チームを創るとはこういうことである - 王様のレストランの感想

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王様のレストラン

4.304.30
映像
3.75
脚本
4.75
キャスト
4.75
音楽
4.25
演出
4.25
感想数
2
観た人
4

チームを創るとはこういうことである

4.64.6
映像
4.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
5.0
演出
5.0

目次

フレンチレストラン「ベル・エキップ」で起こる華麗な復活劇

フレンチレストラン「ベル・エキップ」は先代オーナーが亡くなってからというもの、以前のような活気を取り戻せずにいました。どうしたものかと悩む現オーナー、緑郎のもとに以前レストランでギャルソンを務めていた千石という男があらわれ、厳しくも上手く従業員を指導し、再び懐かしき日のベル・エキップを取り戻すために奮闘します。

キャラクター設定が素晴らしい

ベル・エキップで働く人々は皆大変に強い個性をもっています。個性には、性格や人間性だけでなく能力も含まれます。自分の能力に気づかない者、能力がないと諦めている者、自分には能力がないのを理解しつつそれを誤魔化そうとあたかも有能であるように振る舞う者、わがまま、臆病、見栄っ張り、etc,,,

その様々なキャラクター設定から、このドラマを見ると人は必ず誰かに感情移入し、自分を重ねることになると思います。三谷作品の特徴といっても過言でない「人間くささ」が溢れているのも、間違いなく作品の魅力の一つでしょう。

「完璧な人間など存在しない」というメッセージが当てつけがましくなく表現されており、それゆえに見る者を引き込みますね。

女同士の確執と友情、職場恋愛や不倫、気に入らない上司、プライドの高い人間や自らを卑下するひねくれた人間との兼ね合い、上司の気まぐれや見栄に付き合わなくてはならない部下の気持ち。どこにでもある問題が嫌というほど散りばめられています。「あー、あるある」と思ってしまうような状況だらけです。

一人くらいフランス人がいたほうがなんとなく箔がつくという安直な理由でデュヴィヴィエが雇われたというところなど、笑いどころでもあり、私たちが心の底から納得できてしまう安易な価値観を皮肉っているようにもとれますね。

なんとなくフレンチレストランというと「高級そう」「緊張する」「マナーが厳しい」といったイメージがあると思いますが、作品を見ると「この人たちも人間なんだ」とホッとした気持ちになってしまいます。「いらっしゃいませ」と出迎えてくれたピシッと素敵なギャルソンが、給食センターのおじさんだったと思うと途端にリラックスできそうです。

「王様」とは誰か?

千石が1話で、大変無礼だった客を「お客様は王様だ。しかし、王の中には首をはねられた者もいる」と一蹴するなんとも大人で、クールすぎる台詞があります。ということは、

「王様とは客のこと?」

ではありません。それでは普通のレストランです。王様とはどういった存在か考えてみると、思わずハッとするものです。

王様とは、その国でただ一人の特別な存在です。そして各国の王様同士で何かするなんてことは基本的に無く、気に入らなければふてくされていれば良いし、プライドばかり高い。

つまり、「ベル・エキップの従業員たち」のこと。

各分野の従業員は一人しかおらず、千石がくるまでは皆好き勝手に気分のまま働いていましたし、「チームワーク」なんて言葉のカケラも感じられない働きぶりでした。挙げ句の果てには、その皆をまとめる役割であるはずの千石も先代オーナーのように自分の気に入らない、意見の対立する人間を排除しようとしてしまう自分の王様気質に気がついて一度は店を去りますよね。

ですから、「”王様の”レストラン」なのです。

しかしながら、「王様」にはやはり「特別」といった意味を強く持たせてあるのでしょう。ベル・エキップで働く人々も「特別」であり、来店した客が素晴らしく「特別」な時間を過ごせる店自体も特別です。

そう考えると「王様のレストラン」とは、キラキラした文字の雰囲気の裏に苦労が見える、皮肉混じりの素敵なタイトルですね。

チームを創るとは、パズルのようなもの

千石はベル・エキップを店として機能させるために、従業員の能力を冷静に判断し、適材適所に配置したり、時には厳しい言葉でその能力や努力する姿勢を引き出し、奮い立たせました。時にはウソをうまくつかったりして。

チームを創る時に必要なのは、悪いところを削らせることではありません。もちろんある程度のコントロールは必要ですが、それ以上に良いところを伸ばすことが求められます。良いところをのばすことに成功すると、互いの能力同士がうまく噛み合い、機能するからです。

まだ眠っているような能力の片鱗が少しでも見えたとき、千石はそれを見逃しません。

しずかがサーモンの臓物パイを寸分違わず再現できること、稲毛が必死に考えると大変独創的で、店の看板になるような素敵なデザートができることなどが良い例です。

もともと従業員が皆各々に情熱を持って仕事をしているのも大きな要因ですが、千石の細やかな観察眼、そして従業員と千石自身にむけた「信頼」がベル・エキップ・チーム誕生の鍵でしょう。

下手をすれば辞められてしまい、お店が困ります。しかし、彼は事実を時に厳しい言葉で指摘し、改善するよう求めています。もちろんその分、良いところを伝え褒めることもしていますが、「従業員皆がベル・エキップの復活と自分の活躍の場を求めていること」を信じており、それが間違っていなかったからこそ、店は見事に蘇ったのです。

おそらく一般的な会社組織に於いては、このように強固な関係を築き上げることは難しいのではないでしょうか。「レストラン」という舞台自体が非常にドラマチックですし、何よりこれは「ドラマ」です。そういう意味では、困難が起きる→乗り越える→大成功するという、まさに「王道」をいく物語ではあります。

しかしながら、チームで働く時には何が必要か?という現実的なメソッドがここには大変わかりやすく描かれています。その点が他の王道ストーリーとの相違点ですね。

仕事にいきづまったら見たいドラマNo.1

先述の通り、このドラマには現実的に参考になる部分が多いので、大変勉強になります。

そしてまた、なにか問題を解決した時に流れるテーマソングがものすごく爽快なのです。あれを聞くとやる気がでるくらい、キャッチーで明るく軽やかなテーマ。

筆者は中学時代の部活動で、部員をまとめる時に大変お世話になりました。

何度みても飽きずにみられてしまうので、本当に良く構成されたドラマだと思います。

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他のレビュアーの感想・評価

個性が光ったいい作品。

この作品の見どころは何と言っても個性が光ったキャラクターだろう。ギャルソンに松本幸四郎が据えられ非常に見ていて良い落着きがある。何と言っても主人公がギャルソンというのが面白い。またシェフ役の山口智子の演技も非常に魅力的だ。セットの素晴らしさも良い味を出している。レストランの内装だけでなく用意されている小道具の食器類も視聴者にとって喜ばしい演出だろう。毎回登場する素晴らしい料理の数々もこのドラマの中で良い演出をなしていると言えるだろう。どれをとっても非常に食欲をそそる。他にもこの王様のレストラン引き立たせているのは森本レオの声である。どれだけ慌ただしいドラマであっても、どれだけ緊張感を持った後であっても森本レオの語り口調でほのぼのと話されてしまうと思わず肩の力が抜けてしまうだろう。この作品を作った三谷は古畑任三郎での大成功によって自由度が上がったためかこの作品で非常に多くの「実験&遊び...この感想を読む

4.04.0
  • ずーみんずーみん
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