大爆笑できる兄妹バトル漫画
少女漫画だけど少年漫画的、登場人物の役割分担もユニーク
ヤスコとケンジの著者アルコさんの漫画は、少女漫画でありながら思い切った少年漫画的ギャグ要素があり、性別問わず抵抗なく読める面白さがある。そのため、ヤスコとケンジは実写ドラマ化もされており、「中性的漫画」と言える。
アルコさんの作品の特徴に、暴走気味な主役とそれをクールに見つめる脇役という面白い対比があり、ヤスコとケンジではヤスコの思い人椿純がクール役になっていて、他の登場人物はほぼ暴走していると言える。その暴走具合と、その暴走を憎みきれない様子で冷静に見守っている椿純がいいバランスを保ち、温かい人間関係を作っている。
この対比が絶妙な漫画として、河原和音さん原作、アルコさん作画の「俺物語!!」が挙げられ、天然気味の主人公を主人公の親友がクールに見守っているという手法がとられている。
思い切り崩れた絵やぶっ飛んだ展開が魅力的
ヤスコとケンジでは、兄と妹であるケンジとヤスコが、門限などのうるさい兄の束縛のために対立する様と、ヤスコの思い人椿純の姉、エリカとケンジの暴走族時代からの対立が面白い。エリカは本心ではケンジが好きなので素直になれないだけなのだが、心がすさむような嫌な対立ではなく、思いっきり崩れたギャグ絵による大喧嘩は、この漫画ではむしろ一番笑える面白いシーンだと言える。
普段から頻繁にやりあっているので、時折兄妹で仲良くしていたり、ケンジがふとエリカに優しい言葉をかけるシーンが印象に強く残り、非常に温かみのあるものになっている。ヤスコとケンジの兄妹とエリカと純の姉弟は他人同士ではあるが、もはや家族のような関係であり、普段はいがみ合っていても、色々な危機には協力して助け合っている。他人ながらこういう関係はうらやましいと誰しもが思えるだろう。
こんなお兄ちゃんが欲しいと思える兄貴像
ヤスコとケンジがドラマ化するほど面白い要因として、一見横暴で亭主関白なケンジのような人物が、兄であってほしいと思う人が多いからではないかと察する。ケンジはヤスコの自由を奪い、束縛も激しく口うるさいが、それも両親を亡くして親代わりになっているが故の愛情からであり、ヤスコもなんだかんだ文句を言ってはいざとなった時に真っ先に兄の顔を思い浮かべ、頼りにしている。恥ずかしがることもなく「ヤスコを守ることが俺の正義」と言い切るケンジは、最高にかっこいい兄と言えるだろう。心配性のケンジは、当然ヤスコが思いを寄せている椿純のことをよく思うわけがないのだが、純の方は「お兄さんみたいな人好きだな。ああいう人は嘘がないから」と感情に飲まれることなく冷静にケンジの人物像を評価しているところも救いがある。ヤスコとケンジは一応連載は終了しているが、いつ続編が飛び出してきてもおかしくない終わり方をしているので、ぜひ続編にも期待したい。
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