知的に美しく見事な深みと品格を持ち、透徹のまなざしを静かに熱く注ぐ女性賛歌 「ジュリア」 - ジュリアの感想

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知的に美しく見事な深みと品格を持ち、透徹のまなざしを静かに熱く注ぐ女性賛歌 「ジュリア」

4.04.0
映像
4.0
脚本
4.0
キャスト
4.5
音楽
4.0
演出
4.0

この名匠フレッド・ジンネマン監督の「ジュリア」は、知的に美しく、見事な深みと品格を持った女性映画の秀作だと思います。

アメリカを代表する女流劇作家リリアン・ヘルマンは、"女流"という特別扱いを拒否し、また、かつてマッカーシー上院議員による"赤狩り"の嵐が吹き荒れた時代における、勇気ある行動でも知られる、いわば最高のインテリ女性ですが、この映画は、そんな彼女の自伝的な回想の物語なのです。

一人の優れた魅力的な女性リリアン(ジェーン・フォンダ)の生き方に、人格に、そして精神形成に、少女時代から関わり、大きな影響を与えた女友達ジュリア(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)と、結婚という形をとらずに30余年の生活を共にした、愛人の探偵作家ダシール・ハメット(ジェースン・ロバーズ)の二人。

良き友情と、良き愛情に恵まれたヒロインの、今老いて孤高の、だが寂寥の姿に、人生の重みが切々と迫って、深い感動に心が満たされます。

ユダヤ系名門の大富豪の孫娘に生まれて、優雅と気品と理知と、勇気と感性で、幼い頃からリリアンを心酔させた親友ジュリアは、やがてイギリスを経て、留学地のウィーンから姿を消します。

追われる反ナチ運動の闘士となったジュリアの、その潜伏先のベルリンに、売り出し中の劇作家リリアンが、命懸けで運動資金5万ドルを運ぶことになります。全編のハイライトである、このヨーロッパ大陸横断列車の旅は、息づまるサスペンスの醸成の演出が、あまりにも巧すぎて、逆にこのドラマの構成から浮き上がってしまうように感じられました。

この後、やつれ果てた、無残なジュリアとの再会シーンは、ヴァネッサ・レッドグレーヴの名演技が、凄みさえ帯びて、圧倒されます。

そうしたジュリアとは、リリアンという女性の"幻の鏡"だと思います。つまり、リリアンの"理念と情念"の象徴だと思うのです。

そのリリアンが、ハメットの豊かな愛に包まれて見せる"女らしさ"が、愛おしい。脚本のアルヴィン・サージェントとフレッド・ジンネマン監督が、ジュリアを"心に抱く"リリアンに、透徹のまなざしを注ぐ静かに熱い"女性賛歌"が、痛いほど私の心の琴線を震わせ、魂を揺さぶるのです。

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