見たようなシーンと見たようなカメラ割りの連続 - そこのみにて光輝くの感想

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そこのみにて光輝く

3.003.00
映像
3.00
脚本
2.50
キャスト
4.00
音楽
2.00
演出
3.00
感想数
2
観た人
2

見たようなシーンと見たようなカメラ割りの連続

1.01.0
映像
1.0
脚本
1.0
キャスト
3.0
音楽
1.0
演出
1.0

目次

愛を捨てたものと愛を諦めたものがあっさり恋に落ちる

もともと映画はDVDで観るので、決めるのに重要な要素はパッケージだったりする。
またテーマが軽いものよりも重いものが好みだったりするので、こういうのはちょっといいかなと思って観てみたのだけれど。
綾野剛が演じるすべてを捨てたような男、佐藤達夫と、小さな町ながらもそこの会社社長と愛人関係にある女、千夏を池脇千鶴が演じる。その二人が、偶然佐藤がいったパチンコ店で知り合った千夏の弟、大城拓児、これは菅田将暉が演じているのだけど、その弟を介して出会って恋に落ちるのだけれど。これがまずもう一回目の出合ったところからすでに、「今日初めて会ったんだよね?」と思わせるくらい、もういきなり恋に落ちてます。そこはなにか一コマでもいいから、そのきっかけのようなものを見せて欲しかった。もともと佐藤はすべてをあきらめてただ生きるだけのような生活をしている男。それがあっさり恋に落ちるわけないと思うんですよ。なにかきらめきのようなものか、希望見たいなものを見たと思うんだけど一切なし。そりゃ説明が多すぎるのはよくないけれど、そこは大事でしょう。

貧乏と底辺と負の表現

千夏と拓児とその両親が住むのは海辺の粗末なバラック。映画が始まって序盤ころに、達夫が拓児に連れられてこの家を訪れるのだけれど、この粗末なバラックというのが実に中途半端で、なにかどこか現実味のない、どこか小奇麗でさえあったりする。(前にみた「蟹工船」もその感じがあった。あの状態であの船の寝台があんな綺麗じゃないだろうという許せなさ)本当のスラムのバラックなんてあんなもんじゃない。話は貧乏で底辺な生活ぶりをこれでもかとアピールしてきているつもりなんだろうけど、安いというか軽いというか。例えば拓児が千夏に作ってもらったチャーハンをフライパンのまま犬食いするシーンがあるけれど、意図としては「お客さん来ててもこんな風にこの人たち食べちゃうんだよ」と言いたかったんだろうけど、おいしそうに見えただけだし。でも、それはもしかして菅田将暉の演技のせいかもしれない。どこかバカっぽいところを出そうと懸命になりすぎて、なにかオーバーリアクション気味というか。それもすべて監督の采配だとは思うけれど。
あとあの父親の性処理シーン。あれ必要?いやボケちゃってるからあれこれと言うのはしょうがなないとして、しなくてもいいんじゃないのと毎回思った。死ぬわけじゃないし。100歩譲ってしなきゃいけないなら、娘がする必要絶対にない。だって死ぬわけじゃないんだもの。あとよくわからなかったのは、薬をいれたぞうすいみたいなものを千夏が作ってて、それを拓児がうめーうめーと食べてしまうのだけれど、それを千夏も母親も見ているのに、あわてる風でもなく。わざと食べさせるように仕組んだ感じでもないし、最後まで意味がわからないままだった。あと、千夏と佐藤が海辺を歩きながら父親のことを話すシーンで、「(性欲を抑えるために)もっときつい薬もあるんだけどね。それ飲むと、頭がボケちゃうから」といったセリフを千夏が言うのだけど、もうボケてるやん!と突っ込まざるを得なかった。

高橋和也が少しスパイスに 

唯一少しリアルさを感じたのは、高橋和也が演じる中島という男。千夏の愛人。いい感じに気持ち悪くて、千夏に冷たくあしらわれたときに妙にしょんぼりして哀愁を漂わせる。後半は暴言吐いたり暴力ふるってきたりと最低男ぶりを発揮してくるんだけど(それもいきなりの豹変でただの気持ち悪いおっさんじゃなかったの?という違和感は拭えなかった。)、前半部分はそんなに悪い人には見えなかった。ただ気持ち悪いだけで。あの気持ち悪さはなかなかのものだと思う。
そもそもあの二人は愛人というからには金銭的援助ももちろん受けていると思われる。なのに愛に突っ走った達夫が、千夏と別れるように中島に言うところがあるんだけど(それも中島のいる場所に連れてきたのは卓児。なんで連れてきたか弟よ…)、それより先にやめさせるべきは風俗のほうなんじゃないのか?その時達夫が中島に「家族を大事にしたらどうですか」と言ったら「大事にしてっからおかしくなんだべ!」と、一瞬良いようなことを言うんだけど、その言葉後半まったく生きてない。どっちもそんだけ大事なら、千夏のことをあんな風にいえるわけない。一瞬いいこと言うと思ったのが損した感じだった。
もうひとつ言うと達夫が千夏が体を売っているということを知ったのも、千夏が勤める店に偶然(!)入ったというハプニングぶり。しかもわかりやすい風俗の店でなく、普通のスナックのようなところの裏でやってるといったところなのに。函館ってそんな店少ないか?いちいちそんな出会わせなくとも、どうにでもなっただろうに。
達夫を愛し始めていた千夏は中島に冷たくなっていく。そこは仕方ないけれど、あんな離れ方をせずにもっと説明とかなにかあってもいいのではないかと思う。少なくとも弟は世話になってるんだし。経済援助もあるんだろうし。車で中島と口論になりながらも「早く済ませてな!」と自らパンツをおろして開き直るシーンがあるけど、あれはあれですごいと思ったんだけど、中島がベルトを外していざ体に乗ろうとしたら、すごい悲鳴を上げ始める。トラップか。それで殴られるんだけど…。女性を殴る男は最低というのは当たり前だけど、手をださせたという感じはどうしても否めない。
その後、顔を腫らせた千夏は家に帰り、卓児に中島がやったとはいわずにごまかしたのだけど、卓児はバカキャラだから「ふーん」とか言って全然気づいてないんだと思ってたら、気づいてたのね。そして後述の中島を刺してしまう。でも本当に中島を刺しにいくまで気づいていないんだと思ってた。もうちょっと千夏のいないところで怒りで顔を歪めるとかあってもよかったんじゃないかな。

愛を捨てた理由

もともと達夫が生きる屍のように生きざるを得なかったのは、以前は爆弾を使って砕石をとるそういった仕事をしていた彼が、自分のミスで後輩を死なせたという思いのみ。がそれも再現映像でやってくれるんだけど(正直そこはいらないと思った。なんか安い爆破シーンだし、達夫が責任を感じなければいけない理由がわからなかったし。)愛を捨てるほどの衝撃的な理由にも思えなかった。
その後逃げるように函館にきて生活を始めるんだけど、そこにその職場の親方的な人物が追いかけてくる。それが火野正平演じる松本という男。この彼、怪しすぎ、そして安すぎ。達夫と卓児を連れて焼肉屋で飲んでいるシーンがあるけど、もうそれが安い。危険に酔っているというか。「俺たちの仕事してるようなやつが家族をもつなんて」などとシニカルに達夫に言うところあるけど、そんな仕事して普通に家族持っている人はたくさんいるでしょうよ。そのような、なんか深みのない話で始終進んでいく。


もっと色々言いたいけれど

その松本が卓児にも仕事を紹介できるといって喜ぶ卓児だけども、酔って千夏のことを悪し様に話す中島を刺してしまう。それを知った達夫がいきなり卓児を殴りつけるところはよかった。聞いてすぐ手がでたといった感じのリアル。卓児はもちろんこれで楽しみにしていた山の仕事がパアになってしまう。そのときに卓児は、「母ちゃんや姉ちゃんの喜ぶ顔が見たかっただけなんだ…」と泣くのだけれど、今まで結構遊んでましたよね、何で急に?と。見ている側を泣かそうとしている意図が感じられて、ちょっと引いたところ。
その後もいろいろあるんだけれど、最後は千夏と達夫が見詰め合ってるところにうまいこと朝焼けが!狙ってたんだろうなあと思うと、これもまた引いてしまった。
というわけで、散々文句言いながらも最後までは見た映画だった。

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他のレビュアーの感想・評価

ここ数年で観た邦画の中でも1、2を争う大傑作。

この映画にはとてつもない説得力と吸引力があるように思います。そこのみにての、そこはドン底の底なのかもしれない。と思うくらい、日本社会の最下層の中の最下層でしかすみ暮らせない人々の人生模様を照らし輝かせるような執念にも近いリアリティが観客に息を飲ませる凄みがあります。それにしても、この映画は出ている役者がみんな、演技巧者揃いで小説を元にした映画ということを忘れ過酷な条件での仕事により同僚を事故死させてしまい、今は現実から逃げ惑う自堕落な青年を、綾野剛が大熱演しています。主人公の彼女になる役で登場する、池脇千鶴も病気により性欲だけが歪んだ形で残ってしまった父の世話をするために、場末のスナックで家族を養っています。この二人の主要人物の日常を冷酷なまでに美しい映像美で切り取りながらストーリーは進んでいきます。もう、明るい要素は皆無と言っても良いくらい悲惨な展開が続くのですが、ちょっと知恵の足り...この感想を読む

5.05.0
  • 花房雨花房雨
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