多彩なブラックコメディ作品群だが、平均的
縦横無尽のひらめきで多彩な作品群
バラエティに富む内容のブラックコメディーな作品群が並びます。
誘拐天国(孫に会えない爺さんのため誘拐を働く仲間、しまいには孫の友だちまで誘拐するという。身代金がたった一億円と激昂する場面は笑います)、エンジェル(と呼ばれる新魚の変遷。食への欲とのからみが秀逸な構図になっています)、手作りマダム(会社の上司夫人のお茶会への参加と我慢を描いてます。親切心から生まれる迷惑行為がブラックな笑いになってます)、マニュアル警察(せっかくの自首がマニュアル化にはばまれる話でもどかしい!)、ホームアローンじいさん(家族のいないすきにAVを見ようとしての悲喜こもごも、強盗も登場します)、花婿人形(おぼっちゃま君の話。親の許可が必要な男。クライマックスは結婚式。トイレに行くチャンスがないのだが)、女流作家(子供を産んだ後、姿を見なくなった作家。〆切は守っているのだが)、殺意取扱説明書(古本屋で見つけた本書。それに従って友人への殺意を実行しようとするも)、つぐない(ピアノを始めた中年男の話。右脳、左脳で、ほろりとさせられる作りです)、栄光の証言(殺人事件の目撃者となり脚光を浴びた気分だったが、実は、とんでもない勘違いだった)、本格推理関連グッズショー、誘拐電話網(お金の要求先が子供の自宅ではなく、赤の他人宅)。
突拍子のなさが共通
こうやって書くだけでも楽しいし、これらの変幻自在、縦横無尽のひらめきとタイトル付け、ストーリー展開には脱帽します。すべての作品に共通することがあるようなないような。まあ、一言で言えば「突拍子のなさ」なんでしょう。まさか、そんな解決法?まさかそんな理由で?とか、まさかそんなことになる?というようなですね。人々が淡々と遠慮せずに突き抜けてブラックに振る舞う。それが笑いになるという真理ですね。
他の東野作品に比べると平均的か
相変わらずアイディアは豊富ですね。
しかしながら、他の東野作品の極上ものと比べた場合においてはですね、笑いやサスペンスとしては少し落ちる気がします。
アイディアはいいんだけど、そこで、満足、それで終わっています。
この短編群のなかでのベストはなんだろう、と考えても思い当たるものがないというのも事実です。どれもこれも、いわば平均的だったと思います。本格推理っぽい意識が脈々とあり、辻褄合わせみたいなところがちょっと気になりました。(あえて本格推理っぽさを茶化しているのかもしれませんが)
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