愛おしいこじれ屋、開き直りの誘惑 - おやすみプンプンの感想

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おやすみプンプン

3.833.83
画力
4.67
ストーリー
3.33
キャラクター
4.17
設定
4.33
演出
4.33
感想数
3
読んだ人
7

愛おしいこじれ屋、開き直りの誘惑

5.05.0
画力
5.0
ストーリー
5.0
キャラクター
5.0
設定
4.5
演出
5.0

目次

こじれている、プンプン

プンプンは愛おしい男の子だ。生真面目で不器用で性欲が旺盛で頑張り屋で、身勝手で気づかい屋でこじれていて可愛そうな男の子である。幼少期に愛子ちゃんという子に約束させられたことに縛られて、きりきりして自分の可能性を自由に考えられなくなったことが不運の始まりで、魅力的でありながら満たされない何か違った恋愛ばかり経験する。父親は暴力を振るい、離婚して去り、母親は病を患い、この世を去る。引き取られたおじさんは過去の恋愛に罪の意識で縛られた、やはりこじれた「こじれた先の僕の将来」みたいな影像で、その恋人はプンプンに同情を寄せて一線を越える。

まじめに生きちゃ馬鹿を見る

愛子ちゃんとの約束、親やおじさんカップルとの関係、女性遍歴、数々のシーンでプンプンは素直な感情でもって事に当たろうとする一方で、△やひょっとこになって、へ、はん、と斜に構えようとする。プンプンは正直で感じやすく、欲望に忠実で満たされない、理想が高くて変に自分に厳しい、甘ったれで堕落したアンバランスで、なかなか一口には言い表せないが、そんなプンプンの煩悶を引用してみる。子供の頃に見た満天の星を思い起こしながら。

こんなところで何やってんの?ホントにこんなんでいいの?ちゃんと頭使えよ。くだらねえ言い訳とか、言い逃れとか、話のすり換えとかたくさんなんだよ。…バカ野郎。

…うるさい。…うるさいな…… 自分は自分なりにがんばってるじゃないか……

プンプンは、次善を生きている

自分の浅はかな欲望と夢と、容赦なく回っていく周りのぎざついた歯車と、社会に出てからも続く自分探しの中で、プンプンは最善を尽くして生きたいと思っている。自分には事情があり、他人にも事情があり、その兼ね合いでいつも何かが不完全な次善の選択を繰り返していく。その次善は80点だったり、15点だったりする。人を傷つけ、人に傷つけられ、受け入れられ、愛され、でも要求され、もがいて期待に答えようとして次善を生き続けるプンプン。

待ち構えている「向こう側」

プンプンにはチンカラホイの呪文で現れるもじゃ髪の神様がいる。この神様はプンプンの中にある様々な欲望や要求、規律を一気に統合して、やっちゃえよ、殺っちゃえ!というオーバーランへと導く悪魔の囁きであると同時に、「問題解決」というミラクルの啓示であってやはり神様なのである。プンプンを追い詰める様々な自分、他人、現実の「向こう側」に、開き直った、一線を越えた、血塗られていて清々しい「救い」のあり方が存在している。ついには神様は暴走の中で彼の目に取り込まれて、愛子ちゃんと絶望の逃避行をすることになる。この神様をえぐりだす時開き直りは終わるのだが、時すでに遅し、である。

カルトという「向こう側」

世の中悩ましい人でいっぱいだが、その軽重には色々ある。そんな中、よりこじれた人々はこんがらがった現状に一つの統合を欲しがり、宗教という形で開き直ろうとすることがある。プンプンに出てくるグッドバイブレーションとは感覚的・感性的な手応えで人を勘違いさせ、終末論へと開き直らせる、また別の悪魔の呼び声だ。僕も人生の苦境にあると、ふと、何か一つの単純な答えがあるんじゃないかという錯覚に陥る。複雑な過剰と不足は依然あるがままなのに、問題解決、救い、開き直りという答えを欲することがある。答えは自分で作るものだ。

プンプンを見て学ぶ

プンプンは繊細だ。誰かが難なく飛び越えるような人生の出来事に、一々躓いて痛みを覚える。そして、それでいい。時代は少しずつ軟弱になりつつある。ゆとりを求め続けて進化しているのに、人の心が歪んでいく。歪んだ心と付き合うには、自分を適度、愛するしかない。プンプンは愛おしい。こんなに愛される生き物はない。でなければ13巻も話は続かない。ひよこの絵から始まった、最後には悪魔じみた「異化」された絵柄のプンプンだったが、世界はそんなに難しくないよ、と説得力を持って教えてあげられたらなあ、と思う僕であった。

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独特な人間描写とリアリティーあるクズ人間達

主人公という存在主人公のプンプンというキャラクターは、作中では一定の形を持っていない。そのストーリーの時々によって、鳥のような形だったり、図形のような形だったりと、作中を通して人間の形で描かれることが非常に少なく、顔が描かれることは一切なかった。それは何故なのか…?私がこの作品を読んで思ったことは、プンプンという存在は、この作品を読んでいる読者なのではないのだろうか…ということ。そのストーリーごとに合った姿を、自分自身に当てはめて読んでほしい…という作者の考えなのではないだろうか。この作品ではプンプンだけではなく、プンプンの家族や親族も、プンプンと同様の描き方をされている。その事から、プンプンだけではなく、家族や親族も含めて、読者自身の家族に当てはめて読むことができるよう、考えられていたのではないだろうか。そしてプンプン以外の登場人物達は、誰もが一度は関わることがありそうな、関わったこ...この感想を読む

3.53.5
  • hono.hono.
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  • 2017文字
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