人の命の重さを考えさせられる作品 - 252 生存者ありの感想

理解が深まる映画レビューサイト

映画レビュー数 5,784件

252 生存者あり

5.005.00
映像
5.00
脚本
5.00
キャスト
5.00
音楽
5.00
演出
5.00
感想数
1
観た人
1

人の命の重さを考えさせられる作品

5.05.0
映像
5.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
5.0
演出
5.0

目次

252」とは東京消防庁の通話コードで「要救助者」を表しているようです。コードは市町村によって異なるようですが、生存者という意味だけではなく生死未確認の場合も使用されるようです。この作品では救助される側・救助する側の命の重さについて、当事者だけでなく家族の思いも通して描かれています。

人命救助と二次災害のはざまにある葛藤

二次災害の危険のため人命救助がなかなか進まない「ハイパーレスキュー」の隊員たちの葛藤が描かれています。「救助を待っている人がいるのであれば、命がけで救助をするべきだ」という隊員もいれば、「待機は命令だ」という隊員もいます。第三者から見ればレスキューは命がけの仕事だとわかって就いているのだから、命を投げ出す覚悟で救助すべきだという意見もあるのかもしれません。それが、要救助者の家族であればよけいでしょう。

しかし二次災害が起こるとわかっている状況で、救助作業を行えば必ず被害が拡大し本来であれば救助する側が救助される側になってしまうことにもなるでしょう。そうなれば救助活動はますます困難になってしまいます。「救助する側の命が救助される側の命より優先されるなんて」と若い隊員が言っていましたが、これ以上被害を大きくしないようにとする苦渋の選択なのだと思います。

救助側にも無事を願っている家族がいる

一番忘れられてしまうのが、救助側にも無事を願う家族がいるということではないでしょうか。要救助者にも無事を願う家族がいるように、救助側にもいるのです。当たり前のことですが、人命救助作業時にそのことを考える人たちがどのくらいいるでしょうか。自分たちの力では到底救助をすることはできないため、目の前にいる家族を救助できるかもしれない人たちに願いを託すのは当然でしょう。しかし、述べたようにどうがんばっても自分たちで救助することはできませんし、救助をする人たちにも家族はいます。救出を待つ者にできることは家族の無事はもちろん、救助する人たちの無事を願うことしかできないのでしょう。

救助側と、その命を守る立場の者

救助側の人間が自分の命と引き換えに要救助者を助けた場合、英雄として称賛されるでしょう。しかし危険な救助活動のたびに隊員に犠牲が出れば、レスキューの職に就きたいと思うものがいるでしょうか?またレスキューになりたいという家族を、快く応援できる家族がいるでしょうか?現在でも命の危険を伴う職業は、家族の理解を得られないことが多いようです。レスキューもそれらの職業のうちの一つでしょう。それでも家族が「絶対ダメ」だと反対しないのは、生きて帰る努力をその職に就いている人たちがしているからではないでしょうか?その言葉を信じて家族たちは送り出しているのかもしれません。

爆破後、救助に向かうことを決めた静馬が「責任は自分が追う」というと、本部長である真柴が「責任を負うのは自分だ」と言います。この言葉には「誰か一人でも犠牲者が出るようなことがあれば、関係省庁・家族・世論等の非難はすべて自分がうける」という意味にもとれますが、本部長が言った言葉の中には「自分にそういった責任を負わせたくなければ全員が無事に帰って来い」という意味が込められているように思えます。上官と部下たちの厚い信頼があればこそ、意味を持つ言葉となるのでしょう。このことからも救助側の命を守る立場の人たちは、救助する側・される側に関わらず犠牲者が出ることに対し、大きな責任を負う立場にあるのでしょう。

命を「あきらめない」こと

旧新橋駅に避難していた5人は、最後まで救助されることをあきらめませんでした。研修医である重村は、最初は口を出すばかりで自分たちが助かる努力をしようとしませんでしたが、必死で生きようとする他の4人を目にすることで、助かりたい・助けたいという思いが芽生えたようです。

「あきらめない」ことで5人と、ハイパーレスキュー・気象庁の人たちは自分たちが持てる最大の能力を発揮します。祐司は元レスキューの知識・技術を、重村は医療の知識と技術を、藤井は開発中の道具を提供することで5人が生き残れる努力をします。気象庁の職員も二次災害が起こらないように警告を発するだけではなく、安全に救出するのであればどのタイミングで行えばよいかを提案します。「あきらめない」ということは簡単なようで実際難しいことでしょう。なぜなら「あきらめない」ためには努力がともなうからです。

人命救助では「一人でも多くの生存者を助けたい」という思いから、関係者たちはできるだけの努力をして時には危険な思いをしながら救助にあたっています。そこには救助できなかった人に対する自責の念もあるようです。しかし一番大事なのは救助される側の「何としてでも生きたい」という思いではないでしょうか?助けたいという思いと助かりたいという思いが引き合って助けることができるのかもしれません。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

関連するタグ

252 生存者ありが好きな人におすすめの映画

ページの先頭へ