町の住民達はみんなマージョリーに同情の声はなくバーニーを庇護するものばかり。
ここまで聞けばバーニーはとてもいい人で無罪になるだろうと思える。けれどバーニーはマージョリーのお金で投資を始めたり世界中を旅して回った旅費は全てマージョリーのお金、果てはマージョリーの遺産まで受取人はバーニーになっていた。バーニーは確かに誰もが認める良い人。けれどマージョリーの莫大な資産を使っていたと知ると少し疑ってしまうところがある。彼はいい人故町の人からは誰からも彼は有罪だという声は上がらない、けれど殺人を犯したことは事実。彼もそれを認めて罪を償うつもりではいるようだけれど町のみんなが味方してくれているという自信がもしかしたらあったかもしれない。唯一最後まで地方検事のダニーだけが心優しい彼を疑い続け結局最後には有罪にさせたが…結局バーニーは無罪が相応しいものだったのか、それとも故意の殺人で有罪だったのか、彼だけがそれを知っている。
みんなに愛された殺人犯
無罪になるかと思いきやバーニー・ティーディーは結局有罪となり刑務所へと入ることへとなったけれど、彼によくしてもらっていた街の人たちは面会に来ては彼を励ますところが描かれている。そして刑務所内でも彼は囚人たちに料理を教えたりとここでも献身的でとても心優しい男だった、確かに彼は殺人を犯したかもしれないけれど町中の人たちが彼は無罪で悪くない、悪いのはマージョリーだと口を揃えて言うほど彼は愛されていた。バーニー・ティーディーの事件の記事を読んだリンクレイター監督が映画化を思い立ち、企画から10年以上経ってようやく作品が完成したこの映画はノンフィクション故に盛り上がる場面がある訳でもホラーでもないけれど実話だと踏まえた上で見ると面白い。そして私もバーニー・ティーディーという心優しい男に惹かれてしまった。彼には確かにどんな人でも惹き付けてしまう魅力があったのだろう、実在する人を演じたジャック・ブラックの演技も素晴らしく彼の他の作品も観てみたいと思った。映画の最後にジャック・ブラックとバーニーが話しているシーンがあるけれどバーニーは本当に殺人を犯すような男に私は見えなかった。町一番の愛され者と町一番の嫌われ者のカップル。バーニーが殺人を犯したあの日二人に何があったのか本当の所は誰にも分らない。けれどバーニーは確かに愛されていた、無罪か有罪か陪審員として選ばれ聞かれたなら私は無罪だと答えるかもしれないと思わずにはいられないほど、バーニー・ティーディーという男は悪人には見えない、寧ろ素敵な男性だと思えた。それが彼の本当の顔なら。
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