元気をもらえるハートフル映画 - あなたのためにの感想

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元気をもらえるハートフル映画

4.54.5
映像
5.0
脚本
4.5
キャスト
5.0
音楽
5.0
演出
5.0

目次

ストーリーの流れ

この映画の主役はノヴァリー役のナタリー・ポートマンである。そしてその親友のレクシーをアシュレイ・ジャッドが演じている。17歳のノヴァリーとその周りの人たちにさまざまな事が起こりながら成長していくハートフルでヒューマンな映画だ。ノヴァリーの周りで起こるトラブルが多くてその内容もかなりハードなことが多いが、ノヴァリーはそれらのトラブルを1つ1つ乗り越えてだんだんと強く成長していくところは見ていて勇気づけられる。

ノヴァリーの波乱万丈な人生

まず最初のトラブルは、出産間近のノヴァリーとウィリーが旅行中、スーパー(ウォールマート)でノヴァリーがトイレに行っている間にウィリーに逃げられてしまう。ウィリーは明らかに父親になる覚悟もなく自分のことしか考えてなさそうな男で、旅先の写真もすべて自分が写っているシーンとかもわかりやすくそのウィリーの性格が表れている。でもノヴァリーはまだ17歳でそんなことにはあまり気にしていない感じで無邪気で幸せそうだ。ウィリーに逃げられてしまって1文無しで行くところもないノヴァリーがウォールマートのトイレにいる間に、彼女の存在に気付かれずに店が閉まってしまったことから、その後数週間そのウォールマートで寝泊まりするようになる。お腹が大きいのにけっこう大変な状況のはずのノヴァリーだが、昼間は公園や図書館などで時間をつぶして夜はまたウォールマートで寝泊まりする生活が、どこかのほほんとした感じで楽しそうでもあり、少し羨ましくも感じる。特にウォールマートが閉店した後の店内での生活は、ダンベルとラジカセを拝借して軽く運動したり、シャワーのホースを使ってトイレで体を洗ったり、アウトドアグッズの展示品と思われるパラソルの下でパックのジュースを飲んだりと、自分もやってみたいなーと思った。
この映画の中で彼女は実にいろんな人に出会い、しかも良い人たちと悪い人たちの差が激しいというか、はっきり分かれていると思う。でも悪い人たちも、ほとんどの人はどこか憎めない人といった程度に抑えられていて、それがこの映画のイメージが暗くならない要因になっているようだ(親友のレクシーにDVするという本物の悪もいるが、映画ではその男は映らない)。たとえばウォールマートの店内で出産したことで一躍有名になったことで自分を捨てた母親が現れるのだが、自分のことを捨てたのに悪びれることもなく平然と出てきて、しかも自分が娘を捨てた理由も覚えていないような母親で、その上ウォールマートの社長からノヴァリーがもらったお金を取って逃げてしまうという最低さなのだが、映画の中ではどこか可哀想な人だなーという程度に撮られている。この映画の見どころはノヴァリーが人として、母親として、成長していく過程にあると思うが、この母親に裏切られたときは、悲壮感はないが明らかに顔つき変わっていままでのどこかぼーっとした感じがなくなって凛とした顔つきにかわった。この裏切りによりだいぶ大人になったように感じさせる。「可哀想」というより「頑張れ!」「負けるな!」と観る側に思わせてくれるのだ。
ノヴァリーの出会いの中でとても良い人の1人がストッカード・チャニング演じるシスターだ。彼女はなんと行くあてのないノヴァリーを住まわせてくれるのだ。ノヴァリーがある程度子供が手を離せるまで育てるのに本当に恵まれた環境を得られて本当に良かったと思った。シスターとそのパートナーもとても良い人たちで子供も可愛がってくれた。この映画はトラブルと良いことが次々と交互に起こるので、この後は不幸がおこってしまい、シスターは死んでしまう。でもその後彼女はカメラマンとして成長していくという展開なので観ていて自分も何かに挑戦したくなった。ノヴァリーの周りの人も山あり谷ありな人生で、レクシーは5人の子供のシングルマザーという観ているだけで応援したくなる設定での人物で、DVの男に暴力を振るわれてしまう。このとき普段はおおらかなレクシーがその暴力の凄さと子供たちにこのことをどう説明したらいいかわからず泣きじゃくるアシュレイ・ジャッドの演技もすごいが、そのときノヴァリーが親友の話を聞いてアドバイスするところはノヴァリーが完全に以前のノヴァリーではなく、力強くレクシーを抱きしめるところは映画にピリッとしたスパイスが効いてとても引き締まったシーンとなっていたと思う。

ウィリーの波乱万丈な人生

ノヴァリーのこの次々起こる出来事で時間を忘れて観てしまうのだが、同時進行で逃げた元ウィリーのウィリーの人生も描かれていて、そちらのほうも負けず劣らず面白い。ウィリーはノヴァリーを置いて逃げた後ほどなくして刑務所に入ることになり、そこを出た後刑務所で作った歌で歌手として生活していくことになる。やがてプロデューサーと喧嘩して酔っぱらったウィリーは事故で両足を失ってしまう。もちろんこの映画の登場人物のなかでウィリーはノヴァリーの母親と同じく「悪い人」なのだが、両足を失ったシーンでは、少し可哀想になってしまった。個人的にはもう少し軽めの罰という設定でも良かったのではないかなーと思う。でもそこにはちゃんと伏線があって、というのもウィリーが両足を失ったことをノヴァリーが知って病院に会いに行くのだが、そこでの2人の会話がすごくいいのだ。この映画は全体的に悲しい出来事があっても次のシーンで軽快に吹き飛ばす楽しい出来事を描くというスタンスなのだが、たまにシリアスなシーンをスパイスで混ぜ合わせてくるのだ。病院での2人の再会のシーンはまさにそのスパイスの1つと言えると思う。今までの能天気で自分勝手なウィリーが両足を失った哀れな青年になっている変わりようがまず空気をシリアスにしている。ノヴァリーはそれを見てしばらくたじろぐが自分が捨てられた感情をぶつける。そこでウィリーは、旅先でお腹の赤ちゃんの鼓動が聞こえないと言ったが実は聞こえていたんだという告白は真に迫るものがあった。この映画が引き締まる瞬間というか普通のハートフルな映画より1段階レベルをあげているところだと思う。

フォーニーの存在

フォーニーは図書館で働く青年で、ウィリーとは最終的に結ばれてハッピーエンドとなる。この青年が心優しい青年であることは、アルコール中毒の姉を看病するところでよく表されている。この映画で少し残念なところはこの姉の描き方で、よく2階から姉がウィリーの名前を呼ぶシーンが出てきて、まともではない人を想像させなければいけないところだと思うのだが、その声も至って普通の女の人といった感じで怖さが全くなく、ある日フォーニーが看病しに2階に上がったときに開いているドアからノヴァリーがフォーニーの姉を観るシーンがあるのだが、部屋もほとんど荒れている様子もなく姉の容姿も長年患ってきたアルコール中毒という感じが全然しなかったのが残念だった。

映画の締めくくり方について

映画の最後はフォーニーと結ばれて終わるが、個人的にはシングルマザーとして生きていくというストーリーが好みだ。そこは好みがわかれるところかもしれないが、私がそう思う1つには、これだけ自立した女の人に成長する姿を描いておいて結局は恋愛で片づけるのかという大衆迎合的な匂いが否めなかったのと、もう1つは、最後の方のシーンでノヴァリーがフォーニーをベストフレンドだが好きという感情とは違うと言ったことが実は相手のことを思っての嘘で、でも本当は好きだったという告白で離れていた2人が結ばれるというオチなのだが、どうもこの映画を観ている限りフォーニーが良い人どまりで本当に好きになったように描かれているとは思えないのだ。というわけで最後に少し物足りなさを感じたものの、見終わった後に元気が出る映画でとても良かった。

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