独特な人間描写とリアリティーあるクズ人間達
主人公という存在
主人公のプンプンというキャラクターは、作中では一定の形を持っていない。そのストーリーの時々によって、鳥のような形だったり、図形のような形だったりと、作中を通して人間の形で描かれることが非常に少なく、顔が描かれることは一切なかった。それは何故なのか…?私がこの作品を読んで思ったことは、プンプンという存在は、この作品を読んでいる読者なのではないのだろうか…ということ。そのストーリーごとに合った姿を、自分自身に当てはめて読んでほしい…という作者の考えなのではないだろうか。この作品ではプンプンだけではなく、プンプンの家族や親族も、プンプンと同様の描き方をされている。その事から、プンプンだけではなく、家族や親族も含めて、読者自身の家族に当てはめて読むことができるよう、考えられていたのではないだろうか。そしてプンプン以外の登場人物達は、誰もが一度は関わることがありそうな、関わったことがありそうな人物像である。そういったことから私は、プンプンとは、感情移入することを極めて作り上げられた、読者自身を表現している存在なのではないかと思っている。また、プンプンの姿が会話の中で背景が黒く描かれ、分裂していたりと不思議な表現をされている部分もあるが、これはプンプンの精神や表情を描写したものなのではないかと思う。それをどう汲み取るか、どう感じるかは、それこそその身になったプンプンという名の読者次第なのだ。
クズ過ぎる人間のリアリティー
この作品の中に登場する人物達は、ほとんどと言っていいほど、クズな人間ばかりである。自己中心的な主人公をはじめ、子供の頃にした、約束を破ったら殺すという約束を、年を重ねても約束で縛り付け固執するメンヘラな子、父親からのDVが影響して、異常なまでに自己主張が強すぎる子、浮気が原因でお金を取られ、自殺願望だけはあるが死なないプンプンの叔父、その叔父に浮気をされた腹いせに、叔父の甥っ子であるプンプンと肉体関係を持ちながらも、平然と叔父と結婚した女。並べただけでも、クズ過ぎる人間ばかりなのがわかる。では何故、この作品にはそういったクズな人間ばかりが描かれているのか?これは、登場するどの人物も、人間の理性という部分をとった姿なのではないだろうか。普通ならばそんな考え方にならないだろうと思う部分も、理性がないのだと思えば納得できてしまう。人が本当はこうしたい、ああしたいと思うこと、しかし普通の人間であれば、そこに理性が働き、本能のままに行動することはなく生きているのだろう。だが、この作品に出てくる人物達は、その理性という部分が全くと言っていいほどない姿で描かれており、それは人間本来の姿とも言えるのではないだろうか。理性ではなく、本能のままに生きていく人物達は、やがて幸せとはかけ離れた人生を進んでいくことになる。そして、そんな人間は実際の世の中にも意外と身近にいるのではないだろうか…。作者はそういった人間の本質、リアリティーさをこの漫画で表現しているのではないだろうかと思う。普通のドラマや漫画の中にあるような、恋愛、友情、人生、そういったものを決して綺麗事では描かず、漫画から離れてもそこにある、それこそ身近にあるような現実味のある人間達によって繰り広げられる、現実味のある人生や人間関係が描かれているのは、この作品独特の魅力ではないだろうか。
美麗なエロさで描かれる汚い欲
この漫画においては、エロさという部分もこの作品を引き立てる魅力のひとつだと思う。そして、そのシーンはとても美麗に、とてもエロティックに描かれている。そこで私は、このシーンは性欲を強調するために必要以上にエロティックに描かれているのではないだろうかと思った。人間の持つ三大欲求、食欲と睡眠欲に関しては、誰でも満たすことができるものである。しかし、性欲に関してだけは、人によっては得られない事もある。それゆえに、この作品では人間の欲望を丸だしに生きている人物が多数登場する中、性欲というもっとも得ることが難しい欲に対して、丁寧にエロく、魅力的に描かれているのではないだろうか。人間の欲望というものが全面に押し出されて描かれているこの作品。その中でも、性欲という欲は他の欲に比べて、人間の美しい部分でもあり、汚くもある部分だと思う。それを作者は、欲の部分を汚く、性の部分は美しく、あえて強調して描いているのではないかと私はこの作品を読んで感じた。そうやってエロさの部分を美麗に描くことによって、人間の中の汚い欲というものを象徴的に描いたのではないだろうか。この作品は絵自体も美麗で、表現のしかたも独特だ。ストーリーだけではなく、絵自体にも大きな魅力があるため、このエロさを表現するシーンは、それこそこの作品の魅力の大きなひとつだと言っても良い。そんなシーンによって人間の醜さを表現するのが、この作品なのではないだろうか。
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