凡庸で退屈なだけの作品
タイトルから期待したが。。
ニューヨークに住みたいとか、ニューヨークの街に住みたいとかいう気持ちがあれば、このタイトルならとても見たいと思うはずです。でも、中身はどちらかというと期待はずれです。ストーリーの骨格をいえば、老夫婦がこれまでのいろんな人生を経験し、苦難を乗り越えてきたなかで、そろそろ人生の終局を迎えるころになって、40年も住んだアパートを手放し、もう少し新鮮な、あるいは、自分たちにあったマンションを探すために、今のアパートを売ろうとするのだが、結局、そんなことする必要がない、今のままでいいのだ、と気づくという作品です。まあ、ありきたりですし、実際、作品のシナリオをもありきたりです。ほとんど何も起こらない映画です。
そして何より、ニューヨークの街のすばらしさとか、暮らしの素晴らしさとか、ほとんど、フィーチャーされてません。ごく普通の、他の映画でも良く見るニューヨークの風景描写にとどまっていると思います。こちらがうらやましくなったり、わくわくしたりということもなく、何を伝えたいのだろうと頭を悩ませました。まあ、外国の映画なので、アメリカ人やニューヨーカーにはよくわかる、という点が多々あるのかもしれませんが。
親戚(ダイアンの姪)の不動産屋を通して(彼女の強烈な勧めもあって)アパートを売ることになったみたいですが、そのために、いろんな人間模様というか、いろんな希望者が夫婦のアパートを見に来るシーンをこの映画はさもありなん、という感じで、時間を使って描いていくわけですが、ここもまたまったく起伏がない。おもしろくもない。笑えない。ハラハラもない。いろんな人間がいるという感じを出そうとしているが、そのわりには、どれもこれも個性のないお客(俳優と役柄に問題)ばかりで退屈です。
それと飼い犬の手術とリンクさせて物語が進むんですが、この犬の状況についてのシーンも短いし、犬に全く存在感がありません。これももったいないですね。もう少し犬をフィーチャーしてもよかったかも。もちろん、根本的な犬選びという問題もありますが。
あと、橋の爆破犯人についても結局、うやむやで印象に残らずに終わってしまっている。なんのための事件か?(作品中では、こういうテロ一つが近くにおこるだけで、アパートの値段が変わるということを言いたかったようだが、それがどうした?という感じ)
ある意味、中途半端な組み合わせでシナリオを構成したので、凡庸になったといえます。
俳優の組み合わせはちょっとしたサプライズではある。
主役の二人の組み合わせはいいと思います。ある意味サプライズです。モーガン・フリーマンはこの作品でも、彼が言いそうなことを言い、ダイアン・キートンは彼女がしそうなこと、言いそうなことを言うという感じ。ということは両方ともこちらが想定の範囲の言動しかしません。確かに、ご両人とも好感のもてるおじいさん、おばあさんで、こんな二人になりたいと思いますが、だからこそ、もっと、起伏のあるストーリーに二人を放り込んで欲しかったと思います。
何をすべきだったのか、考えられることはたくさんある。
例えば、二人のどちらかの昔の恋人が隣に越してきて、実はそれが嫌で引越しをしようとしているとか(この作品は、アパートを売ろうとする根拠が薄弱です)、そして、それを相手に知らさないで、なんとか、引越しを成し遂げようとするとか。
あと、モーガン・フリーマンが大きいので、飼い犬も大きい方がよかったと思います。犬に存在感がない理由はそこにあります。もっと大きい犬で、さすがのフリーマンも年で対処できなくなっているというような状況があってもおもしろかったと思う。
二人に子供がいてもよかったですね。どんな子供か見たかった。(作品中、子供との交流があるので、そんなことなら、養子でもとっているということでもいいから、二人には子供がいたほうが、なんとなくほんわかさが増す。もったいない)
それから、アパートの価格を釣り上げるというところをもっと、オークション並みにもっと激しく、もおっといきいきと、お客たちとの悲喜こもごもを交えながら、描写してもよかったと思います。先述のように、逆にありきたりになるかもしれないけど、もっといろんないっちゃっているお客とか、偏執的なお客とか、バラエティにとんだ感じがあってもよかったのではないかと思う。
それから橋の爆発犯人。てっきり、アパートを欲しいというお客として登場するのかと思いました。そして、このアパートを潜伏先にして、夫婦と仲良くなり(あるいは夫婦を人質に立てこもり)、この犯人を穏便に自首させるまでを描くとかいう展開もあったのではと思います。どちらかというと、モーガンもダイアンものほほんとして、動じないタイプだから、きっとおもしろい映画になったのではと思います。
全体で90分なので、最後までなんとか見れましたが、いかんせん、修正しどころがたくさんあって、もったいない映画でした。
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