純粋に”傑作” - 空から降る一億の星の感想

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空から降る一億の星

4.504.50
映像
4.00
脚本
4.75
キャスト
4.75
音楽
4.50
演出
4.00
感想数
2
観た人
4

純粋に”傑作”

4.54.5
映像
4.5
脚本
5.0
キャスト
4.5
音楽
4.0
演出
4.0

目次

月9でラブサスペンスという意外性

当時月9のドラマでラブサスペンスが放送されるということ自体がまず珍しかった。月9といえば恋愛ドラマが主流だし、そうでなくてもとにかく明るいドラマが多かった。このドラマは明るさとは正反対で、終始暗い内容が続く。脚本家の北川悦吏子ももともと恋愛ドラマを主流としてドラマを描いてきた人だが、ラブサスペンスである今作こそ彼女の傑作ともいえると思う。要点だけを見ていくと確かに女性の作家が書きそうな内容がたくさんある。財閥の娘とコック見習いの不釣り合いな恋愛関係や、刺されたことで記憶を取り戻す件、この物語のポイントである恋愛関係にあった二人が実は兄弟であったという設定、あらゆる展開で少女漫画のような筋書が使われている。これらのある種わかりやすい題材はドラマを生々しくみづらいものにしがちだと思うが、結果としてそうならなかったところが一つ良かった点だと思う。

重くならなかった要因として一つ、キャスティングが挙げられると思う。このドラマのキャスティングの意外性と言えば明石家さんま(完三役)のことしか言及しようがないのだが、まさにこの役がドラマ全体の面白さを底上げしている。映画やドラマの役というのは実際のその人のキャラクターが分かっていればいるほど演技を見るのが難しく、演じているわざとらしさが見えてしまってあまり入り込めないのだが、明石家さんまの演技は本当に素晴らしかった。この場合は実際の関西弁で陽気なキャラクター性をそのままに、性格は全く違うというギャップを本当にうまく利用していたと思う。このようなキャラクターのシリアスな一面や感動的な一面はより一層際立つ。

これらのようにドラマのテイストや脚本やキャスティングというあらゆる点でそれまでの月9との違いがあり、でも違和感なく見られた。しかしそれはあとあとなぜ面白いかを考えた結果であって、ドラマを見ていた時にはもう少し違う点で感動していた。それを後述しようとおもう。

”ここぞ”で流れるあの音楽

このドラマを見ていて一番しびれた部分があの劇中音楽である。それは一話でいうところの、完三が、美羽のブレスレットを元通りにした人物と、殺人事件現場でのビデオラックを元通りにした人物に共通する特殊な記憶能力に気がついた場面で流れる音楽だ。このドラマは全体的にシリアスな雰囲気を演出するためにかあまりBGMが使われていない。静かに、そして少しずつ視聴者の緊張をあおっていくためだ。そして物事が核心に迫ってきたときに、堰をきったように緊張感のある音楽が流れる。これがとてつもなくドキドキしておもしろい。緊張感や不安感、そして物語がこれからどんどん恐ろしい方向にむかうというある種の期待感のようなものが効果的に演出されるのだ。一話においてはこの音楽がきっかけで連続ドラマ全体の向かう方向が明らかになるのだが、それ以降の話でもこの音楽は流れる。一話ほどの物語の方向転換や、驚きの事実が明らかになるという大きな展開は起こらないのではないかと思ったが、毎話毎話この音楽が流れるところでは同じように緊張し、心が躍る。これは、このドラマを見る上でものすごく大きな楽しみの一つだった。これほどまでに決めるところをしっかり決めてくるドラマを、私はあまり知らない。例えるならば漫才の落ちをしっかり決めてこられた感じだ。中身も面白いのだが、最後の落ちで一番大きな笑いが起こる感じ。この爽快感はなかなか味わえない。

ストーリーとラスト

この脚本は連続ドラマにしては本当によくできていて、というのも連続ドラマは時間にして9時間ほどの長い物語になるため、通常は真ん中くらいで中休み的なあまりストーリーに関係ない展開で遊ぶ話がある。しかしこのドラマはそれぞれの話がしっかりとつながってまさに連続ドラマになっている。つまりどの話も本筋から離れずに集中して見ることができる。前述したように毎回新しい事実が明らかになっていくからだ。そして期待がかかった最終話でもそれは裏切られなかった。もっとも残酷で視聴者がある意味で期待していたバッドエンディングで幕を閉じる。これほどまでに残酷な結末を遂げる月9というのもまた珍しい。そして、最後にこのドラマのタイトルである「空から降る一億の星」というテーマでドラマを締めくくるのだ。どこか後味の悪いような結末になりかけたものを、感動で切なくてやるせいない完三の心情をあおる演出で気持ちよく物語を終える。

物語の始まりこそ涼と優子の恋愛ドラマになっていたのだが、思えば一話で異変に気が付いた完三、そして物語の最後、最も残酷な結末も完三が一人で受け止めるというものになっていた。そういうことを考えるとこのドラマの主役は完三と言ってもいいのではないかと思う。涼(木村拓哉)の心情や主観的な部分には視聴者はあまり感情移入しない。むしろ展開すべてを完三の目線で追いかけることにもなっている。ここでもやはり明石家さんまの役割が大きかったということがわかる。

簡単な感想にはなるが、展開やキャスティングそして音楽とどれも素晴らしかった。少し暗い話ではあったが、私は月9史上これほどまでに来週が気になったドラマはない。

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他のレビュアーの感想・評価

優子の感情剥き出しっぷりがすき

レビューを書くにあたって見返していると、まず本当に最近のドラマにはない豪華さ、そしてストーリーの面白さだなあと。木村拓哉に深津絵里にさんまさんに柴咲コウに井川遥って、、、最高か!!!このドラマの深津絵里演じる優子が好きです。年齢設定は忘れたけど、あんな風にいつまでも生きられたら、、って思います。大切な友達にはとことん優しい。気に食わない人にはもろ態度に出す。好きな人には無償の愛をあげる。その時の感情で表情がころころ変わる優子がとても可愛く美しいです。「私、あなたの味方だよ。世界中が敵に回っても、あなたの味方だよ。」このセリフを言う優子の真っ直ぐな目にぐっときて涙してしまいます。このセリフをこんな嘘のない目で言えるのって凄い。心が冷え切った涼が惹かれていくのも無理ないです。あと優子で注目したいのはファッションですね。いつもボーイッシュなファッションなんですが、でもネイルがワイン色だったり...この感想を読む

4.54.5
  • 千夏千夏
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  • 658文字

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