待望された映画化があまりに遅すぎた - ホットロードの感想

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ホットロード

4.504.50
映像
4.75
脚本
4.25
キャスト
4.00
音楽
4.50
演出
3.75
感想数
2
観た人
2

待望された映画化があまりに遅すぎた

4.04.0
映像
4.5
脚本
3.5
キャスト
4.0
音楽
4.0
演出
3.5

目次

今の若者に暴走族が理解できるか

ホットロードがブームになった昭和60年代と現代では、不良の定義が全く異なっており、暴走族というものの存在自体、果たしてどれだけの若者が知っているだろうかと感じる。

連載当時より熱望されていた実写映画化であるが、長いスカートと髪の脱色で大人への反抗を表現していた時代の若者の気持ちを、短いスカートや髪のカラーリングが当たり前のようになってしまっている今の学生には、どれだけ理解できるか、実写映画化の時期が、ややこの作品の「旬」の時期を過ぎてしまった感がある。

主役級が不良に見えない

この作品の秀逸な点は、作品内における絵画的背景描写が非常に原作に忠実な点である。場の空気感とでも言おうか、人物のセリフ回しや潮風が香ってきそうな風景など、原作者紡木たく氏独特の「リリカル」な感じを、見事に表現している。

しかし、主役級の和希と春山という、「手が付けられない暴走族の幹部」である二人が、役者の演技は見事なのにルックス的に「普通の人」にしか見えず、素行の悪さが感じられない。この作品では、和希が大人への反発を強めていくほど髪を脱色していき、最終的には金髪になってしまうのが一つの外見的心理描写になっているので、そこを忠実に表現していたら、今の若者にも、現代とは違う反抗心の表し方として興味深いものになったのではないだろうか。暴走族のたちの悪さのようなものがぼやけてしまったのが残念である。

和希の母親の描写が秀逸

和希の母役を木村佳乃さんが演じているが、原作と非常にルックスが似ており、自分の子供をどこにもやらないと鬼気迫る勢いで怒鳴るシーンは、大変迫力があってすばらしい。やや大人に反発している子供たちの描写が弱い作品なのにも関わらず、この作品の世界観がちゃんと原作の言わんとしていることを表現できているゆえんに、和希の母親がしっかり描けていることが挙げられる。幼い子供のような部分を持った母親らしからぬ部分や、一方で迷いながらも本当は我が子を何より愛していた部分がしっかりと描かれ、中でも体調を崩した和希を号泣しながら負ぶって病院に連れていくシーンは、原作を圧倒するほどの凄みがあった。ある意味この映画のキーパーソンは和希の母親と言える。登場シーンがたくさんあるわけではないが、和希の中にある基底欠損のような心理の根幹となった母親をしっかり描くことで、母親の存在が何より大きいものと感じられる作品である。

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他のレビュアーの感想・評価

観るたび涙があふれてしまう

不良少年だからとかっていう枠でくくれないこの作品の本題というか根幹にあるテーマを考えると、こんな種類の子たちだからなどというチープなアイデンティティーを持ち出すことはできない。14歳の中学生、その年頃の少女が秘める親への思いが克明に描かれていると思うからだ。親から見た子どもの心はこんな感じだろうという想像と、子どもの心から発せられる親への欲求は、きっとこんなふうにすれ違い続けているのだろう。思春期と呼ばれる時期からそのすれ違いが生まれ、反抗期を迎え更にこじれる。10代前半の子どもに親へのフラストレーションをうまくまっ直ぐに伝えられるスキルはない。親は子どものことを一番に考え行動しているという自負のもと、自分のやり方に子どもからケチをつけられるため憤慨(かずきの母の場合、憤慨とともに拗ねが入り面倒臭い親になっているが)してしまう、そんなどこにでもあるような日常が切り取られている映画で、実際自...この感想を読む

5.05.0
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