軽さと重さが変化した第2シーズン
ガリレオドラマの中の世界感は、原作よりも濃厚
福山雅治の湯川学は、まさにはまり役だ。第1シーズンが終わった時には、ガリレオロスに悩んだ人も多いのではないだろうか。
そんなガリレオファンならば、第2シーズンが待ちきれずに原作を読んだ方もいるだろう。しかし原作は、ドラマのガリレオシリーズとは少し雰囲気が違っている。
ガリレオの原作は、ドラマと比べると意外とあっさりしている。ドラマでは、これでもかという感じに登場人物の個性が輝いているが、原作では人物の細かい描写もあまりなく、ストーリーや謎解きを楽しむ小説という位置づけのように感じる。
ドラマのガリレオシリーズは、ドラマ化の段階で考え尽くされ作りこまれた世界感なのだ。
内海薫から岸谷美砂になって変化した重さと軽さ
第2シーズンの中で一番の変化といえば、ワトソン役が内海薫から岸谷美砂になったことだろう。それにともなって、ドラマのなかの軽さと重さが変化してきた。
柴崎コウの演じる内海薫は、湯川のところに勝手に事件を持ち込んではくるが、性格はまじめで硬く、どちらかというと受身で湯川に対峙している。
空気感としては、しっとりと硬く重い。湯川と内海の硬い空気を吹き飛ばす存在として、栗林がいた。
しかし、吉田百合子演じる岸谷は、性格はおっちょこちょいで明るい。湯川に対してもためらうことなく積極的に発言している。空気感としては、動的で軽い。湯川が硬く、栗林と岸谷が硬さを吹き飛ばす存在として、それに対峙するという関係に変わっている。
このことで、ドラマ全体の重さと軽さの空気バランスが、少しずつ変化している。
ストーリの暗さに目が行く
内海よりも明るい雰囲気の岸谷に代わったことで、ドラマに明るさが増えたはずだが、意外にもドラマ全体ではそれほど変化していない。
ドラマ全体の重軽バランスは、ストーリーの暗さがより際立つことにより、バランスがとれることになった。
これは湯川が実際にもドラマの設定でも年齢が上がり、落ち着いてきたということもあるだろう。また、明るさがあると暗さが目だつという、コントラストの問題かもしれない。
恋の予感は遠ざかり消滅した?
そのほかに、大きく変わったのは恋の予感についてだろう。
内海と湯川は、ストーリーが進むにつれて、恋の予感を感じさせていた。もちろんお互いに、はっきりとした恋心を持っているわけではない。好きかと聞かれたとしても、「そんなことはあるはずがない」と答えるだろう。
しかし、湯川が立て板に水で語り続けている時に、内海は(湯川先生かっこいいかもしれない・・・)と、見とれるように湯川のことを見つめていることがあった。
そして、湯川もまた内海が落ち込んだりしている時に、やさしい言葉をかけ、心を動かされているように見える場面も増えてきていた。
はっきりとした恋ではなく、ほのかな恋の予感を感じさせる関係。ちょっと気にかける異性という関係という関係。このまま少しずつ距離が近くなると、恋になる可能性もありうる、と感じさせる関係だ。
この微妙な距離感がまた、ドラマに微妙な緊張感をかもし出していた。
しかし、進行するかと思われた関係は、意外にあっさりと終わりを告げる。
そして、新しいワトソン役の岸谷は、恋の相手にはなりそうもないのだ。湯川には岸谷は子どもっぽすぎると感じられるのでは、と思わせる関係だ。
岸谷は湯川に、あからさまに女性扱いされないことに何度か文句を言っている。また、明るすぎてはっきりとものを言い過ぎる岸谷は、微妙な恋の予感を感じさせる男女の空気感もかもし出すことはない。
湯川とワトソン役との恋の予感は、遠ざかり消滅してしまったようだ。
湯川の恋はどこにあるのか、謎は続く
湯川のファンとしては、湯川には独り身でいて欲しいことだろう。もちろん誰かと付き合うなどという状況は論外だ。
しかし、それでいて湯川の恋の予感が終わってしまったのも、残念に感じられるのではないだろうか。
湯川はどんな風に女性に近づくのだろうか。恋をすることはあるのだろうか。
それはひとつの謎でもある。
近づかない、というのが正解だと分かっていても、解けない謎の答えを知りたいように、ドラマのなかで答えを知りたいという気持ちも出てくる。
湯川は、湯川自体が謎を秘めているのだ。答えのない謎のような存在。それゆえに魅力的で、何故かひきつけられる存在なのかもしれない。
湯川の恋を、どこかで見てみたい。本当は見たくないけれど、少しだけ見てみたい。そんな気持ちが、かき立てられた第2シーズンだった。
謎解きが主役であるガリレオシリーズの一番の謎は、湯川だ。湯川と誰かの恋は実ることがあるのか、そもそも湯川が恋を感じることはあるのか。どんな相手が湯川の恋の相手になるのか。
この解けない謎は、第2シリーズでも解けてはいない。いつか、この謎が解ける日はくるのだろうか。知りたいようで、決して知りたくない謎の答えでもある。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)