すでに荒木飛呂彦っぽさ全開の初期作品 - ゴージャス★アイリンの感想

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ゴージャス★アイリン

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画力
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ストーリー
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キャラクター
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設定
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演出
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感想数
1
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1

すでに荒木飛呂彦っぽさ全開の初期作品

4.54.5
画力
3.0
ストーリー
5.0
キャラクター
4.5
設定
4.0
演出
4.5

目次

JOJO連載の直前、1985年の表題作

当作品は、ジョジョの作者による表題作を含む短編集です。荒木は当時、表題作を連載化する予定でしたが、ダメだと途中で判断して、ジョジョの執筆に移行しました。その後、ジョジョは大ヒットし、現在もテレビでアニメが放送されていますので、このときの荒木の判断は正しかったのですが、では表題作が駄目な作品かというと、そんなことはないとは思うんですよね。
というわけで、当レビューでは、本作品のよさをあらためて考察したいと思います。

読みごたえのある短編、ミステリーの基礎をおさえている

表題作を今あらためて読んだ素直な感想は、ずばり「読みごたえのある、きっちりとした短編だった」です。漫画というより、むしろ短編小説を読んだあとの読後感によく似ています。この作品は乱暴にまとめると、「アイリンがどこに潜んでいるのかを、悪役と捕らえられた主人公がドキドキしながら探している」という話です。ミステリー作品のような構成になっています。ミステリー小説のお約束もしっかりおさえていて、悪役が顔見せをする最初のコマに彼女はしっかりと描かれていますし、弾丸を受けても平気だったシーンの、そのトリックも最後に種明かしします。というより、「撃たれても平気なことがそもそもおかしい」ということに、種明かしのシーンで気づかされるという、叙述的かつ、バトル漫画のお約束の盲点をついた――実に荒木作品らしい――ひねりのきいた謎解きです。
それに加えて最近の漫画を読み慣れていると、この作品を初めとする収録された短編には、どれも小説のような読みごたえがあることに驚かされます。
これは作者の作風だといえば、その通りだと思います。当時からちょっと変な作家・作風だという評価だったと思います。ただ、変とはいっても天下の週刊少年ジャンプの連載作家・連載作品です。今あらためて読むと、たしかに荒木節が炸裂していますけれど、しかしどの作品も、なんだかんだいっても少年ジャンプの王道をしっかりおさえた作品になっています。これは今の時代に、あらためて読むとよくわかると思います。荒木作品は、その時代の雰囲気をしっかりと取り入れた王道的な作品で、王道の範囲のなかに位置しつつ、変でズレているのです。そんな作風が、荒木という作家の個性だと思います。
ですから、この作品も時代のニーズと王道をしっかりおさえています。
やっぱりこの時代の短編漫画は、起承転結がバッチリ決まっていて、構成が凝っていて、作品の密度がものすごく高いです。
この作品が発表されてからかなり後になって、漫画家たちが「短編を描く能力と長編を描く能力は違う。短編で審査されて長編を描くのはおかしいのではないか」というような発言をするのですが、もちろん時代によって読者の好みは変わりますけれど、それでもこの発言の前の作品群と後の作品との作風の違いには、色々と考えさせられることが多いです。
もちろん当作品の作者は、短編で審査されていた頃の漫画家ですから、短編を描く才能も長編を描く才能も両方持ち合わせています。

作者の描く女主人公はどうなのか

作者の代表作はジョジョですが、ジョジョの第6部の主人公・ジョリーンは女主人公です。荒木は、女主人公は書けないとずっと言っていたのですが、心境の変化と時代が強い女性を求めるようになったこともあって、6部になってようやく女主人公を描きます。第5部のトリッシュが主役になるエピソードで手応えをつかんだのかもしれません。で、ジョジョ連載前の本作ですよね。
当作品は、作者が「女主人公は書けない」と言った理由だと思って間違いないでしょう。
それでは実際どうだったでしょうか?
今読むと、たしかに女主人公のアイリンは強いんですよね。
ただ彼女だけが強いわけじゃなく、敵の女どもも強いんですよね。肉体な意味で。たぶん2メートルくらい身長がありますし、1作目も2作目も北斗の拳の敵を女にしたようなタイプです。戦い方もパワーに頼ったものになっています。
これはおそらく、映画「エイリアン」が好きな作者が、シガニー・ウィーバー(身長180センチ)に影響されていたからなんじゃないかと思うんですよね。
当時の強い女性といえば、シガニー・ウィーバーですし、エイリアンで見せた戦う女性、美しい女性像は強烈なインパクトを残しました。
これはあくまでも推測なのですが、結構あり得る話なんじゃないかと思ってます。
というわけで、本作は「女の子がお化粧をして変身する」バトル漫画ではありますが、読者の期待したものとは違う(そして、おそらく編集部の期待したものとも違う)作品になってしまいました。


ちなみに「女の子がお化粧をして変身する」バトル漫画は、ジャンプ編集部のお気に入りのネタだったのか、それとも時代のニーズだったのかは今となっては分かりませんが、この作品の後の1992年に桂正和が「SHADOWLADY」を描いています。
シャドウレディは最終的にコミック3巻になりましたが、このような連載を荒木がやっていたら、ジョジョの代わりに連載していたらと思うと……アイリンは作品としては素晴らしいですけれど、でもやっぱり、中断してジョジョを書きはじめた作者の判断は正しかったのではないのかなって思ってしまいます。

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