爆笑エッセイ
旅行記!
さくらももこさんが実際に旅行に行った時の感想や起こった出来事を書いている。
台湾旅行:台湾旅行で怪しげなジュースを飲み腹痛に見舞われて入院など、起こった出来事は悲惨なのにももこさんの書き口が何とも面白くて、つい吹き出してしまう。のどが渇きすぎて、おかしな味がするジュースを周りの反対もものともせず飲み干してしまい食中毒を起こした台湾旅行。台湾にまで来て入院するももこさん。その付き添いでベットの下で眠る旦那さん。台湾に来てまでなんでそんなことをしているんだろう、という言葉はなんとも哀愁が漂って思わずクスリとしてしまう。
インド旅行:インド旅行の際の案内人は大麻さん。おおあさ、と読むらしいがインドで大麻というその組み合わせが露骨すぎて面白い。その偶然のギャグセンスが高すぎてなんて笑いの神に愛された人だろうと思った。それを引き当てるのがももこさんなのだろう。像に乗ったり物乞いにたかられたりとさまざまなインドを楽しんで満喫したことを情感たっぷりにツッコミもふんだんにいれこんで語ってくれている。そこで出会った、もう二度と会わないであろう少女のことをしっかり覚えていたり、インドの宮沢りえちゃんと出会ったり、彼女がどのような目線で物事を見ているのかを垣間見ることができて、本当に一瞬一瞬を楽しんでいつくしんで生きているのだなぁと思った。20年以上前に出版されたとは思えない、いつまでも楽しめる作品だと思う。
「ちびまる子ちゃん」の作品
ちびまる子ちゃんやアニメに対しての気持ちが綴られたものもあった。実際にアニメになって動いているところは感動ものだったという。当時ちびまる子ちゃんは3年計画でアニメ化されたそうだ。すでに持っていたネタは100本ほどで、3分の1程度だったという。それでネタ切れを周囲には心配されたそうだったが、ももこさんはもともと3年計画というものを脳内に立てていて、余裕だったそう。アニメ化するしないの以前にそういう計画を立てていたのだという。そのことに関してももこさんは
『物を創るということは、創り手が全てわかっていなければならないのだ。全てが作者の掌のうえでなくてはならない。それが粋というものであり、創り手がわかっていない作品というものは野暮なのである』P120
と語っている。その部分に彼女の創り手のポリシーやプライドというものを感じた。そしてそのすべてを3年間のアニメの中で見ることができて受容側としてはとてもラッキーだっただろう。それが1年のアニメだったら、わたしたちはちびまる子ちゃんという作品の一部しか見ることができなかったことになるのだから。
ちびまる子ちゃんはご存知の通り、実際に起こった出来事や、クラスメートなどが題材になっている。作品に生き生きと登場する人物たちはももこさんの出会ってきた人々。ばからしくも楽しいまるこちゃんの話を見ていると、本当にこんな毎日だったのかと驚く。なんて楽しそうな日々なんだろうと。しかし、ももこさんのエッセイを読んで、ただ自分の日常を語っているんだということがわかる。特別なことはなく、特別な人もいなく、ただわたしたちが流して忘れてしまうような小さなことも彼女には面白おかしく人に伝えられるものとして語られるのだろう。特別なのは、日常を愛おしいものとして見続けるももこさんの目線なのだろうとおもった。
家族
このエッセイの中には家族のやり取りや、旦那さんとのやり取りが頻繁に取り上げられている。静岡県清水市で育ったももこさんは両親と姉1人の家族構成。その後旦那さんは、デビューが決まってから集英社に初めて行ったときに出会ったそうだ。そんな周りに人に愛されて、彼女の作品は出来上がっている。
家族のエピソードの中でも、姉の見合い話は傑作だった。ドイツ人と日本人の国民性の違いを聞いてくる男性とお見合いをしてしまった姉。それまでお見合いを何とか進めようとしていた母も、それを聞いて断りたくなるのも仕方ないと思ったそうだ。家族全員がドイツと聞いてソーセジしか思い浮かばなかった。というところが同じように同じ一家で育った人たちなのだという証のようでおかしかった。その発想や考え方完成を否定せず両親と娘二人が大きくなっていったということだ。その家族性を否定していたら、ちびまる子ちゃんのようなほのぼのとした日常風景を描いた作品は出来上がらなかったのだろう。今や国民的アニメになったそれを作り出したのは、そのような素朴であたたかな人と人の関係だったりやりとりだったりしたのだろう。本当に面白おかしく育ったに違いない。ももこさん自身と周囲の豊かな人間関係に感謝である。
恥も外聞も捨てきって、素直な感想ややり取りをそのまま紙面に書き出している。お上品にしていないところがこの人の作品の魅力の1つなのだろうと思った。もここさんのエッセイはどれも面白いので是非一冊手に取ってもらえたらいいと思う。次もまた読みたくなるであろう。
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